59 12月のライブ 5
「タイムマシン 映す未来 一つ どこに進もうか?
道標 目指す先は 地図に載ってない明日へ」
僕は、3年前に放送されていたアニメである「ラストラベンダー」のDVDを見ていたとき、エンディングテーマ「タイムマシン」を歌っているユニットの1人のメンバーの名前が目に留まったのをはっきりと覚えている。
なっちの名前が目に留まってから早8か月。僕としても、彼女とここまで仲良くなれるとは全く思っていなかった。舞台上に彼女こそいないものの、他の4人は昔YouTubeで見た映像と同じように踊っているようだった。
「7つ目のラベンダーが咲いて夏がやってくる 僕らの夏が」
いつだったか、なっちは話していた。ヘリアンサスガールズがラストラベンダーのエンディングテーマを務めることになったのは、「しふぉん(紫保)」の紫の字、「かわみん(芽衣)」の芽の字、「そかか(爽花)」の花の字、「なっち(夏樹)」の夏の字、「なーなん(七海)」の七の字が、主人公のユニット名「セッティエーム・ラヴァンド(septième lavande;7番目のラベンダーという意味)」のイメージにぴったり合致しているという事に由来する、と。
公式から「これが由来です」と明示されているわけではないが、なっちが話していた以上信憑性はそれなりにあるのだろう。
そんなことを考えながら聞いていると、4人のパフォーマンスが終わった。タイムマシンの歌は3分54秒の長さ。4分弱なのに、僕にとってはこの時間が短いようで長く感じられた。
予定通り1期生のあいさつが行われる。今1期生は4人だが、今日はなっちがサプライズで登場して、昔のように5人で自己紹介が行われるようだ。
”なっきぃ”は、いつもの”なっち”とあまり変わらない感じで、それでも、さも休業していませんよ、ずっといますよみたいな雰囲気も出しながら、みんなに向けて挨拶する。
「向日葵が仰ぐ太陽の色はオレンジ、なっきぃです!」
軽音部、Rivageでのふだんのあいさつは、この「なっきぃ」が「なっち」に変わっただけだ。
「実は私、今は横浜に住んでいるんです。本来なら私は休業しているんですけど、今日はここ横浜でライブをやるということで、結構近場なので、久しぶりに舞台に立たせてもらっています」
後ろにいる1人の男性が、おー、と叫んでいる。僕もそれに合わせて叫んだ。もしかしたらあの人が拓也さんなのかもしれない。
彼女のあいさつはそこまで尺をとらなかった。次いで、しふぉん、川上(かわみん)、笠山(そかか)、福島(なーなん)が順に挨拶した。
「『紫を保つ』とかく『紫保』の色はもちろん紫、しふぉんです!」
「みんなの記憶に残ってくれ! 希望という名の約束、かわみんです。」
「爽やかな花で冬を涼しくする、そかかです!」
「7つ目の海はすぐ前にある、なーなんです!」
笠山は時期によって挨拶の季節を変えているらしい。「冬を涼しくする」というのは、「寒い」のを「涼しい」にするという意味だ、と彼女はTwitterで話していた。
4人のあいさつが終わると、続いて「タビソラ」「続く」「Departure」が披露された。その後2・3期生のあいさつも、そのあとの曲も無事に終わり、残すところはセットリストで「???」となっていたところだけになった。
何が始まるのだろうとわくわくしていると、しふぉんが出てきて、僕たちに向かってこう言った。
「それでは10曲目はナツアオソラです。全員で合唱しましょう! わからない人も多いかもしれませんが、前に歌詞の字幕を出すので、知らなくても恥ずかしがらずに歌ってください!」
会場がざわめく。
拓也さんのライブレポートで読んだのと同じだ。僕はフルで覚えているため歌えるが、歌えない人もいるだろう。まあいいやくらいの気持ちで僕は歌った。
「空を見上げたら雲は無くどこまでもすける夏の青」
どうやら歌っている人は20人くらいのようだ。僕は周りを気にしながらも大声で歌った。
歌い終わった後、観客がアンコールを13人に投げる。僕もみんなに合わせてアンコールを送った。彼女たちはそれに答えてこういった。
「アンコールしていただきありがとうございます。最後に歌うのは『次の世界へ』です! 楽しんでいってください!」
彼女らはアンコールとして「次の世界へ」を歌った。テンポがまあまあ速い応援ソングということもあり、僕も含め会場のみんなが盛り上がっているようだった。
僕たちは更にアンコールを行ったが、「もうありません。ありがとうございました!」となって舞台は終了となった。
終演後、撮影会が行われる。僕はライブ後の余韻を残したまましふぉんの列に並び、(今日買ったCDではなく)4月に買ったCDに付属していた券を出して撮影会を行なった。
僕は、撮影会で、彼女がさっき取り乱した理由について聞くことを決めていた。しふぉんは、明らかに僕を見て動揺していた。




