49 学園祭2日目 1
今日帰り道に話題が出た、YouTubeで池の水を全部抜く企画の動画を見た。見終わると10時。なっちと僕はたまに電話しながら寝落ちることがあるが、今日はそんなこともなく普通に眠りについた。
9月12日。空は晴れているが、”雲一つない晴天”ではない。僕は朝ご飯を食べて支度をし、制服に着替えて家を出た。
考え事をしながら歩くと足取りがゆっくりになる。今日の後夜祭で、僕はなっちに告白するつもりだ。昨日までのイメージトレーニングではうまく行っていたのに、実際に告白の日が訪れると体が急に重くなるのを感じる。
山村は部活の朝練で早めに登校しているらしい。来週19日、日曜日に大会が控えている、と聞いている。僕は今日もいつも通りなっちと一緒に登校することにした。
普段はなっちとなんでもない話を笑いながらしているのだが、今日告白するとなると、接し方が急にどこかぎこちなくなってしまう気がする。僕はそのことを考えないようにしながらなっちに接した。
「夏終わったのに、まだ暑くない? まあ徳島でもこんな感じだったけど」
色々案じていると、なっちに先手を取られた。正直、自分の中では夏が終わったという感覚はない。僕にとっては、夏というのは5月上旬~10月上旬まで続いている(ただし、梅雨は除く)イメージだ。だから、暑いのも(嫌だけど)当然だ、というのが僕の印象だ。
登校路をいつも通りの道で向かう。遠回りは帰り道だけでいい、というのは2人の共通認識だ。確かに知らない道を歩きたいという好奇心もあるが、それは時間に余裕があるときでじゅうぶんだった。
特にたわいもない話をしていると、あっという間に学校に着いた。僕は教室に入った。時計は8時15分を指している。今日は軽音楽部の発表や練習がないので少し気が楽だ。誰もいないスタッフルームのような場所に隠れ、僕は告白に対する不安を紛らわせた。
特に誰も入ってこなければ、ここは自分にとって快適な場所だ。僕は、お茶を軽く飲んでリフレッシュした後、周りに誰もいないことを確認して、スタッフルームの中でクラスTシャツに着替えた。
太田は色々な準備をしているようだが、僕ができることは、ホームルームが始まる8時半まで静かに待機していることくらいだった。
8時半のチャイムが鳴ると同時に、大阪先生が入ってきて全員いるかの確認を行った。昨日と同じで、今日も全員そろっていたようだ。彼は話す。
「学園祭二日目です。最後の日も気合を入れて頑張っていきましょう!」
茶道部や陸上部には何か連絡があったようだが、僕には全く関係のない話なので聞き流した。
山村は近くにいるが、特に何も話すことはない。僕はテラスに出て、遠くに見えるショッピングモールの上にある観覧車をぼーっと眺めていた。
いい天気なのだが、雲がせわしなく流れている。風はたいして強くはない。
「今日10時・13時からだから、忘れないでね」
「びっくりした~」
ぼーっと空を見てると、いつの間にか太田が横に来ていた。僕は止まりそうになった心臓を抑えて話す。
「あ、おっけ」
太田は最近色々なゲームにはまっているようだ。彼は、雑談話として、僕が知っているゲームの話をしてくれた。
特に彼がはまっているといっていたのが、BlockAtlas(略称:ブロアト)という、色々なブロックを積み上げたり削ったりして世界を探索していくゲームだ。
僕は昔にダウンロードして、たまにプレーしているが、割と飽きることはない。やることが多い(明確な目的が設定されていない)ので、6時にプレーを始めて気づいたら10時、ということもよくあるゲームだ。
「あれ、たまにやってると時間食うよな」
僕の発言に太田はうなずく。彼も最近何もすることがないときはそのゲームで時間をつぶしているらしい。
「今度さ、マルチで一緒にやってみない?」
僕は、やってみたい、と答えた。
「ライン追加しとくから、見といてね。じゃあ俺は実行委員の仕事あるから、じゃあね」
僕は太田に手を振った。今は8時45分。と言っても何もすることがないので、さっきまでと同じようにテラスの外を眺めていた。




