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47 帰り道 2

 K駅に出れば、あとはまっすぐ道なりに沿って歩けばH駅まで着く。少しばかり坂は多いが、全体的に下り坂なのでそこまで大変でもない。2人で話をしながら、僕たちは坂道を下っていった。


 僕となっちが二人でいるとき、なっちは良くアイドル時代の話をしてくれる。彼女としては、学校の他の子にバレなければいい、というスタンスのようだ。


 なっちは、最も仲のいい女子にも、自分がアイドルをやっていたことは言っていないらしい。ただし、僕に限っては(もうバレているからなのか)色々話してくれていた。



 ヘリアンサスガールズが歌唱を務めたアニメやゲームは、(知る人ぞ知るものの)そこまで知名度があるわけではないので、そこからバレているということもないようだ。


 ローカルアイドルで、地元ではある程度人気があるかもしれないが、遠い場所だとあまり知名度のないユニットが私がいたところだった、となっちは話す。事実、Twitterで「ヘリアンサスガールズ」と検索してもあまり呟かれていない。その程度の無名さだ。


 僕たちは帰り道、ちょっと寄り道をしたところにある公園のベンチに腰掛けた。周りに誰もいないことを確認して、なっちは話し始めた。


 

 なっちがアイドルを目指したのは、「自分を変えたかったから」らしい。親にも、ファンとの接触イベント(握手会)がない、活動が(基本的に)地元の範囲内で収まるということで、受けるだけ受けてみたら、と言われていたとのことだった。


 (賛成まではいかなくても)反対はされなかったということ、そしてオーディションを無事通り抜け無事5人組が結成できたこと、その日から自分は変わり始めていったこと。なっちはアイドル加入時の話を色々してくれた。


 「答えにくいかもしれないけど、振り返ってみて、思っていた自分に変われたと思う?」


 正直変な質問だという自覚はあるが、なっちはちょっと考えた後答えてくれた。


 「うーん、」

 「思ってた通りの自分になれたかはわからないけど、少なくとも自分の生き方を変えるきっかけにはなったかな」


 なっちがアイドルを始める前(つまり、小学生時代)どんな性格だったのかを僕は知らないため、彼女の答えに僕はぴんと来なかった。なっちは続けた。


 「やめたくなる時も何回もあったけど、私としてはね、それを耐えたから今の自分があると思ってる。だから、自分でいうけど、昔より強くなっているとは思うよ」

 

 なっちは笑いながら言う。確かに、彼女の集中力は人並みではないと感じる。中学生時代の活動の記憶が今も胸の中に息衝(いきづ)いているのだろう。


 僕はなっちの話を真剣に聞いていた。そして、1つの質問を投げた。


 「将来は何になりたいと思ってる?」


 なっちは困惑した表情を浮かべるが、すぐに戻った。そして話し始める。


 「アイドル活動をやめた後は地元のケーキ屋で働くつもりだよ」


 割と即答で、今のアイドルの活動が直接いきてくるような仕事ではなかった。なっちは話す。


 「女優になりたかったって思った時期もあるんだけど、子どものころから好きだったケーキ屋さんという職業のほうが今の自分にとっては魅力的に見えてきて」


 女優の方がケーキ屋さんより明らかに厳しいだろうと直感的に思った。それでもなっちは語る。


 「わかると思うけど、個人的に甘いものが好きだからね」

  

 K駅の近くには食べログ(色々な店の評判を載せているサイト)上位の洋菓子屋さんがある。なっちはそこのケーキが大好きで、月に2回は食べているようだ。


 そのケーキ屋さんはクリスマスの時期は予約しないと買えないほどの人気を誇るが、それ以外の時は大体並べば買えると聞いている。


 ケーキは有名なパティシエさんが作っているのだが、(申し訳ないが)立地が良いとは言いがたい。K駅の周りには何もないので、食べログの上位に乗っているからと言って、「何かのついでにあのケーキ屋さんに行こう」とはならないような立地だ。


 なっちはあのケーキを食べた瞬間、子どものころの夢を再び追いかけてみようと思った、と話した。


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