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46 帰り道

  もう帰ろうかとも思ったが、特に家に帰っても何もすることがないので、僕はお茶を一口飲んでそのまま最終下校時間まで残った。


 僕は、なっちと帰り道に着いた。山村は大橋と一緒にファミレスSにデートに行くらしい。最近山村と一緒に帰る頻度は明らかに減って、なっちと帰る頻度が増えている。


 僕の学校の生徒のほとんどは電車で通学している。徒歩で学校まで向かう人は(近くに住んでいる人を除けば)多くない。だから、放課後に僕となっちが帰り道”ずっと”一緒にいることを目撃されることは少ない。


 太陽は沈んでいるが、まだ暗くはない。家から学校まで40分強なので、家に着くころには暗くなっているだろう。僕はなっちと色々な話をしながら帰っていった。


 明日は軽音部の活動はない。シフトの2時間(10時からと13時からの1時間)を除けば、もう完全に自由だ。なっちは10時から1時間だけ、実行委員としてやらなきゃいけない作業があるらしい。その時は僕は山村とシュレディンガー企画の仕事をすることになっている。


 放課後、いわゆる”後夜祭”が行われることになっている。ダンス部がダンスを披露したり、先輩のバンドは数曲演奏するらしいとも聞いているが、RIVAGEとして何かをやるということはない。なっちとしても、準備や後片付けが大変だからあまりやりたくないと思っているようだった。


 僕は、ベンチに腰掛け、お茶を飲んで気分を落ち着かせた?


 「今日、ちょっとあっちの方から帰ってみない? 少し遠回りしたくなった」


 なっちが指さしたのは、池のあるT公園の緑道の方だった。彼女は遠回りと言っているが、普段帰っている方向と比べ、そこまで遠回りになるものでもない。僕は、5年ほど前に池の水を抜く企画で放送されていたのを思い出した。


 「ここの池って、昔テレビの企画で1回からっぽにされたらしいよ」

 「あ、それYouTubeでみたことある!」


 その番組はテレビ東京系列で放送されていたため、当時徳島にいたなっちは、(放送されていたのかもしれないが、少なくとも彼女は)テレビでは見ていなかったと言っていた。僕は当時小学生だったので、あんまり正確に覚えてはいなかった。帰ったらもう1回見てみよう、と思った


 少しばかり暗いが、いつもの道に比べて暗すぎるということはなく、全く怖くなかった。家に帰るために使える真っ暗な竹藪(たけやぶ)の中にある階段を(怖いけど)通れる僕にとっては余裕の明るさだった。

 

 なっちは暗いのが苦手らしい。お化けが出てくる的な怖さではなく、純粋に暗闇は苦手だと言っている。


 僕たちは、池を抜けて帰っていった。緑道の川のせせらぎの音が快適で、ストレスが体からするすると抜けていくのを感じる。


 暗いけど安らぎを感じるこの道の横に植えられている木からは、清々(すがすが)しい風が吹いてくる。最近疲れてばっかりだった僕たちは、ベンチに座って心を完全に任せて落ち着かせた。


 自然のエネルギーは素晴らしく、わずか5分ほどで僕たちは完全に回復した(気がする)。なっちも「疲れていない」といいながらも、体には疲労がたまっていたようで、癒されたと話している。


 緑道を抜けると、H駅の隣駅であるK駅がある道路沿いへ出た。スマートフォンで時間を確認すると18時20分。空が暗くなってきたことが明確に感じられる時間になっていた。

  

 ずっとここに住んでいるため地理的にはわかるが、K駅はあまり来る場所ではなく新鮮な感覚だ。車は何台も走っている。僕たちは、そんな車道のすぐ横の歩道の上を歩いて行った。


 向こう側にはドラッグストアや家系(いえけい)ラーメン屋、蕎麦屋があるが、こっち側の通りにはそれに比べると飲食店や雑貨店は少ない。僕はなっちと、いつかあのラーメン屋に行きたいね、みたいな軽い約束を交わした。


 K駅からH駅の方にまっすぐ歩き続けると、途中のスーパーマーケットやうどん屋など、色々なものがなっちの目に留まったようだ。普段通らない道ということもあり、なっちはここに来るのが初めてということも相まって、まだ知らないものを沢山見たようだ。


 初めてパソコンを見た小学生のような目をしてなっちは話す。


 「明日から、帰り道色々変えてみて、街探検してみない?」


 僕としてはこの街で全く知らないところはあまり多くないのだが、なっちの反応を見てみたかった僕は喜んでそれを受け入れた。

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