45 学園祭当日 1日目 8
届かなくて 諦めずに 上を目指す
未来は 優しく微笑んで 愛で満ちる
花は開き ついには枯れてしまうけど
その光 この坂で
きっとまたいつか輝くから
やがて来るべき未来でも
ここで私たちは待ってるよ
きらめく海 でもまだ旅は続くんだ
目の前にして気づくこと それは
ずっと 私たちの道はまだまだ続くって
果てなき軌跡を描いてる
枯れない花はない。なっちはアイドル時代、この言葉を胸に刻んでいたようだった。どんなものでもいつか終わりを迎えるが、それだからこそ花は美しい。
3年前に公開された道端花のMVの収録風景でもそんな話があった気がする。梅の花は儚い。いつかは散ってゆく。それは昔から変わらないと、(名前はわからないが)動画内の女性は言っていた。僕は、その動画の内容を思い出しながらベースを鳴らしていた。
僕たちは「始まりの街」の演奏を終えた。拍手が沸き上がった後、会場アンコールの声が聞こえてくる。それに対応して、なっちは話した。
「非常に申し訳ないのですが、時間の都合上、アンコールはありません。この2曲で終わりになります。短い時間ですが聞いてくださって本当にありがとうございました! パンフレットに乗っているQRコードまたはTwitterIDから、私たちのバンドRivageのアカウントをフォローしてくれると嬉しいです!」
観客からは、「えー」という声が聞こえてくるが、すぐに収まった。僕たちは、申し訳ないような顔をしながら舞台を降りていった。今は14時13分。舞台の裏から先輩のバンドのライヴを見ることになる。
どういう訳かわからないが、この学校では軽音楽部は不憫な扱いを受けている。吹奏楽部は体育館で演奏会が行われるというのに、軽音部は狭い音楽室。しかも、1バンド15分しか使うことができない。機材の準備の関係等もあるかもしれないが、僕はそのことに少しだけだが不満だった。
本来の時間は14時15分からなのだが、もう先輩方は舞台の上に昇っていった。先輩方も自己紹介後2曲を披露し、アンコールを振り切って舞台を降りていった。僕たちは先輩を裏から見ていた。
終了後は片付けとなる。そこまで重い物は無いので、そんな苦ではなく、30分もあれば十分終わる程度だった。
学園祭は15時までである。校内放送で「もう終わりです」という放送が流れてくるのが聞こえた。僕は、なっちと一緒に教室まで向かっていった。
3組の教室はほぼ全員いるが、まだ数人いないようだ。大阪先生は、後ろの番号の人がいることの確認を促す。誰が不在なのかを確認した結果、山村と大橋さんがいないということに気が付いた。
山村は僕とは違っていわゆる「イケメン」で、多くの女子からモテている。噂に聞く限りでは、彼は大橋さんに一途のようだ。
僕の中には、彼氏・彼女のことは当事者の前では扱わない、そして聞いた(恋愛関係の)噂は誰にも話さないというポリシーのようなものがある。この場合でいえば、僕は山村に、「お前大橋さんと付き合ってるの?」とか聞くことは絶対にしないということだ。
2分後、大橋さんと山村は別々に戻ってきた。クラスの全員がそろったのを確認して、大阪先生は話し始めた。
「とりあえず1日目、お疲れさまでした。明日もまた頑張っていきましょう!」
加えていくつか連絡があったが、僕に関係するものはなかった。
教室の内装は、崩れ切ってはいないものの、いくつかガムテープが剥がれたり、椅子が倒れたりしている場所がある。僕たちは、みんなで協力して放課後の時間を修繕にあてた。
ある程度直せば、もう明日使えそうな状況にはなった。景品の飴とカップ焼きそばがなくなりそうなので、今のうちに調達しておこうとなったので、クラスの松川が1人で買い物に行った。
「ショウが行けばよかったじゃん」となっちはいうが、僕はもう疲れていたので無理だった。
なっちはアイドル時代の活動が活きていて全くつかれていないようだ。僕は、そんな彼女のことが少しうらやましかった。




