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44 学園祭当日 7

少し短いと感じられたら申し訳ありません。(1563文字です)

 顧問の岩田先生も観客席に座っているが、何か話すということはないようだ。


 僕は直前にお茶を飲んで深呼吸し、緊張を抑えた。最初にRivageがライヴを行い、その後Degree Celciusが行う、という順番になっている。それぞれ与えられた時間は15分。1曲は長くないので、まあそんなにかからないだろう、というのが僕たちの読みだ。


 「そろそろいくよ!」


 壁に掛けられた時計を見ると13時57分を指している。なっちの合図に合わせて、僕たちは立ち上がった。


 3分間が長く感じたのは久しぶりだ。14時。なっちは、本番だよ、と言って僕たちを奮起させた。僕たちは舞台の上へと上がっていった。


 「私たちは高1の4人組からなるバンド、RIVAGEです! 2曲だけですが、楽しんでいってくれると嬉しいです。 早速ですが自己紹介! 私の名前はなっちです。イメージカラーはオレンジです!」


 なっちのイメージカラーのオレンジは、アイドル時代の色の使いまわしだ。なっちは、知ってる人がいたら嬉しくて、あえて「知らなかったらバレない」というレベルの範囲内でほのめかしているようだった。


 なっちが一言いい終わった後、それぞれが自己紹介を行うことになっている。僕たちは、それぞれ自己紹介を行った。


 「RIVAGEは岸という意味ですので、それだけでも覚えて帰ってください」


 なっちがバンド名の意味を言う。僕は、舞台を見下ろして誰がいるか確認した。どうやら、山村と大橋さんは来てくれているようだ。太田はシフトの都合上で、残念ながらここに来ることが叶わなかったと聞いている。


 「それでは早速ですが、ε-カプロラクタム作詞作曲の歌、『荒野の朝』をどうぞ!」


 なっちは大声で話す。僕たちは、今までの練習通りに1曲目を演奏した。


 終わったあと、観客から拍手が沸き上がる。


 「それでは続けて2曲目は、私たちのオリジナル曲の『始まりの街』です! パンフレットに歌詞が載っているので、必要に応じてそれを見ながら聞いてください!」


 なっちが曲の紹介をすると、僕たちは2曲目の演奏準備に入った。ギター担当のコウは和音を演奏し、僕は根音を弾くことになっている。そこまで難しくはなく、それなりにやりやすい曲だ。


 そこまで複雑なリズムということもないので、楽器未経験だった僕でも3週間あればほぼマスターできる曲になっていた。素朴な曲調が僕は好きだった。



晴れたこの空 冬の寒さに 駅前広場 目に見える息

指でなぞって 空に描いて でも届かない 遠い希望へ


想いにあふれた この声を 風に乗せ 

次の世代まで響かせて行けるなら


花が咲いて 最後は枯れてしまっても 

その笑顔 この道で  

きっとまたいつか見る日が来る

やがて来るべきその日まで

ここで私たちは待ってるよ



 歌詞自体、ヘリアンサスガールズにあっても何もおかしくないレベルだ。もし彼女がこれを一人で歌ったのを送ってきて、「実はソロ曲があったんです」と言っても信じてしまうくらいのものだった。


 どんな花でもいつかは枯れるが、いつかは再び花を咲かす。道端花のMVの頭にも、このようなひとことがあった気がする。演奏中なのに、僕は少し泣きそうになっていた。僕は、泣かないようにベースを鳴らしていった。



雪が溶けたら春が訪れ 桜の花は道を彩る

鮮やかな色 すぐ散ってゆく だけれど夢は きっとまた咲く


坂道を下って海まで向かっても

この海原 地平の 向こうには何がある?


目指した海 でも終わりってわけじゃない

目の前に見て気づくこと そうだ 

それは 私たちの道はまだまだ続くって

果てなき旅が終わる日まで



 曲は難しくないので、なっちの歌声に集中して聴いていてもちゃんと演奏をすることはできる。本来、この曲は2月か3月に演奏するべきだねとはなっちも言っていたが、夏に演奏しても違和感がないメロディーではある。


 僕の中では、ベースをちゃんと弾きながらも色々な思いがあふれていた。


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