31 学園祭準備 6
案の定、僕はいろいろな雑用を任された。不器用な僕にペンキを塗らせると、床を汚してしまうということに気が付かれていたようだった。僕は他人に迷惑をかけないように色々な雑務を行った。
今日は部活の練習はない。ライブは11日の14時半から行われるが、2週間前にやったばかりということであまり緊張はしていなかった。
「そこの段ボール、この机に貼って」
太田は指示を出す。僕はガムテープで机の脚にそれを貼り付けた。
「よくわからない企画だけど、うまくいくのかな?」
僕が貼っているところを見ていたなっちが、横で話しかけてきた。お前は学園祭委員だからある程度把握していないとダメだろ、と思ったが、確かに理解しにくい企画かもしれない。僕はなっちに、星野(企画の提案者)と太田から聞いた話をそのまま話した。
前にも言ったが、企画名は「シュレディンガーの猫」。正確でない説明になるかもしれないが、簡単に伝えるならば、猫をある箱に閉じ込めておく。箱には仕掛けがあり、1時間後に猫を2分の1の確率で死なせるようになっている。
1時間経ちました。箱の中の猫は生きているでしょうか。それとも死んでいるでしょうか。それは箱を開けてみるまで分からない。蓋を開けて中の様子を観測するまで、外界の人には「生きている」と「死んでいる」が両方とも50%の確率で両立していることになる。
もともとは量子力学を批判するためにシュレディンガーさんによって提起された思考実験だった。しかし、3組の企画名が「シュレディンガーの猫」になったのは、単に「ゴールに着くまで、自分がどうなっているか、生きているか死んでいるかわからない」というのが理由らしい。
企画では、クラスの女子の石川さんが描いている、猫の絵を用いる。猫は最初、「普通」の状態である。通路を通っていきながら、何個かクイズを解いていく。クイズに正解した場合、猫の状態が良くなる。しかし、もし正解できなかった場合、猫の状態が悪くなっていく。
猫は、下に示すように8種類の状態がある。マッチョにすることができた場合、豪華景品(カップ焼きそば)がもらえるようになっている。風邪気味以下でも、参加賞として飴がもらえる、と太田は言っていた。
(悪←)死 精神崩壊 精神崩壊しそう 元気ない 普通 楽しくなってきた 超元気 マッチョ(→良)
「なるほど、何となく理解した。ありがとう」
なっちは僕のたどたどしい説明でも理解できたようだ。時計を見ると10時半。太田が、僕に雑用として物資(ガムテープと光沢のある布)の調達を頼んできた。学園祭2日前なのに、ちょうどなくなってしまったようだった。
「わかった」
僕が承諾すると、なっちがまた「私もついていくね」と言ってくれた。嬉しいけど、僕が(事実かもしれないが)頼りない存在として見られていると思うと、少し寂しい感情もあった。




