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30 登校時

 「この辺山がちで、自転車使うと大変そうだよね。徳島にいた時は、夏場以外は自転車で通学してたんだけど」

 「私の住んでいたところ、1時間に1本しか汽車が来ないの。だからね、ここで1時間に7、8本、朝は20本も電車が来るのを始めて見て、ものすごく多いな、って思ったんだよね」

 「そもそも汽車自体にあまり乗らないから、人の多さにもびびったのをまだ覚えてる」


 なっちは昔の思い出を語る。ずっと前からここに住んでいた僕としては、自転車通学は(憧れてはいたものの)実際に行うのは困難だと理解していた。徳島県は電車(なっちは「汽車」と言っているが)の本数が極めて少なく、電車通学がここより遥かにしにくいらしいのだ。


 なっちと2人で自転車通学。この辺では無理だろうが、もしできたとしたら青春の記憶として一生残り続けることになるだろう。


 「自転車通学っていいよね、できないけどやってみたい」

 「まああれが普通だったからね。この辺とは土地の平坦さも違うし、私も最初の方は自転車使おうかなと思ってたけど無理だった」

 「2人で自転車通学したかったな」

 「そもそもショウは自転車乗れないでしょ」


 なっちは時々、「やかましいわ」と言いたくなるようなことを言ってくる。(復帰するつもりのようなので、この言葉は不適切かもしれないが)彼女のアイドル時代のTwitterを見たときも、なっち(当時の名前はなっきぃ)は同じようなキャラだった。


 それを知ったうえで、本人がそのことについてどう思ってるのか、正面から聞いてみた。

 

 「なっちって昔からそんなキャラなの? なんていうか、煽ってくる?っていうのかな」


 なっちは質問の意図をすぐに理解したようで、あまり考えるそぶりを見せずに答える。


 「いや、前も言ったけど、作ってるキャラじゃないよ」

 「自覚のない煽りって、なんかやだな」

 「ごめんなさい」


 なっちがこのように接するのは、(彼女的に)ある程度仲が良いと感じている関係の人だけらしい。僕は、「やだ」と言ってしまったものの、彼女のそんな性格が好きだった。


 「あさって学園祭だね。一緒に回る?」


 なっちは提案する。僕は、彼女と一緒に行動できること、なっちが僕を誘ってくれたことの2つが嬉しかった。


 喋りながら歩いていると、もう学校までついていた。僕たちは、同時に3組の教室に入っていった。山村はまだ来ていないようだが、太田はすでに作業を始めていた。僕たちもともに作業へ入っていった。

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