27 学園祭準備 5
3時10分のチャイムが響く。1時間ほど色塗りを行っていると、もう帰れる時間になっていたが、まだぜんぜん終わっておらず、今日は特に用事もないため、最終下校の6時まで残ることにしていた。
「その段ボール、落ちてると邪魔だからどけといて」
「そこにある養生テープとって」
「机の上に置いてあるCD流して」
僕が不器用なせいで、色塗りのペースが他人と比べてかなり遅い、ということに気づかれた結果、文化祭係の太田となっちに色々と雑務を頼まれることになってしまった。
「なっち、なんで僕ばっかりそんな雑用させられてんの?」
「だってショウ、色々と下手なんだもん」
なっちはいつも笑いながら言うが、意外と毒舌だ。なっちと僕は仲が良い(つもりな)ので気にならないが、もし仲が良くなければ嫌になってるかもしれない。
「なっちって、意外と煽ってくるよね」
「え、そんなつもりないんだけど」
無自覚煽りほど質の悪いものはない。まあ、仲が良いからこんなに煽られてるのかもしれないが。
一休みしている途中、僕たちは2階のテラスに来ていた。
「もう17時半か、C北の観覧車はいつまで緑なんだろう?」
「あのビルの観覧車、色変わるの? ずっと緑じゃん」
駅前のショッピングモールの屋上には観覧車がある。ビルの高さの2倍の直径を持つその観覧車は、季節によって夜の照明の色を変える。具体的に変わる時期は把握していないが、春・夏は緑、秋・冬はオレンジ色になる。
「オレンジの観覧車とか、見たことない!」
「なっちさ、確か受験しにここに来た時、観覧車見なかったの?」
駅前の観覧車はかなり巨大なので、絶対に目に付くはずである。なっちは答える。
「いや、夜じゃなかったから」
「あー」
話していると、チャイムが鳴り響く。気づいたら17時半になっていた。最終下校まであと30分。そろそろまずいな、と思って僕たちは教室へ戻った。
「あ、前田と長谷川、どこいってたの?」
「ごめん、いやちょっと、休憩しにテラスにいってた」
僕は言い訳をせずに答えた。なっちも、ごめんなさい、と言っていた。




