21 思い出
「果てしない荒野 きらめく星の 足跡たどり 僕らは砂漠を横切る」
ゲーム内では、誰も到着したことのない数々の星をめぐり、無限に旅することになる。空に見上げて見える星の全てに、プレイヤーは実際に向かうことができる。
「広がる草原 何もなくても 遠い地平に まっすぐ迷わないだろう」
「夜が訪れて急に冷え込んだ 夜空は無数の星 導いてくれるさ」
「道のない土地に迷ったとしても 信じる方向へ進んだなら」
「彼方の地平に届かなくても 僕らは目指す 子どもの頃思った場所」
彼女は、ゲームの世界観とヘリアンサスガールズ活動初期の立ち位置が似ていたかもしれない、と話していた。1期生の ―つまり立ち上げ時期、先人がいない― 活動は、何もない草原を5人でまっすぐ進んでいくようなものだった、と。
2期生が加わって9人組になっても、進む方向は変わらなかったが、3期生が加わる直前に、なっちは引っ越すことが決まってしまったようだった。
休業公演の直前に、なっちは3期生と少し話をしたらしい。みんな頑張ってね、私も一緒に頑張るから。そのうち戻ってくるから、その時は宜しくね、というメッセージを13人のメンバーに送った、と聞いている。
「今でもLINEでは、昔のメンバーと話しているんだけど、しばらく会っていないね。地元に戻ったときに13人に会いたい。今は夏休みが始まったばかりだけど、8月の上旬に徳島の方に家族で行く予定んだんだよね。その時、昔仲が良かった、かわみんとかしふぉんに会いに行ければ、って思ってる」
なっちの話を聞いて、僕は会話のキャッチボールを返す。
「徳島か...... わかってはいるけど、遠すぎるんだよね。もし神奈川県のこの辺だったら、ライブ行ってみたいとも思うんだけど。半年後か、ちょっとまだ先になるけど『四国のアイドルが横浜に来てくれる』ってだけで滅多にない機会だ、って思っておくか」
思い出話に花を咲かせていたため、10分ほど、2人ともなにも歌わずに話続けていた。少しぬるくなったコーヒーを飲み干し、なっちはヘリアンサスガールズの「次の世界へ」という歌を入れた。




