表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

まだまだ9夜

 鐘楼の辺りから正面の渡し橋へと、お堀の水面ギリギリを猛スピードでアリシアが飛びぬけていく。

 橋の下をくぐり抜けると、探るようにゆっくりと顔を覗かせた。


 不格好に鳴り響く鐘楼の音に門番たちも、橋を渡る馬車も何事かと騒いでいる。


 実際、警備に当たっていた数名は鐘楼に様子を見に行ったらしく警備は手薄。


 素知らぬ顔で橋の上に降り立つアリシアには誰も気が付かない。

 そのまま堂々と徒歩で城内に侵入したアリシアは衣裳部屋を目指して歩き出した。




 ソリスの覗く階下は螺旋(らせん)状の階段が渦を巻いている。


 このままここにいても逃げ道はない。


「んー」

 階段上なら1度に来ても1人か2人。

 正直言って、衛兵の10や20物の数ではない。


(ないけど、ここから落下したら怪我じゃ済まないよね。

 余計な怪我人や死人は出したくない。

 顔を見られるのも避けたいしな)


 とりあえず階段を下りながら考えをまとめていく。

 石造りの内壁は綺麗なベージュがグラデーションを描くように配置されていて、小さな明かり取りの窓だけでもそんなに寒々しい暗さを感じさせない。


「ん。

 んんんっ!」

 螺旋階段の途中に、おそらくは内部に入れるようの小ぶりの木戸と小さな踊り場が目に入った。


 飛びつく木戸にノブ等はなくはなく、もちろん内側から施錠されている。

 木戸の隙間を覗き込むとびた鉄板。


(この感じ。

 鉄板に南京錠か)


 階段を上がってくる衛兵の足音を聞きながら、さやに納めた剣の柄を握る。


 息を整え、集中力を高めていく。

 ゆっくりと肺を満たす空気が気合いとともに短く吐き出され、鞘を滑る勢いに乗って木戸のわずかな隙間に(やいば)を振るう。


 カチャリ。


 金属の触れる小さな音に、ソリスは抜刀(ばっとう)した剣を鞘に収めた。

 ゆっくりと押す木戸は今度は何の抵抗もなく、ソリスを招き入れる。


 人気のない殺伐とした廊下。

 ベルト代わりに腰に巻いていた布を、両断された鉄板を繋ぎとめている南京錠とドアノブに通し、きつく結んで一応の時間稼ぎを図っておく。


(さてと。

 うちの小娘はどこに行ったのかしら)

 もちろん、ソリスが鐘楼を鳴らした<事件>を利用しない手はないはず。

(やっぱり衣裳部屋か)


 ソリスは下に降りるための階段を探しに歩き出した。

 木戸越しに聞こえていたバタバタと階段を駆け上ってくる足音も、すぐにソリスの耳には届かなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ