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じゃあ9夜

「ようこそおいでになりました。

 お待ち申し上げておりましたよ。

 ソリス・レアード様。

 アリシア・ノベルズ様ですね」


 城下町に入る大きな城門には左右に1人づつ、槍を携えた門兵が立ち、それよりも身なりのいい男がロール紙を伸ばして中の名前を確認している。


「くっっそっ!」

時間切れ(タイムアウト)

 良かったじゃない、もう1回ドレスを着れるわよ」

 悪態を吐くアリシアを、門兵達は驚きを隠しきれない顔でチラチラと見ている。

 彼等からしたら、門をくぐった途端に機嫌が悪くなった。というところか……。


「馬車を待たせてあります」

 うやうやしく礼をして職務を遂行しようとする男を、ソリスは手で制した。

「ちょっと用事があるの。

 城へは後で伺うわ」

 町の中から2人に送られる視線に、はっきりと気が付いた。



 通りを曲がり顔を出した老女の前に、長い髪を揺らした魔道士アリシアが空から舞い降りる。

 その姿に慌てたように振り返る背後には、道を塞ぐように立ち塞がる剣士ソリス。

「あたし達に用事があったんじゃないの?」


「さっきは城で、あの子と話をしたのかい?」

 樫の杖を持ち、深い青緑色のワンピースを着た品の良い老女は悲しそうに口を開いた。



 老女の話では、あのペールブルーのドレスの姫は上位貴族の令嬢だったらしい。

 しかし父の後妻とソリが合わず、父の死後は召使い状態。

 老女は後見人だったが出入りを禁止されて、姫とも絶縁状態だった。


「でも、城で行われるパーティーはチャンスだと思ったんだよ。

 あの子はとっても美人だし、心根も優しい。

 そんなあの子が、現状に絶望し後妻とその連れ子を恨んでさえいた。

 私は少し魔道をかじっていてね。あの子の力になれると思ったんだ」


「でもお妃には選ばれなかった……。

 恨みつらみが爆発して、魔力に増幅されたのかしらね」

 ソリスが静かに続ける言葉に、一瞬アリシアがまゆをひそめる。


「いや。

 ちゃーんとお妃には選ばれたよ。

 可愛い2人の天使こどもにも恵まれて、城で幸せに暮らしているよ」


『はぁ⁉︎』

 ニコニコと微笑む老女に、2人の顔が引きつる。

「あの子ってばねぇ、私の事もちゃーんと結婚式に招待してくれたんだよぉ〜。

 それはそれは綺麗な花嫁さんで……」

「ちょっとまて、ばーさん」

 思い出話に花が咲きそうな老女にアリシアが待ったをかける。

「ちゃんと選ばれたって、じゃあこの現象は一体何なのよっ」

「さぁねぇ」

 困ったように首を傾げる老女に、アリシアとソリスも言葉が続かない。


「と、りあえず、あのペールブルーのドレス女は本物じゃないって事よね?」

 考えるように髪に手をやるソリスに、アリシアが言葉を続ける。

「鐘楼が鳴るのもコントロールしているみたいだしね。

 いい加減解放してもらいましょうか。

 次の狙いは鐘楼。その後は小娘よ」

 元々こらえ性もないが、出し抜かれたことが相当腹に据えかねたらしいアリシアの目が、珍しくやる気に輝いた。


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