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たぶん8夜

「そろそろね」

 パーティーも半ばを過ぎ、廊下の壁に寄りかかってペールブルーのドレスの女を待つ2人の前を、すでに何人かの花嫁候補が通っている。

 唐突に、パーティーホールに歓声が上がった。


「なんと美しい」

「まるで精霊のようだ……」


 その声に、アリシアとソリスは顔を見合わせた。

「やられた」

 アリシアが大きく髪をかきあげる。

「やってくれるじゃないっ。

 あの女、一枚噛んでると見て間違いないわね」


 パーティーホールへ急ぐ2人の前に、数人の衛兵が立ち塞がる。

「お嬢様方、ホールでの帯刀は必要ないかと存じます」

 チラリとアリシアの視線がソリスに向く。

「だってさ。片してきなさいよ」

「簡単に言ってくれるわね。

 あたしはこれが商売道具なのよ」

 ブラッドオレンジのグラデーションドレスを揺らし、ソリスは鞘に収めたロングソードを引き寄せる。


 不意に、12時を知らせる鐘が鳴り始めた。

「っ! 早い」

 頭上を見上げたソリスとは対照的に、ホールの奥を見据えるアリシアは小さく舌打ちをする。

「あの女ぁっ! 巻いたわねっ。

 ソリス。強行突破するわよ」

 スッとアリシアが利き手を振り上げた。


  ーーシルフよ唸れ。

  その身の叫びをうねりに変えよっ。ーー

爆風陣ブラスト・サークルっ!」

「ぐわっっ!」

 アリシアの放つ力ある言葉が突風を起こし、巻き込んだ衛兵を壁に叩きつけたっ!


「相変わらずエゲツないわねー」

 ソリスの冷めた視線に、アリシアのサンゴ色のふっくらとした唇が悪魔の微笑みを浮かべる。

「あたしの行く手に立ってる方が、悪いのよっ」

 アリシアは大きく髪をかきあげると、落下して唸っている衛兵達には目もくれずに悠然とホールへ入って行く。


「プリンセスっ!」

 王子の後ろ姿がテラスへ飛び出して行った。


 何事かとざわめく人の波に、追いかけても間に合わないのは明白で。

飛翔空ウィング・エアっ」

 ソリスの肩に手を置いた、アリシアの呪文に螺旋らせんの風をその身にまとう。

「きゃぁぁっ」

 近場にいた数人をなぎ倒し、テーブルクロスを巻き上げたっ!


(やりたい放題だな)

 あえて口には出さないが(仕返しが怖いので)、ソリスは散々たる状況にこそっとため息をつく。

 重力から解放された2人の身体は、アリシアのコントロールで人々の頭上に舞い上がると、高い天井との間を猛スピードで駆け抜けるっ!


「プリンセス……」

 テラスから続く白い螺旋階段のど真ん中。

 街灯代わりの魔法の光がきらめきを残す。

「邪魔よっっ!」

 ガラスの靴を片手に余韻に浸り、(たたず)む王子を弾き飛ばし、風の弾丸と化したアリシアとソリスが走り出した馬車の最後尾に手を掛け……っ!


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