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99、砂漠越え

 それから数日。ブリュンヒルデとジークルーネは馬屋で働いた。 

 早朝から厩舎の掃除、掃除が終わると馬たちの食事、その後は筋肉が落ちないようにみっちりと。

マッサージを兼ねたブラッシング。そして古くなった蹄鉄の交換。ハッキリ言って超重労働だ。

 俺も手伝ったが1日でダウンした。というか戦力外通告された。  

 ブリュンヒルデとジークルーネは、実によく働いた。

 疲労の色一つ見せず、掃除からマッサージまで丹念に行い、店主さんを驚かせていた。

 スプマドールもキレイに洗い、マッサージをして蹄の手入れと蹄鉄を取り付ける。これらの作業はブリュンヒルデとジークルーネだけで行った。

 店主さん曰く、『あんな完璧な仕事は見たことねぇ。たった一度蹄鉄取り付け作業見せただけでモノにしちまった。この嬢ちゃんたち只者じゃねぇ!!』と、非常に興奮してたとか。

 そしてアルバイト最終日、スプマドールに鞍を取り付けた。

 最終日なので、俺も様子を見に来てる。


「嬢ちゃん、スプマドールを外で遊ばせてきな。全力で走る機会なんてなかったからな。それと、鞍をもう一つ貸してやるから、嬢ちゃんたちの連れてるブラウンホースも走らせてきたらどうだ?」


 と、スタリオンとスプマドールの顔合わせもした。

 ジークルーネは喜び、スタリオンを連れて馬屋へ向かい、すでにスプマドールに騎乗してるブリュンヒルデと顔合わせを果たした。

 店主さんは感心していた。


「ほう、いい馬じゃねぇか」

「スタリオンって言うんです。スタリオン、この子はスプマドール。新しい仲間だよ」

『ブルルルン……』『ブルル……』


 スプマドールがスタリオンに顔を寄せると、スタリオンもそれに応える。

 どうやら、お互いに認め合ったようだ。

 店主さんがスタリオンに鞍と手綱を付けると、ジークルーネが騎乗した。


「えっへへ、こうやって背中に乗るのは初めてだね」

『では行きましょう。センセイ、行ってきます』

「行ってきます!」

「いってらっしゃ~い」


 ちなみに俺はお留守番。

 最初は、ヴィングスコルニルの背に乗って上空からついてきてとブリュンヒルデに言われたが却下。留守番することにした。

 

「いやぁ、嬢ちゃんたちが手伝ってくれて助かったぜ。お前さんとは違ってパワーもあるし仕事も完璧だぜ」

「は、ははは……」

「悪い悪い、冗談だよ。このまま店で働いてほしいが……」

「申し訳ありません、それは」

「わーってるよ。冒険者なんだろ? でもまぁ、ディザード王国から帰ってきたら顔出せよ?」

「はい、もちろんです」

「はっはっは!! そうかそうか」


 こうして、馬屋の手伝いは終わった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 この数日、馬屋で手伝いをしたブリュンヒルデとジークルーネは、馬の扱いがかなり上達した。

 蹄鉄の交換もできるようになったし、馬が喜ぶメニューや栄養管理、マッサージやブラッシングの技術向上など、本職に勝るとも劣らない。

 ブリュンヒルデとジークルーネが働いている間、クトネたちも馬屋に顔を出し、新しい馬であるスプマドールと顔あわせをした。

 スタリオンはスプマドールと隣同士の厩舎に移し、お互い交流を深めた。ケンカするようなこともなかったので、これからの旅も安心して連れていけるだろう。

 ブリュンヒルデたちが働いている間、買い出しや水の調達、荷車の改造を終えた。

 そして出発日。改造した荷車とスタリオン・スプマドールをドッキングさせる。

 荷車にはソリが取り付けられ、着脱式に改造された車輪も付いている。この車輪は砂漠に入ったら取り外す予定だ。

 荷車には大きな樽が3つほど取り付けられている。もちろん、中身は水だ。


「さて、出発準備は整ったな?」

「ええ。樽の水はなくなっても、シオンさんに魔術で補充してもらえば問題ないです」

「まかせて。わたし、がんばる」

「ふふ、頼むぞシオン。それと、スタリオンとスプマドールも」


 ブリュンヒルデとジークルーネにマッサージを受けているスタリオンとスプマドール。白馬と黒馬の組み合わせはとても様になるな。


「ブリュンヒルデ、ジークルーネ。スタリオンたちの調子はどうだ?」

『コンディションブルー、問題ありません』

「スタリオンもスプマドールも、いっぱい休んでリフレッシュしたから元気いっぱいだって。砂漠だろうと山道だろうと任せろだって」

『ヒッヒィィィン!!』『ブルルルルッ!!』


 実に頼りになる鳴き声だ。

 この数日、俺たちもだいぶスプマドールに打ち解けた。


「よし、じゃあディザード王国に向けて出発だ!!」


 俺たちは馬車に乗り込み、軽やかな速度で出発した。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 スプマドールとスタリオンの足並みはしっかり揃い、水の入った重い樽を3つも積んでるのに疲労の色はまるで見えなかった。

 ちなみに、水がなくなっても三日月が魔術で水を作り出せるからあまり問題ない。でも、魔力で生み出した水は魔力が含まれているため、魔術師以外が飲むのはあまりよろしくないようだ。

 なので、樽は基本的に馬やネコ用にして、人間は三日月の魔術水を飲むことにする。

 何日か移動すると、徐々に気温が高くなってきた。


「砂漠、近いかも」

「だな······三日月、ネコたちが熱中症にならないように、荷車の中に日陰を作って、桶に氷を入れて置いてくれ」

「うん。ありがとう、せんせ」


 三日月は、俺が誰よりも早くネコを気遣ったのが嬉しいようだ。

 荷車の隅っこに小さな木箱を置き、コップに氷を入れて中へ入れ、出入りしやすいように蓋をずらして置いておくと、ネコたちは木箱の中へ飛び込んだ。これでコップの氷がクーラー代わりとなり、木箱の中を冷やしてくれる。

 そんなネコたちを眺めながら、クトネとルーシアは汗を拭った。


「あ゛〜〜······あたしもネコになりたいですぅ〜〜」

「気温がどんどん高くなるな······砂漠前からこれか」


 クトネはローブを脱いでシャツとミニスカスタイルになり、ルーシアもベストを脱いでシャツを縛りくびれとヘソを出していた。相変わらず無意識なエロさを見せやがる。

 俺も籠手が熱いので外し、シャツとズボンのみのラフなスタイルで荷車の中へ。

 ブリュンヒルデとジークルーネは暑さなんてなんのその。御者席でスタリオンとスプマドール相手にキャッキャしてる。

 三日月は、タンクトップにスパッツという寝間着みたいな格好で木箱を覗いていた。


 そして、舞台は砂漠へ移る。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ついに、砂漠へ到着した。

 照りつけるクソ熱い太陽、陽炎が見える砂漠、砂しかない地面······これ、マジ砂漠だ。干からびて死ぬ砂漠だ。

 荷車の車輪を外してソリモードへ。すると荷車は砂地に沈むことなく、馬のパワーによって引きずられる。こりゃいいな、振動も少ないし暑さ以外だと快適かも。

 まぁ、その暑さが問題なのだが。


「あぁ〜つぃ〜······いやはや、殺しにかかってるな」

「ですね〜······氷水がおいしいですぅ〜」

「ふぅ······冷たいエールが飲みたいな。セージ、ディザード王国へ着いたら酒場に行こう」

「おう、当然だ」

「ふにゃあ······せんせ、暑い」


 砂漠特有のカラッカラの暑さは染みる。

 荷車の外に出れば直射日光にやられる。なので、蒸し暑い荷車の外に出ることはできない。

 ブリュンヒルデとジークルーネは日光なんてなんのその。同じように、暑さをまるで感じさせないスタリオンとスプマドールも、いつもと変わらない速度でパカパカ進む。

 

「なぁルーシア、ブラウンホースって暑さに強いのか······?」

「暑さだけじゃない。寒暖に強い」

「そっか······羨ましいな」


 茹だりそうな暑さだが、夜は逆に真冬並みの寒さになる。

 知識は仕入れておいたが、あまりにも寒かった。

 夜、ルーシアとクトネは身を寄せ合い、子猫モードの三日月・みけこ・くろこを抱いて毛布に包まって寝た。

 俺はというと、何故かシリカが毛布に潜り込んできたので、遠慮なく抱かせてもらい、湯たんぽ代わりにした。

 ブリュンヒルデとジークルーネは、焚き火の番をしながら馬のマッサージとブラッシングをする。

 そんな生活をしながら、砂漠をひたすら進む。

 暑いので夜に移動して昼間は寝ようという意見も出たが、クソ暑い昼間に寝るのはまず不可能で、体力も回復しないので却下。昼起きて夜寝るというスタイルのまま進んだ。

 そして、暑さのせいかちょっと大胆になる。


「ふぅ······暑いな」

「ですね〜······これは絶対に慣れませんね〜」

「にゃあ·······」

「······」


 薄着だし、汗のせいかシャツが透けてる。

 暑さのせいで注意力も散漫なのか、気が付いていて放置してるのかは知らないが、ちょっとだけ役得だった。

 ルーシアは、胸の谷間は当たり前、昔の小学生みたいな短パンを履いてるのでスラリとした生足が剥き出しでエロい。クトネはタンクトップに短パン、無くはない胸がチラチラ見える。三日月は何故か俺のシャツを着て、ブルマみたいなパンツを履いていた。

 暑さのせいか、俺の思考もおかしい。

 女子がエロい格好してるのに、エロいなーとは思うけどそれ以上の感想が出てこない。

 というか暑い。


「……はぁ~」

『センセイ、オアシスが見えました』

「あぁオアシスね………………え!?」


 俺たちは全員、荷車の窓から外を見ると、生い茂る木々の中に岩場があり、透き通った水が湧いているオアシスがあった。

 俺たちは顔を見合わせ、テンションを爆発させた。


「よっしゃァァァッ!!」

「やったぁぁっ!! 水です水、オアシスです!!」

「ふぅ……一息吐けるな」

「水浴びしたい」


 ブリュンヒルデをせかし、オアシスへ直行した。

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