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クラス召喚に巻き込まれた教師、外れスキルで機械少女を修理する  作者: さとう
第四章・【超野獣王アルアサド】

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75、戦いの覚悟

 ウルフドッグの馬車に付いて到着した場所は、狼のマークが刻まれた酒場みたいな場所だった。デカい看板には『ウルフドッグ』と書かれている。

 というか······デカい。

 三階建てくらいだろうか、まるでビルみたいだ。

 馬車から降りると、ヴォルフさんが俺たちの馬車のもとへ。

 

「馬車は裏手に停める。人間の持ち物というだけで狙われるからな。しかもこいつはいい馬だ、混血馬は珍しい」

「ほう、貴殿はなかなかいい目をしてるな」

「お、おいルーシア。も、申し訳ないヴォルフさん」

「ふ、構わん。それよりも中には入れ、酒でも飲もう」


 ヴォルフさん、リカルド、ラン、リュコスの4人に付いて建物の中へ入る。


「「「「「お疲れ様ですっ!!」」」」」

「うおっ!?」 


 な、なんかいっぱい獣人がいる。

 狼みたいなやつと、狼耳に狼しっぽの若い女獣人。総勢20人はいるぞ。

 一階は酒場みたいな空間だ。

 カウンターもあるし、棚には酒の瓶がズラリと並んでる。


「ウチのクランメンバーだ。まだ冒険者としては駆け出しの E〜F級ばかりだがな」


 EとFって、ウチのメンバーよりランク高いんですけど。

 すると、人を掻き分けて一人の女性狼獣人が出てきた。


「おかえりなさいヴォルフ団長。依頼は」

「終わった。あとで証書をギルドに提出してくれ」

「はい。リカルド副団長、ランさん、リュコスさんもお疲れ様です」

「おう。シキュー、広場に馬車が二台止まってるから中庭に入れとけ」

「はい。リカルド副団長。それと、ヴォルフ団長、こちらの方々は?」

「客人だ。客間の用意とツマミをオレの部屋に届けてくれ」

「はい、畏まりました」


 ポカンとする俺たち。

 どうやら、ウルフドッグはクランとしてはかなり大きいようだ。

 20人以上のメンバーも強そうだし、事務所なのか? この建物もすごく広い。なんというか、改めて格の違いを見せつけられたような気がする。


「はぁ〜······兄貴、あたしとランは風呂に行かせてもらうよ」

「え、ちょっとリュコス!」

「好きにしろ。リカルド、お前は付き合え」

「わーってるよ。行くぞ」


 リュコスとランは風呂へ。俺たちは三階へ案内された。

 団長室と書かれたドアを開けると、飾り気のないシンプルな部屋だった。

 来客用ソファにテーブル、執務机、酒棚くらいしかない。

 来客用ソファに俺たちは一列になって座ると、反対側にリカルドが座り、ヴォルフさんは棚からグラスと酒瓶を持って座った。


「嬢ちゃんたち、酒は飲めるか?」

「の、飲めらい! ねぇブリュンヒルデさん、ジークルーネさん!」

『問題ありません』

「はい。というか、食物は全て分解されてエネルギーになるので、好き嫌いという概念はないですね」

「そ、そうです! 酒くらい飲めます!」

「こら。ブリュンヒルデやジークルーネはともかく、クトネはダメだ」


 クトネにはジュースを出し、他は酒をもらって乾杯した。

 なかなかキツいが美味い酒だ。ルーシアもそう思ったようだ。


「失礼します」


 お、さっきの女性がクラッカーやチーズや生ハムを乗せた皿を持ってきた。これはありがたい。

 クトネはクラッカーをかじりながらジュースを飲み、俺とルーシアも遠慮なくチーズと生ハムを食べる。

 しばらく酒を堪能すると、ヴォルフさんが言った。


「さて、セージ殿。依頼も終えたことで改めて礼を言わせてもらう。此度は、リカルドの腕と窮地を救っていただき感謝する」

「しかもオマケ付きでな。へへ、道中試したが、マジでパワーが上がってやがる。そこの嬢ちゃんの能力、大したもんだぜ」

「いえいえ。余計なことかと思いましたけど、喜んでいただけたなら良かったです」

「サイクロプスの襲撃でも助かった。そこの魔術師のお嬢ちゃんの障壁に、剣士のお嬢さんの的確な指示、そして······とんでもない破壊を生み出したお嬢ちゃんの一撃だ」

「いやいやハハハ。あたしの障壁は硬いですからねー」

「む、お嬢さんか······ふふ、そんな歳でもないがな」

『············』

「とんでもない破壊?」

「あ、センセイは川に流されてましたからね」


 そういえば、サイクロプス襲撃の顛末を聞いてないな。

 多分、ブリュンヒルデが力押しでなんとかしたんだろうけど。


「·········というか俺、役に立ってねぇな」

「ふ、リーダーとはそういうものだ。セージ殿」


 ヴォルフさんの優しさが染みるぜ。

 ウチのメンバーはみんな優秀で何よりです。


「改めて、お前たちがフォーヴ王国に来た理由はなんだ? お前たちには恩がある、できることなら協力させてくれ」

「えーと······」

「とりあえず、王国滞在中の宿と食事は提供しよう。物資の補給と荷車の点検もオレたちが請け負う。町に出るなら護衛も付けよう」

「ちょ、ちょっと待ってください。さすがにそこまでは」

「ふ、命の借りにしては軽いだろうが、気持ちは受け取ってくれ。オレたちはそれくらい恩を感じている」

「·········」


 ルーシアたちを見ると、みんな頷く。


「わかりました。では、お世話になります。それと······俺たちがこの国に来た理由を説明します。もちろん、他言無用でお願いします」

「当然だ」


 俺は、三日月のことをヴォルフさんに説明した。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「なるほどな……つまり、指輪持ちの人間を助けたいのか」

「はい。三日月がこの国にいるのは間違いなく、そして恐らく、アルアサド国王の下にいると思われます」

「マジかよ……」


 ヴォルフさんもリカルドも渋い顔だ。


「アルアサド様は『鶺鴒せきれい』と並び称される最強の獣人だぞ……人間であるお前の話など聞くわけがないし、指輪持ちの人間を返せなど言っても返すわけがない。それどころか城の前で門前払いがオチだ」

「でも、助けます。三日月しおんは、俺の大事な生徒ですから」

「………」

「ヴォルフさん、リカルドさん。お言葉はありがたいですが、手伝いはいりません。宿と食事を提供してくれるだけでもありがたいです」

「………はぁ」

「オメー、とんでもねぇ野郎だな。つまりお前は、この国の王であるアルアサド様に、ケンカを売ろうとしてるんだぜ?」

「覚悟の上です。最悪、戦闘になる可能性もありますけど……」


 俺は仲間を見る。

 クトネは頭を抱え、ルーシアは額に手を当て、ジークルーネはニコニコ、ブリュンヒルデは真っ直ぐ俺を見た。


『私は、センセイに従います。センセイのために剣を振るうのが私です』

「わたしもだよ、お姉ちゃん。わたし、戦闘機能は付いてないけど、剣や魔術だけが戦闘じゃないしね」

「はぁ~………セージさん。かなりヤバいこと言ってますよ?」

「覚悟の上だ。クトネ、お前はどうする?」

「………まぁ、この国に入った時からマークされてますからね。たぶん、逃げることもできないでしょう。あたしも付いていきますよ」

「ルーシアは?」

「………まずは話し合いの席を設けることが条件だ。可能性は殆どないだろうが、そのミカヅキという少女を救うのがセージの目的なら、不要な争いを避けて進むのが最善の道のはず。もしアルアサド国王が問答無用で襲ってきたら、戦うのもやむなし……と言ったところだ」

「ああ。まずはアルアサド国王に面会しよう。全てはそこからだ」


 これで俺たちの目的は決まった。

 まず、アルアサド国王に面会して、三日月しおんがいるかどうかを確かめる。

 そして返還を要求。金銭で解決できるならその通りにして、不可能なら返還の条件を聞く。それでもダメなら……力尽くで取り返すしかない。

 戦闘の覚悟はできてる。

 怖いとか死ぬとかじゃない。三日月しおんを取り戻すためなら、俺は戦える。


「よし。まずはジークルーネ、ホルアクティを使って城を探索できるか? 音声データと映像データを入手してくれ」

「はい、センセイ」

「それとヴォルフさん、アルアサド国王に面会希望って出せますか?」

「……可能だ。望むならオレが手配しよう」

「ありがとうございます。こっちも準備があるんで、それが終わったらお願いします」

「わかった」

「あとは……ヴォルフさんとリカルドさん、アルアサド国王の情報をできるだけ教えてください。どんな些細なことでも構いません」

「………いいだろう」

「へ、なんか面白くなってきやがった」


 まずは情報集めだ。

 ミスできない戦いになる可能性が高い。

 どんな情報でも武器になる可能性もある。


 待ってろよ……三日月。

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お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
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