表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラス召喚に巻き込まれた教師、外れスキルで機械少女を修理する  作者: さとう
第四章・【超野獣王アルアサド】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/310

73、三日月しおん⑥

 気がついたら、藁の上で眠っていた。

 目が腫れぼったい……泣いてるうちに眠っちゃったみたい。

 窓もないから外の様子がわからない。けっこう時間が経ったと思う……おなか減ったな。それに、ちょっとお花を摘みにいきたい。

 

「…………」


 わたしの視線は、排水溝へ。

 喉が渇いたので樽の水を飲む。匂いを嗅いだけどたぶん大丈夫、でも念のため舐めるだけにしておく。

 あとは……どうしよう。したあとに拭くこともできないし、両手がふさがってるから……。

 

「メシの時間だぞ!!」

「ひゃっ!!」


 いきなりだったので驚いた。

 馬の獣人男性が、野菜クズと千切ったパンを混ぜた物を入れたボウルを持ってきて、鉄格子の中に入れた。どう見ても家畜用のエサにしか見えないよ……。


「さっさと食え」

「………」


 馬の獣人はそう言って出ていった。

 わたしはお腹が減っていたし、まだ諦めていない。だから食べる。

 パンは硬く、野菜クズは芯の部分が多く食べにくい。でも……生きるために食べる。

 

「んっぐ……ん、あむ」


 芯もよく噛んで食べる。

 食べ終わり、水を飲んで流し込む。

 まずは、どうにかしてここから逃げないと……首輪と枷を外して、キャットウォークを使って逃げる。服も調達して、お金も取り返して……このフォーヴ王国はまずい。人間が踏み込んでいい場所じゃない。

 とにかく、隙をうかがって……。


「食ったか。おし、次は洗体だ。大事な商品だししっかり洗わないとな」

「え……?」

「おい、レア物だからな、傷は付けるなよ」

「ああ、わかってるよ」

「おう、時間も迫ってるしな」


 牢屋に、獣人が入ってきた。

 洗体ってまさか……。


「い、いやぁっ!!」

「っと、暴れんなこの、メス」

「離して、離して!!」

「ッチ、おい」

「おう」

「んっ!?」


 身体を押さえつけられ、顔に水をかけられる……あれ、なんか、うごけな……。

 

「さっさと洗えよ、時間も押してる」

「ああ、他の商品の運搬は?」

「もう始まってる。このレア物が最後だ」

「はぁ~……なぁいくらになると思う?」

「う~ん……今までだと、レア物は金貨20枚から始まったよな? どんなチート持ってるか落札しないとわからねぇからな、このレア物は当たりだと思うか?」

「さーな。まぁ金貨50枚……いや、80枚ってとこか?」

「…………」


 わたし……この獣人たちに、身体を洗われてる。

 足も腕も、背中もお尻も、胸も………水と油みたいなので洗われてる。

 意識ははっきりしてるのに、身体が動かない……この変な水のせいだ。

 涙だけが出る……こんな、こんな……わたし、こんな獣人たちに、ぜんぶ見られて……触られて。


「おーし終わり。じゃあ運搬するか」

「ああ、オークション見ていくか?」

「そうだな……いやいいわ。終わったら次の商品が入るかもしれねぇし、詰め所で昼寝でもしてるわ」

「そうか? じゃあオレは覗いていくか」

「…………」


 首に鎖が繋がれ、立たされた。

 そのまま引っ張られ、牢屋をあとにする。


 これから始まるオークション……どうなるんだろ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 連れてこられた場所は、控え室みたいな場所だった。

 部屋は教室ほど広く、係員みたいな獣人がいっぱいいる。よく見ると、受付番号みたいな物をもらい、首輪や手枷に付けている。

 わたしの首輪にも、番号が付けられた。

 周りには、わたしと同じ全裸の男女が並んでる……みんな死んだような目付きをして俯いてる。

 たぶん……諦めたんだろうな。裸なのに隠そうともしてない。

 少しだけど、騒がしい声が聞こえる……オークションが始まってるんだ。


「………」


 わたしも、男性や獣人がいるけどもう身体を隠そうとしなかった。

 恥ずかしいけど、どうしようもない。

 諦めずチャンスを狙う。この首輪が外されるチャンスはきっとくる。外されたらすぐにキャットウォークを使って身体能力を強化。獣人2~3人くらいならなんとかなる。それに魔術も使えるし、逃げるチャンスはきっとある。


「あと3人か……」


 わたしの鎖を握る獣人がそう言った。

 部屋の中の人間が、次々といなくなる……みんな、オークションで買われたのかな。

 そして、ついにわたしの番が来た。


「ほれ、行くぞ」

「…………」


 鎖を引かれ、裸のまま舞台へ進む。

 そこは、劇場のステージのような場所だった。とっても煌びやかで……すごい。

 そして、たくさんの獣人たちがわたしを見ていた。

 

「……っ」


 急に恥ずかしくなってきた。

 わたし、こんなかっこうで……前も隠せないなんて。

 顔が熱くなる。足が震える。いやだ、見ないで、見ないで。


『さぁ~!! 最後の商品は、久し振りのレア物だ!! メスの指輪持ち、どんなチート能力かは落札してのお楽しみ!! 金貨20枚からスタートだぁ!!』


 ヤギみたいな獣人が叫ぶと、会場全体に声が響く。

 わたしは羞恥に耐えながら腕で胸を隠そうとしたが、鎖を持つ獣人に引っ張られ隠すこともできない。

 羞恥に顔を赤くして涙が零れる。恥ずかしい、恥ずかしい。

 

「22!!」「25!!」「30!!」


 身なりのいい獣人たちが、こぞって競りを続ける。

 わたしは商品なんだ。なんで、なんでこんな目に……。


「500」

『え……』

「500です」


 手を挙げたのは、豹の獣人。

 会場が静まりかえる。

 いきなりの金貨500枚に、みんな驚いていた。


『き、金貨500枚!! 他にいませんか~?』


 ドヨドヨとざわめく。でも、誰も名乗りを上げない。

 豹の獣人は口を歪めてるように見える………なんだろう、怖い。


『はい!! ではそちらのお方、金貨500枚で落札です!!』


 こうして、わたしは落札された。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 受付で豹の獣人は金貨を支払い、わたしの首輪に付けられた鎖を受け取る。

 そして、わたしには何も言わずに歩き出したので付いていくと、普通に外に出た。

 

「っ……」

「外に馬車を待たせてあります」

「あ、あの……なにか着る物を」

「?……家畜に服が必要なのですか?」

「………っ、わたし家畜じゃない!!」

「ふむ、人間らしい言葉ですね。人間など我々獣人に劣る格下の生物でしょう? この大地に住まう気高き野獣の血を受け継ぐ獣人こそ、この大陸の始まりの祖にして全て。それ以外の生物は全て………家畜です」

「………な」


 豹の獣人は、それだけ言って歩き出す。

 結局、着る物はもらえなかった。裸のまま外へ出て近くの馬車まで歩く……なにこれ、わたし以外にも人間がいっぱいいる。

 みんな、裸で歩いてる。しかも四つん這いになってリードで繋がれてたり、子供の獣人が投げる石の的にされたりしてる。


「く………狂ってる」

「心外ですね。それより、さっさと来なさい」

「あうっ!?」


 鎖を引かれ歩き、馬車に到着した。

 金貨500枚支払った経済力は伊達じゃないのか、キレイな馬車だ。


「少し説明しておきます。私があなたを買ったのはもちろん、あなたのチート能力に興味があるからです」

「……わたしの、能力?」

「ええ。今ここで見せて……と言いたいですが、能力を使わせるには手枷と首輪を外さなければなりませんし、少しでも自由を取り戻せば、あなたは私を殺害して脱走するでしょうね。なので、絶対に抵抗ができない場所で首輪と手枷を外し、あなたの能力を見せていただきます」

「…………どこ」

「くっくっく、それはもちろん、私の主の下です」

「…………だれ?」


 今は情報がほしい。この獣人はお喋りみたいだし、聞いたらちゃんと答えてくれる。

 わたしだってオストローデ王国に召喚された勇者の1人だもん、抵抗してやる。

 豹の獣人は、楽しそうに言った。


「私の主は、『超野獣王ビースト・オブ・ビーストアルアサド』……もしあなたが主の求めてる能力の持ち主なら、解放される可能性もあるかもしれませんね」

「アルアサド………ま、魔王の1人!?」

「そう。これから向かうのはフォーヴ王国です。ふふ、楽しみですね」


 魔王……こんな状況で会うなんて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『WEBコミックガンマぷらす』にてコミカライズ連載中!
画像から公式サイトへ飛べます!

lji9gfwi5rv11muhzghfpigf0tf_2by_i7_9q_6o3p.jpg



お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ