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クラス召喚に巻き込まれた教師、外れスキルで機械少女を修理する  作者: さとう
第四章・【超野獣王アルアサド】

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72、三日月しおん⑤

 ずっと寝ていた……気がする。

 目が覚めると、部屋は真っ暗だった。

 ぼんやりする頭で周囲を見回すと、狭い箱のようなところにいるのがなんとなくわかった。

 

「んん······ここ、ど······えっ!?」

 

 両手に枷が嵌められていた。

 足には鎖が嵌められ、動けないように鉄球が付いている。それに·······わたし、服を着ていない。下着も何もない、生まれたままの姿で拘束されてる!!


「なにこれ、なんで······」


 パニックになりそうだ。

 それに、ここにいるのはわたしだけじゃない。女の子がわたしと同じように拘束されてる。


「っ!! みけこ、くろこ!!······っ!?」


 ここで、初めて首に違和感を覚えた。

 枷を嵌められた両手を上げ、首に触れる。


「······なに、これ? 首輪?」


 わたしの首に、鉄のような首輪が嵌められていた。

 冷たく、首にフィットするような感触。なんだろう······ぞわぞわする。

 いったい、何が起きてるの?

 確か······宝石の町へ行く乗り合い馬車に乗ってたら眠くなって······気が付いたらここだった。

 服も下着も荷物もない完全な全裸で、両手両足に枷、首には鉄の首輪を付けて、暗い箱のような場所にいる。

 まさか······まさか。


「わたし·········捕まったの?」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 他の女の子たちも続々と起き始め、自分が裸ということに気がついて声を上げたり、泣いたりする子が出てきた。

 わたしみたいに首輪を付けてる子はいない。なんでわたしだけ·········。


「··········チート能力? っ!!」


 魔力が練れない。

 魔術どころかチートも使えない。みけことくろこの繋がりが切れてる。それにしろすけとの繋がりも······。

 この首輪、魔術とチートを無効化する首輪だ。


「そんな······」


 しろすけとの繋がり、切れちゃった······。

 わたしの能力は、一度繋がりが切れると、もう一度ネコあつめで使役しないといけない。つまり、しろすけとはもう······。


「······っ」


 涙が溢れた。

 なんでこんな、ここどこ? 

 すると、外が騒がしくなってきた。


「でよ、やっぱ賭けるならリンドの方だと思うんだよ」

「バカ言え、リンドは連勝中だがデズラのヤツは毎回ベスト8に名を連ねてる。くくく、今回こそ優勝だぜ」

「オメー、もう賭けたのかよ? ははは、今晩の奢りはお前だな」

「言ってろ、吠えヅラかかせてやるよ」


 男の人の声。

 すると、四方が一気に明るくなった。どうやらわたしたちは檻に閉じ込められ、大きな布を被せられていたらしい。

 男の人たちは、トカゲの獣人だった。


「でよ、今日こそキャサリンちゃんとイケそうな気がするんだよ」

「ぷっ······まーだ言ってんのかよ?」

「うるせ、見てろよ? 今日の給金が入ったら花を買って······あぁ緊張してきた」

「バーカ、骨は拾ってやるよ」


 なにこれ、なんでこんな楽しそうにしてるの?

 裸のわたしたちに目もくれず、二人で軽々と檻に付けられた取っ手を掴んで持ち上げる。

 わたしたち、10人はいるのに、重さなんて無いように持ち上げた。


「ねぇ出して!」「ここどこ!?」「お願い、開けて!!」

「はぁ〜、早く終わらせてキャサリンちゃんのところ行きたいぜ」

「お前な、オレと飲みに行く話はどうなったんだよ?」

「ばっか、惚れた女と同僚、お前ならどっちを選ぶよ?」

「開けて、開けて!!」「ちょっと、開けなさいよ!!」


 トカゲ獣人は、わたしたちなんて見ていない。

 同僚とお喋りしながら、当たり前のように運んでる。

 わたしはわかってしまった。

 この獣人たち、わたしたちの言葉なんて聞いてない。

 わたしも鉄格子に縋り付いて叫ぶ。


「あけて!! 出して!!」

「ッチ、ブーブーやかましいメス共だな」

「さっさと選別所に運んでメシ食おうぜ。愛しのキャサリンちゃんはその後だ♪」

「はいはい……」


 せ、選別所?

 選別って、何を選別するの……?


「………せんせ」


 なんで、こんなことに……。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 到着したのは、広い倉庫のような場所だった。

 トカゲ獣人だけじゃなく、コウモリ獣人やイタチ獣人なんかもたくさんいる。それに……裸の男女が鎖に繋がれ、連れていかれてた。

 男の人も女の人も、みんな裸。両手が塞がれてるから隠すにも隠せない。

 恥ずかしがってる人も居るけど、そんな状況じゃないとすぐにわかった。


「よっと。おう、あとはよろしくな」

「おーうお疲れ。今日はあがりか?」

「ああ、そっちは?」

「もうすぐさ。この『商品』の選別が終わったらあがりだ。メシはどこだ?」

「いつものさ。先に一杯やってるから、後で来いよ」

「おう、じゃあな」


 トカゲ獣人とコウモリ獣人が、どこでも聞くような世間話をしている。

 おかしいよ、なんでこんな普通にしてるの?


「さーてメス人間か。おい、選別するから手ぇ貸せ」

「あいよー」


 鉄格子の扉が開かれ、足枷が外れる。

 全裸で隠すこともできず恥ずかしい……他の子たちはみんな泣いてる。わたしも涙が溢れてきたけど耐える。

 選別とやらが始まり、わたしたちは1人ずつ身体をチェックされる。そして、男女別に仕分けられ、どこかへ連れていかれた。

 そして、わたしの番になった。


「えーと……ん? ああ、こいつが報告にあったレア物か」

「ああ、指輪持ちの人間だ。どんな能力かは確認……」

「できるかよ。首輪外した瞬間に能力使われてみろ、ただでさえ理不尽な力なのに、対処できるかどうかわかんねぇぞ?」

「だな。とりあえず『レア』で仕分けして、オークションのときに言えばいいか」

「ああ、そうだな」


 どうやら、チート能力は『レア』で、オークションとやらにわたしはかけられるらしい。

 ここまででわかった。わたしは人攫いの獣人に攫われ、オークションとやらにかけられる。もしかしたら、宝石の町ピュアラに向かう馬車そのものがワナだったのかも。

 それに、この手枷と首輪のせいで魔術もチート能力も使えない。武器術が苦手だったから格闘技を習ったけど、魔術なしに獣人と渡り合える自信はない。それに……みけことくろことの繋がりも消えた。あの子たちがどうなったのかもわからない。

 今は、耐えるしかない。


「よし、お前はこっちだ」

「あうっ」


 首輪に鎖が繋がれ、引っ張られる。

 この獣人たちにとって、人間の裸なんて興味ないみたいだ。獣人にとって人間は動物と同じ……なにそれ、おかしいよ。

 しばらく歩いて連れてこられたのは、牢屋みたいな部屋だった。


「ほら、レア専用小屋だ」

「………あの、オークションってなに?」

「あん? そんなの決まってんだろ。人間オークションだよ」

「人間、オークション?」

「そうだ。この獣人貴族の町シュヴァヴァで開かれる人間オークションだよ。オメェら、運が悪かったなぁ。この町に入った時点でお前らは人間じゃなくて『商品』として扱われる。このフォーヴ領土じゃ人間の人権なんてないに等しいからなぁ。助けなんて期待しない方がいいぜ」

「………あの、わたしの荷物は」

「はぁ? んなもんとっくに処分したっての」

「あの、ネコは……」

「知るか。ほらさっさと入れ、オークションは明日だからな、エサと洗体は明日だ」

「………」


 部屋に押し込まれ、獣人は去った。

 部屋は薄暗く四畳半くらいの広さで、隅っこに藁が敷いてあり、排水溝と水の入った樽が置いてあった。

 わたしは藁の上に座り、身体を丸める。


「…………っく、う……ひっく」


 わたしは、こみ上げてくる涙を止められなかった。

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