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クラス召喚に巻き込まれた教師、外れスキルで機械少女を修理する  作者: さとう
第三章・【戦乙女型アンドロイドcode06ジークルーネ】

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50、はじめてのゴブリンたいじ

 集落長の家の一室を借り、俺たち『戦乙女ヴァルキュリア』は作戦会議を行っていた。

 ゴブリンの集団が潜んでると思われる洞窟の場所を調べ、ホルアクティを放っておく。情報が集まるまで時間がかかるので、攫われた少女アルシェのことを聞くことにした。

 聞く相手はもちろん、少女が攫われた時に一緒にいたという少年・コヨーテだ。

 ルーシアはコヨーテに話しかける。


「コヨーテ、君が見たことを話してくれ。少しでも情報が欲しい」

「わかった。おっぱいのねーちゃん」

「……っぷ」「くくっ……」『………』

「セージ、クトネ、後で覚えていろ。コヨーテ、私のことはルーシアと呼べ」

「う、うん。ルーシア」


 俺とクトネは口を閉じて青くなる。

 ルーシアをからかうのは危険だということを覚えた。


「オレ、アルシェと一緒に集落近くの森で遊んでたんだ。オレはアルシェにアプルの実をあげようと木に登って……上に登り切ってアルシェに自慢しようとしたら、アルシェの後ろにゴブリンがいっぱいいて………オレ、何にもできなくて、怖くて……」

「わかった、もういい。少しずつ質問する。どんなゴブリンだった?」

「……緑の、子供みたいなヤツがいっぱい。あと……ひょろ長くて剣を差してるのもいた」

「ゴブリンと、ゴブリンフェンサーか……あとは?」

「……ええと、あ!! そういえば集団の一番後ろに黒いゴブリンがいた!!」

「なーるほど。ブラックゴブリンの可能性ありですね、ルーシアさん」

「ああ……やはり、召喚の生け贄か。攫われたのはいつだ?」

「一昨日の昼……」

「もう1日以上経ってるな……急いだ方がいいな」

「ああ。今この瞬間にも儀式が始まる可能性はゼロじゃない。目撃情報のあったゴブリンの巣穴まで馬車で2時間ほどの距離か……これから向かうとちょうど昼頃か。ホルアクティの情報を待って確実に行くか、すぐに出発して少女を救い出すか……どうする、セージ」

「え、俺が決めるのか?」

「そりゃそうでしょう、リーダーですし」

「おっさん!! そのホルなんちゃらは知らねーけど、早くアルシェを助けに行こうぜ!! なぁ銀色のねーちゃんもそう思うだろ!?」

『はい。そう思います』


 いや待てよ、そんな簡単に行くか?

 これがゲームだったらこんな選択肢が出てるだろうな。


『1・ホルアクティを待ち、情報を入手してから出発する』

『2・すぐに出発し、少女を救うためゴブリンの巣穴に突撃する』


 いやいや、これはちょっと難しい。

 俺はRPGでレベルをしっかり上げて情報収集してから先に進むタイプだ。ゲームならそれでもいいが、時間制限がある現実ではその手は使えない。この瞬間にも少女の命が脅かされているし。

 決してナメるつもりはないが、相手はゴブリンだ。

 クトネはともかく、ルーシアやブリュンヒルデの実力なら問題ない気がする。

 

「……よし、急いで出発しよう」

「お、ゴリ押し作戦ですね!!」

「ああ。時間制限があるなら悠長にしてる場合じゃない。幸い、まだ昼前だし、今から出発しても日が高いうちに到着する」

「よく言ったセージ。クトネ、薬の準備は?」

「大丈夫です。道中は怪我も魔力消費もしませんでしたし、ポーションとエーテルはいっぱいあります!!」

「なら、すぐに出発だ……コヨーテ、本当に付いてくるのか? 両親は?」

「もちろん!! アルシェはオレが救う!! 父ちゃんと母ちゃんは知ってるから大丈夫!!」

「よし、ならば行くぞ。セージ、クトネ、ブリュンヒルデ」

「ああ」

「よっしゃ、実戦です!!」

『はい、ルーシア』


 こうして、ゴブリン退治はゴリ押し作戦で行くことになった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 馬車に乗り込み、急いで出発した。

 御者はブリュンヒルデに任せ、俺はクトネとルーシアに戦闘のおさらいをしてもらった。


「セージさんセージさん、セージさんの魔術はまだG級ですんで、過信しちゃダメですよ。っていうか練習と実戦の違いがわかると思いますよ、ねぇルーシアさん」

「ああ。敵のいない状況で放つ魔術と、敵に囲まれた状態で使う魔術はレベルが格段に違う。魔力の練りは精神状態に左右されるからな、セージ、魔術は無理せずに剣術と弓術で戦え」

「……ああ、わかった」


 すると、コヨーテが俺に聞く。


「おっさん、もしかして冒険者なったばかりなのか?」

「……いや、F級だよ。戦闘が初めてなんだ」

「へぇ~……この中じゃ一番年上っぽいのにな」

「う、うるさいな。というかおっさんと言うな」

「へへ……」


 コヨーテは、少しだけ笑った。

 幼馴染みが攫われて心配な気持ちはなんとなくわかる。ちょっとやりかえそうと俺は聞いた。


「コヨーテ、お前もしかして、アルシェちゃんのことが好きなのか?」

「は、はぁ~~っ!? ちっ、ちっげーしっ!! バカ言うんじゃねぇよおっさん!!」


 顔を赤くして荷車の中で立ち上がるコヨーテ。

 荷車が揺れ、その場で尻もちをついてしまった。


「うわぁ、バレバレですね、セージさんルーシアさん」

「ふ、可愛いじゃないか」

「ああ。ちと小生意気だけどな」

「な、なに言ってんだあんたら!! オレは別にアルシェなんてどうでもいいし!! オレがアイツを救いたいのは……!!

「「「救いたいのは?」」」

「ぐ、むむむ……っ!! な、なんだよ、大人ってこんなこと聞いて楽しむのかよ!!」


 ちょっとからかい過ぎた。

 笑ってる場合じゃないが、クスクスと笑ってしまった。

 コヨーテには悪いが、少しリラックスできた……そして。


『センセイ、目的地に到着します』


 俺のデビュー戦が、近付いていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 スタリオンをゴブリンの洞窟から離れた場所に停め、徒歩で向かう。

 クトネやルーシアは特に緊張してるようには見えないが、俺とコヨーテはメッチャ緊張しながら歩いていた。だってこれからゴブリンとバトルだし。

 ブリュンヒルデは、最後尾をスタスタ歩いてる。

 そして、ゴブリンの洞窟から少し離れた茂みに到着。静か~に様子を窺う。

 洞窟前はそこそこ開けた場所で、入口には見張りらしきゴブリンが立っていた。


「………いた、ゴブリンだ」

「………あいつらがアルシェを」


 ゴブリンは小さく、下半身にボロ布を巻いただけだ。手には槍を持っている。

 数は2匹、欠伸してるしこっちには気付いていない。


「よしセージ、短弓に矢を装填しろ。私とお前で同時に倒すぞ」

「……わかった」


 俺とルーシアは、右手の籠手に内蔵された短弓を展開し、矢を装填する。

 短弓の訓練はやってきた。距離は15メートルほど、射程内だ。

 ルーシアはたぶん外さない。外すとしたら俺……ダメだ、緊張するな。


「落ち着けセージ、外してもいい。外してもクトネがいる」

「そーですよセージさん、落ち着いて狙ってください」

「……ああ、ありがとう」


 俺は息を吐き、ゴブリンに狙いを定める。

 俺の初実戦にして、初のモンスター退治。異世界で初めて倒す最初のモンスター。

 さぁ、俺の戦いはここから始まっ……。


「おいお前らっ!! アルシェを返しやがれ!!」


 ナイフを構えたコヨーテが、ゴブリンに向けて叫んだ。

 さすがのクトネとルーシアも予想外だったのか、完全に硬直していた。


 俺は番えた矢をポトリと落とした。

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お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
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