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クラス召喚に巻き込まれた教師、外れスキルで機械少女を修理する  作者: さとう
第二章・【戦乙女型アンドロイドcode07アルヴィート】

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31、作戦会議

 指輪持ち、そして2匹のネコ。

 俺の脳裏に、ネコ耳パーカーを着た1人の少女の姿が浮かぶ。


「………三日月、しおん?」


 三日月が、フォーヴ王国に捕まった。

 いやまて落ち着け、学生同士の世間話だ。それに、ネコを連れた指輪持ちなんてこの世界に腐るほど……いる、のか?


「馬鹿な。そもそも三日月はオストローデ王国にいるはずだ。行き倒れなんてあり得ない」


 そうだ。それに三日月に何かあれば、篠原が黙っていない。そもそも、篠原が三日月を独り歩きなんてさせるはずがない。

 生徒たちはみんな頭がいい。単独で国を飛び出すなんてあり得な·······。


『せんせ』


 俺の脳裏に、三日月の笑顔がチラついた。


「······なんだ、この嫌な予感は」


 ベッドに寝転がり、天井を見る。

 可能性は低い。だけどゼロじゃない。

 マジカライズ王国だけじゃない。獣人の国フォーヴに囚われてる指輪持ちが誰だか確かめる必要がある。

 そして、その鍵を握るのは。


「『夜の女王ニュクス・クィーンナハティガル』······か」


 やることが多すぎる。

 遺跡調査、オストローデ王国、盗賊退治、ナハティガル、生徒たち、フォーヴ王国、そして······三日月しおん。


 もう、頭がおかしくなりそうだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 翌日。簡単な朝食を作り3人で食べていた。


「······セージさん、寝てないんですか?」

『センセイ、脳波が不安定。睡眠不足のようです』

「あぁ、気にしないでくれ。問題はない」

「いやでも、目の下にクマできてるし、寝癖はヒドいし、顔は薄汚れてるし」

「······さすがに酷くない?」


 朝食を終え、洗面所で顔を洗って髪も洗う。

 少しはさっぱりした······とにかく、今は盗賊退治に集中しよう。三日月のことはその後······そもそも、捕まった指輪持ちが三日月とは限らないし、たかが噂話だ、ガセネタの可能性もある。


「······ッシ‼」


 両頬をパシンと叩き、気合を入れる。

 今は、できることからやるしかない。 

 洗面所から出て装備を身に着けると、玄関にはブリュンヒルデとクトネがいた。

 そして、クトネを見て驚いた。


「おぉ、クトネの制服か」

「そうなのです‼ むふふ、似合いますか?」

「ああ、似合ってるぞ」


 学園の制服を着たクトネだ。

 白いフリルシャツに紺色のスカート、マジカライズ王国の紋章が刺繍されたローブ、そしてギッチリと本の詰まったカバン。昨日の学園でも見た制服スタイルだ。


「よし、行くか」

『はい、センセイ』

「いざ、学び舎へ‼」


 俺たちは、マジカライズ王立魔術学園へ向かった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 3人で町を歩き、学園に到着した。

 クトネとはここで別れ、俺とブリュンヒルデは騎士団の修練所に向かう。


「ではでは、お二人ともお気をつけて」

「ああ。お前もしっかり勉強しろよ」

『失礼します、クトネ』

「はいは〜い、いってきまーすアンドいってらっしゃ〜い」


 クトネはブンブン手を振り走り去る。

 後ろ姿を見ていると、クトネは女子の集団に声をかけて、そのまま楽しそうにお喋りを始めた。ああいう光景は日本も異世界も変わらないんだな。

 俺とブリュンヒルデも歩き出し、昨日向かった修練場に到着した。クトネから聞いたが、この修練場は『魔騎士科』の教室にもなってて、ここに通える生徒は尊敬の眼差しで見られるらしい。

 さて、到着したはいいが、修練場前で悩む。

 入っていいのか、駄目なのか。  

 その辺に黒い騎士でもいないか探していると、門の向こう側にある建物のドアが開き、見覚えのある黒騎士が出迎えてくれた。


『来たか。さぁ入れ、すぐに始めるぞ』

「わかった」


 挨拶もなしに、黒騎士ルーシアが出迎えてくれた。

 ルーシアの後に続き、建物の中へ。黒い甲冑の背中を追って進むと、会議室らしき部屋に到着した。


『すぐに作戦会議を始めるぞ』


 ドアを開けて入室すると、中には似たような黒騎士集団がてんこ盛りだった。何これ魔王の城?

 でも、兜を外しリラックスしていたり、テーブルに頬杖を付いてる人もいる。人数は五人、男3人女2人の五人だ。

 テーブル配置はコの字型で、なぜか真ん中の2席が空いている。ルーシアは教壇みたいな場所に立ってるから、どう考えても俺とブリュンヒルデの席だよな。

 少し緊張しながら席に座ると、ルーシアはさっそく話し始めた。


『これより、『夜は俺の庭ナイト・マイ・ガーデン』討伐作戦会議を始める』


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ルーシアは、さっそく俺たちの紹介をした。


『まずは二人の紹介をする。彼がセージ、彼女がブリュンヒルデだ。セージは索敵探知系のチートを持つ冒険者で、ブリュンヒルデは直接戦闘に優れた冒険者だ。その実力は私が保証しよう』


 すると、甲冑を付けたスキンヘッドの男が言った。


「こんな若ぇ嬢ちゃんがウチの団長をノシちまうとは、てぇしたモンだぜ、なぁラッツ」

「そうだねグロン。確かに、チートを使ってなかったとはいえ、団長を倒すとは······キミ、いい目をしてるようだね」

「ふん、チートを使えば団長が負けるワケないわ‼ そうよねトマト‼」

「まぁまぁユーラ、勝負は結果が全て、団長が負けたのも仕方ないことですわ。そうですよねアラトさん」

「·········団長、敗北」


 なんか、個性的なメンツだな。

 スキンヘッドの黒騎士がグロン、線の細いメガネの騎士がラッツ、茶髪ショートの女騎士ユーラ、金髪ウェーブの女騎士トマト、そしてよくわからん黒髪の騎士アラトか。

 多分、騎士の中でも強い方なんだろうな。じゃなきゃ会議に参加なんてできない。

 すると、壁に貼った地図を見ながらルーシアが言う。


『静かにしろ。話を進める······まず、マジカライズ王国周辺の遺跡を地図に纏めた。そして、盗賊団の痕跡があった場所をマークした。これを参考に、盗賊団の位置を先回りして特定して奇襲をかける。そのためにはセージ、お前の索敵探知を上手く利用させてもらう』

「もちろん、できることはやる」

『うむ。まずお前のチートの性能を話してくれ。もちろん、全てを話せとは言わん』

「ああ、わかった」


 もちろん、俺のチートではなくホルアクティの性能の一部を話す。

 半径20キロ圏内のサーチが可能で、人数の把握は可能とだけ伝えた。まぁ他にも機能はあるけど、伝えるのは索敵探知だけでいいだろう。

 ちなみに、距離はキロで通じた。


『なるほど、半径20キロとはかなり広範囲だな』

「位置と人数くらいは把握できる」

『十分だ。あとはこちらで次の野営地をある程度絞り込む。出発は夕方だ』

「え、出発って今日なのか?」

『もちろん。すでに盗賊被害は多発してるからな。それに位置をある程度絞り込むならそう時間はかからん』

「··········」


 マジかよ。展開早くない?

 その後、俺とブリュンヒルデは殆ど喋ることなく会議は終わった。あとは騎士たちで作戦を煮詰めるらしい。俺の役目は索敵探知だし、騎士たちの会議には混ざらなくていいそうだ。

 なので、出発まで休もうと会議室を出ようとしたら、ルーシアに話しかけられた。


『セージ、少し時間はあるか?』

「ん、ああ、どうした?」

『少し話がしたい』


 俺とブリュンヒルデは、ルーシアに案内され別室へ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 案内されたのは、豪華な装飾の施された部屋だった。  

 ツボやシャンデリア、執務机、椅子、棚など、どれも高級感溢れてる。


『私の部屋だ······ふぅ」


 ルーシアは兜を脱ぐ。すると、美しい金髪が流れる。

 

「座ってくれ。今、茶を淹れる」

「ああ、お構いなく」


 俺とブリュンヒルデは高そうなソファに座る。

 黒い鎧姿でお茶を淹れる姿はちょっと異様だ。顔は見えてるけどなんかおかしく見える。

 ルーシアは棚から茶器を出し、魔術を使ってお湯を出した。なるほど、ルーシアの魔術特性は『火』と『水』か。水魔術の発動過程で火属性を加えることにより、お湯を出したんだ。

 ルーシアは、熱々の紅茶を俺たちに出すと、俺たちの反対側のソファに座った。

 俺は紅茶に手を伸ばし、カップを摘む。


「さっそくだが、お前たちの真の目的を聞かせてくれ」


 俺は、カップを落としそうになった。

 

「な、なんのことだ?」

「とぼけなくていい。別に吹聴するつもりもない。私はこう見えて、B級冒険者クラスの実力だが、チートなしとはいえ私をあっさりと降したF級の少女に、遺跡調査のためだけに自らのチートを晒し、盗賊退治に協力してくれる指輪持ち冒険者。はっきり言って、盗賊団よりも気になる」

「う······」

「お前たちが悪人でないのはわかる。だが、目的が読めない冒険者を野放しにするのもな······」

「·········」


 俺は、真剣に迷っていた。

 もし、俺がオストローデ王国に召喚された異世界人と言ったら、ルーシアは信じてくれるだろうか。

 もし、ブリュンヒルデの正体は大昔に造られたアンドロイドで、俺のチートによって『修理』されたと言ったら、信じてくれるだろうか。

 俺たちの目的は、オストローデ王国にいる生徒たちを救うことだと言ったら······。


「どうした、セージ?」

「·········いや、何でもない」


 わからない。

 それに、オストローデ王国出身と知られたら、どんな扱いをされるかわからない。最悪、拘束されるかも。

 駄目だ、やっぱり言えない。


「······本当に、遺跡に興味があるだけだよ」

「············そうか」


 それっきり、ルーシアは何も言わなかった。

 俺も、この機会に質問する。


「なぁ、ナハティガル理事長は獣人の国に行ったんだよな? それって、オストローデ王国に対する同盟を結ぶためでいいのか?」

「······そんなことを知ってどうする、と言いたいが、どうやら噂になってるようだし答えてもいい······答えは正解だ。実は、オストローデ王国の動きが活発化していてな。異世界とやらからチート持ちを大勢呼び寄せたという情報が入った。しかも、個々の実力が化物クラス。はっきり言って国家レベルの脅威だ」

「·········っ‼」

「今、オストローデ王国に攻められたら、『八大王国』の中で最も守備の薄いマジカライズ王国は落とされる。そこでナハティガル理事長は獣人の国フォーヴと同盟を結び、オストローデ王国が手を出せないように牽制するつもりなんだ」

「·········もし、フォーヴが同盟に同意しなかったら」

「·········戦うしかない。だが、勝算はある。フォーヴは獣人の国で魔術が浸透していない。武力を提供してもらう代わりに、こちらから魔術の知識を提供する」


 獣人は、魔術を殆ど使わない。

 生まれつき強靭な肉体を持ち、魔術という『異能』に頼らない生活を送っている。もちろん魔力が無いわけじゃない、『習得するヒマがあったら武器を持って狩りに出かける方がいい』······と、考えるような脳筋らしい。

 もちろん、みんながみんな、そんな連中ではないが。


「ふっ······オストローデ王国の話になった途端、顔色が変わったぞ?」

「······っ」

「オストローデ王国、遺跡調査、どう繋がるかわからんが、無関係ではなさそうだ」

「く······っ」


 もう、見透かされたようなもんだな。

 でも……余計な事は言わない。話を逸らそう。純粋な疑問がある。


「ルーシア、お前は騎士団長なのに、なんでナハティガル理事長に付いてフォーヴ王国に行かなかったんだ?」

「決まってる、騎士団長だからさ。ナハティガル理事長が留守の間、マジカライズ王国の防衛を任されている。理事長の護衛には、騎士団でも選りすぐりの精鋭を選んだつもりだ。まぁ……理事長に護衛など必要ないだろうがな」

「そうなのか。じゃあ、会議に参加した5人は?」

「ああ、あいつらは『暗夜騎士団ナハトナイツ』の部隊長だ。まぁ、相当な実力者だと思ってくれればいい」

「へぇ、盗賊団退治に参加するのは部隊長クラスか」

「ああ。あの五人と私、ブリュンヒルデ、そしてお前だ。今回は少数精鋭で行く」

「え………ちょ、盗賊団って何人いるんだ?」

「恐らくだが、50人以上は下らんな」

「………それを、俺以外の7人で?」

「問題ない。位置を捕捉できれば数分でカタが付く。お前の索敵探知にかかっているぞ」

「………」


 問題はそこじゃねぇ。

 7人÷50人、1人頭7人倒すの? いやでも、ブリュンヒルデなら……。


「心配するな。お前は戦わなくていい」

「当たり前だろ、俺の装備は殆ど飾りだぞ……」

「ふ、お前は私たちが守るさ。なぁブリュンヒルデ」

『はい、センセイは私が守ります』


 ブリュンヒルデ……うん、いざとなったらあの大剣を使わせよう。

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テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
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