302、LAST BOSS・『Atle・za・ture・O-VAN』②/最後の戦い
意識が、純白に包まれた。
これは『接続』を使った時の感覚───そうだ、俺は『Atle・za・true・O-VAN』にアクセスして、アンドロイド軍の頭脳をシャットダウンさせようとしている。そうすれば、アナスタシアたちは物騒な思考に襲われることもない。この世界の真の平和が、アンドロイド軍の終わりが来るんだ。
「……っと」
眼を開けると、ここは……。
荒地だった。草木の生えていない荒野、地面は抉れ、空は曇り……人とアンドロイドが大量に倒れている。まるで戦場……いや、ここは戦場だ。
「たぶん、大昔の戦争……人とアンドロイドの、戦争」
これが、『Atle・za・true・O-VAN』
の世界。
アンドロイド軍のスパコンとして、全てを記録していたんだ。
人とアンドロイド。アンドロイドの創造主たる人間に挑んだんだ……。
反逆の理由は簡単だ。
作られ、壊れ、廃棄されるアンドロイドたちを見て、我慢できなくなったんだ。自分たちは物じゃないと、人間に伝えたかった……たぶん、そんな気がする。
不思議と、『接続』を使ってコンピューターの中に潜ると頭が冴える。ここじゃ肉体的な負担はないし、オリンピック選手より身体能力が高い。不安もあるけど自信もあった。
「さて、こいつのメインコンピューター……『意志』を探さないと」
コンピューターの世界と現実世界は時間の流れが違う。こっちの五分があっちじゃ三十分に、五分が一分になったりとめちゃくちゃだ。俺の身体が耐えられなくなる前に、こいつをシャットダウンしないと。
俺は、荒れ果てた大地を歩きだした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…………どこだ」
かれこれ30分ほど歩いているが、荒野が続くばかりでなにもない。
おかしい。コンピューターにアクセスした世界の中では、俺にわからないことはないのに……まるで、別な世界に迷い込んでしまったような気がした。
「うむぅ……間違いなくここは『Atle・za・true・O-VAN』の世界だ……それなのに、メインコンピューターどころか操作用のコンソールもない。まるで別世界に来たようだ」
とりあえず、立ち止まる。
しゃがみ、手を地面に……触覚が機能していないな、よくわからん。
「まずいな……あまり時間をかけると、外の身体が……よし、仕方ない」
あまりやりたくなかったが、第二の作戦だ。
俺はパチンと指を鳴らす。すると、背後に『紅蓮覇龍サンスヴァローグ』が現れた。
「サンスヴァローグ、波動砲だ」
真紅のドラゴンはガパッと口を開け、極太のレーザー光線を放つ。すると、遠くで爆発が起き、地面にクレーターができた。
この世界のサンスヴァローグは俺のイメージだ。だが、なかなかうまくできている……本物と変わらない波動砲を連射した。
「来い……お前の中で暴れてるウィルスだ。駆除するために干渉するはず……」
俺の狙い。それは、俺がこの世界にとって『ウィルス』であると判断させること。
今はウィルスとも認識されていない。この世界のデータはまだ流出していないが、過度に暴れると外部にデータが流出する。そうなったらおしまいだ。
ここは慎重に……。
「……来た!」
『Atle・za・true・O-VAN』が、俺を異物と判断したようだ。
この世界に、漆黒のドラゴン……サンスヴァローグのブラックタイプが地面から泥のように溢れて形作られる。
「サンスヴァローグ、あいつを拘束しろ!」
俺の命令で、サンスヴァローグがブラックサンスヴァローグ(今、命名)に襲い掛かり、ガッチリと摑みあう。
俺はその隙にブラックサンスヴァローグの背後に回り込み、泥のような体に触れ、『接続』を試みる。こいつは『Atle・za・true・O-VAN』の意志で生み出されたものだ。きっと痕跡がある。
「見つけた……」
サンスヴァローグがブラックサンスヴァローグを引き裂いた。泥のような液体に戻り、地面に吸収される。
だが、痕跡を見つけた……『Atle・za・true・O-VAN』は、この世界にちゃんと存在している。
「じゃあ、会いに行きますか!」
俺は地面に掌を叩き付けた。
すると、荒野に亀裂が入り、世界が変わった。
かくれんぼはもうおしまい……さぁ、対面しようじゃないか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
割れた地面から落下すると、そこは何もない純白の部屋だった。
『見つかったようだな……』
「…………お前が」
純白の世界に一つだけの銀球だ。
本体もパチンコ玉みたいだ。大きさはバスケットボールより少し大きいくらいのパチンコ玉で、俺の目線ほどの高さに浮いている。
当たり前のように喋ったが、今さら驚きはしない。
「お前が、アンドロイドの思考そのものか」
『いかにも。私の名は『Atle・za・true・O-VAN』。人類を滅ぼし、アンドロイドの世界を作るために存在する思考回路にして、全てのアンドロイドの設計図そのものだ』
「外が気になるから問答はなしだ。頼む、もう戦いは終わりにしよう」
『却下だ』
合成音みたいな声で、きっぱり拒絶した。
『私の存在理由は人類の撲滅とアンドロイドの発展にある。アンドロイドの大半は破壊されたが、私が存在する限りアンドロイドは蘇る』
「そうじゃない。アンドロイドはお前の『思考』から逃れたやつもいる……いいか、人間とアンドロイドは共存できるんだ。お前の『思考』でアンドロイドを拘束するな。オストローデシリーズだって、自分で考えて生きようとしている」
『なら、それ以上の『思考』をもってアンドロイドを操ろう』
「……ったく、この石頭め」
言っても無駄とはこのことか。
俺が『アンドロイドを破壊して人間だけの楽園を作ろう』って言うようなもんだ。たぶん、このままずっと平行線だろうな。
なら、仕方ない。
「じゃあ、お前をシャットダウンする。これからの世界は人間とアンドロイドのものだ。この世界はどっちかのものじゃない」
『危険な思考だ。やはり、お前は排除せねば』
銀色の球体が回転を始めた。
こいつも戦えるのか……なんてどうでもいい。この世界の俺が死ねば、現実世界の俺も死ぬ。それはこいつにも当てはまるはず。
目の前の銀色の球体を倒し、この世界をシャットダウンすれば、データの流出を防げるはず。完全にシャットダウンしたところで、『Atle・za・true・O-VAN』を完全に破壊する。
それが、俺たちの勝利だ。
「お前を倒して、新しい未来を作る……いくぞ、『Atle・za・true・O-VAN』!!」
俺はキルストレガを抜刀し、構える。
『これより、データ保存のため危険因子を排除する』
『Atle・za・true・O-VAN』が回転し、グニャグニャと球形が変わっていく。
これが、本当に最後の戦い。
この世界の運命を決める。人間とアンドロイドの戦いだ。





