ミティとメアリにメイド服を着せてみた!
【?】
5/10──メイドの日
前半ミティのメイド服×レオン
後半メアリのメイド服×ラムズ
【登場キャラクター】
レオン、ミティ、メアリ、ラムズ
#R視点→#M視点 IF/甘々/恋愛?
[#Rレオン視点]
俺の前で、メイド服を着たミティがくるりと回転する。かわいい。しかも猫耳メイドだ……。最高。
ミティに合わせて、黒と白のメイド服じゃなく、濃い緑と白のメイド服にしてよかった。そこに緑の髪の毛、赤い瞳、白い猫耳がものすごくマッチしている。
ヒラヒラのエプロンが、ミティが動くたびにふわっと揺れる。
ミティは眠そうな赤い目を細めて、俺に言った。
「レオンはこんな服が好きなのォ~?」
「おう……。かわいいじゃん、メイド服」
「かわいいカナ~。僕が普段着てる服の方がかわいいヨ~」
「いやそっちもかわいいけどさ!」
ミティは興味深そうに自分の服を見下ろして、ふんふん頷いている。俺はごくりと唾を飲む。男たるもの、ここで言わないでいつ言う?!
「み、ミティ……。俺のこと、レオン様って言ってみてくれない……?」
よく言った、よく言ったぞ、俺!
ミティは怪訝な顔で俺を見ている。やべえ、引かれた?
「ン~? どういうこと~?」
「いやーそのーほら。メイドって、誰かに仕えるもんだろ。だからその真似をするっていうか……」
「あァ~。分かったヨ、レオンがやりたいこと」
ミティは猫みたいに悪戯っぽく笑って、スカートを持ち上げた。本当に分かったのか? ミティ察しが良すぎだろ。
「そのベッドに座ってください~? ご主人様~?」
「は、はい」
俺が敬語になっちゃったんだけど! ミティから視線を外さないまま、恐る恐るベッドに座る。ミティは近付いて、こくっと首をかしげた。ベッドに座る俺の前で膝立ちをする。
──う、嘘だろ?!
見下ろすと、ばりばり谷間が見える。胸元が開いているメイド服を選んだ俺、本当いい仕事した。
「レオン様の血を、分けてくれませんか~?」
「え?! そ、そうくる?!」
「お願いしますゥ~。いいでショ~?」
「いやいやいやいや……」
ミティは上目遣いで俺をじっと見ている。かわいい。メイド服のミティ、すごくかわいい。
これ以上はキツいって。
ホワンとした目付きで、ミティは俺の手を触る。
「僕、血が飲みたくなっちゃったんデス~。お願いデス~。レオン様ァ~」
「あ、はい。そうだよな。うん、分かる分かる、飲みたいよな。おっけー」
自分でも何言ってるのか分かんない。けどこんなかわいいメイド服の女の子に頼まれたら嫌とは言えない。
いや待ってよ?! 俺がご主人様だから俺が命令するんじゃ────。
ミティは柔らかく微笑んで立ち上がる。俺の頬をちょんとつついたあと、スカートを広げてお辞儀をした。
「悪戯してごめんなさい~。うそデス~。レオン様は流されやすいナ~」
小悪魔メイドですか、そうですか。ありがとうございます。
「レオン様がお願いしないとダメでショ~?」
「お、おう……。たしかにそうだな。なにをお願いしたらいんだろ……」
もちろんお願いしたいことなら山ほどある。だけど、そのうち『どこまでならお願いしていいのか』って話だ。
ミティはヴァンピールだし多少過激なお願いでももしかしたら……。いやいや、けどさすがにそれは……。
「ご主人様~、お願いまだデスカ~? 早くしてクダサイ~」
「いや、その……ほら。な?」
なにが『ほら』なんだよ!
ミティがかわいすぎて、さっと彼女から目を逸らす。ぶっちゃけ、既に十分ミティはやってくれた。これ以上頼むのは男が廃る──いやむしろ頼まない方が廃るか?
「じゃあ……ほっぺにキス……してくれる?」
「そんなんでいいノ~? 分かりました、レオン様ァ~」
そんなんでいい……。
もっと上もできたのか……。
ミティは俺のそばに近寄って、肩に手を乗せた。ミティに見下ろされる。この構図もなかなかかわいい……。
ミティは眠そうな瞼をぱちっと閉じて、顔を近づけた。やばいやばいやばい──。
ふっくらした唇が俺の視界を掠めたあと、頬に当たった。暖かくて柔らかい。さらに距離が近いせいか甘くていい匂いがする。どうしよう、俺のレオンが。ヘルプミー。
「これでイイ~?」
「十分です。ありがとうございました、ミティ様」
「アレ~? 僕がご主人様の方がよかったんじゃない~?」
み、ミティがご主人様……。
俺何考えてんだ、もうやめよう。心臓のバクバクをなんとか押さえつけて、ふうっと息を吐いた。
******
[#Mメアリ視点]
「今日はメイドの日だぜ!」
レオンがいきなりそんなことを言った。そしてどこから取り出したのか、白と黒のフリフリのワンピースをわたしに掲げてみせる。
「な、なにこれ……」
「メイドっていんだろ? これはメイド服。メアリ、これ着よう」
「なんで?」
「こういうのに理由はないんだ。とにかく、着て!」
「ま、まぁいいけど……」
服にこだわりなんてないから、とりあえず受け取った。その場で着替えようとして、慌ててレオンに止められる。いちいち面倒ね。
わたしは船倉で着替え、ぱっと自分の姿を下を向いて確認する。
意味不明だ、この服。スカートだから足がスースーする。白いニーハイとガーターベルト。中は黒い服だけど、エプロンは白くてヒラヒラのレースつき。肩の近くがふわっと膨らんでいて、胸元が開いているから肌が見える。
長袖だから鱗が見えることはないけど──初めて着たわ、こんな服。
わたしは階段を上がって甲板に出た。レオンに話しかけに行く。
「レオン?」
「っな、め、メアリ…………」
「なに?」
「いや、は、破壊力抜群だな」
「は? なにが? なにか壊した?」
「いや、いいんだ」
レオンは顔を真っ赤にしたあと、俯いてボソっとなにか呟いた。「エディにも知らせなきゃ」とかなんとか。
なんのことを言ってるのか、全然分からない。
「なあメアリ、ちょっとお願いがあるんだけど……」
「なに?」
「敬語で、レオン様って言ってくれない?」
「はあ? なんで?」
「頼む! 頼むよ! 別にいいじゃん?! 減るもんじゃないし?!」
「い、意味わかんないんだけど……」
レオンはその場で土下座し始めた。わけわからなすぎる。どれだけ言ってほしいの?! 敬ってほしいってこと? どういうことだろう?
とそこで、ラムズがやって来た。わたしの服を怪訝そうな顔で見たあと、額を甲板に擦りつけているレオンに視線を移す。
「こいつは何やってんだ?」
「なんか……レオン様って呼んでほしいんだって……」
レオンはばっと顔を上げて、ラムズを視界に入れた。
「ら、ラムズ……」
「何企んでんだ? お前」
「いやいや、これはさちょっとさ……。そう! そうだよ、ラムズのためなんだ!」
「はあ? 俺?」
レオンはラムズの腕を引っ張り、向こうに連れていく。何を話しているかは分からない。
いつまでこの服でいればいいんだろう? わたしは少しスカートの裾を引っ張ってみる。
しばらくして、ラムズとレオンが戻ってきた。レオンは悔しそうな顔をしながらも、興味深そうにこちらを見ている。
「これになんの意味があんだよ?」
ラムズがレオンに尋ねる。
「いいから! これやると本当にかわいいんだって! ラムズもかわいいメアリ見たいだろ?!」
ラムズは目を細めてレオンをじっと見たあと、考える素振りをする。
「そもそも、鱗が見えない時点で意味が──」
「そういうのいいから! とりあえずさ?! やるだけやろうぜ?!」
「レオン、意味わかんないわ……」
「頼むってば!」
なんでレオンはこんな必死なんだろう。レオンはラムズから一旦離れると、今度はわたしの方に来た。ラムズに聞こえないように、小声で話す。
「ラムズのこと、ぎゃふんと言わせてやりたいだろ?」
「ぎゃふんと?」
「動揺したところ、見てみたくないか?」
「ん、ま、まぁ……」
「だからやろうぜ?! やったら動揺するから!」
レオンは顔を輝かせている。本当に動揺するのかしら? わたしがラムズに敬語を使うだけで?
こくこくとレオンは頷き、畳みかけるようにして言う。
「頼む。やったらきっと面白い」
「わ、分かったわよ……」
「ラムズ様と、ご主人様な」
「両方言うの?」
「おう」
まぁ、レオンが楽しそうだからいっか……。でもラムズに敬語を使うなんて。よく分からないけど、恥ずかしい感じもする。それにご主人様って呼ぶのは、なんだか奴隷みたいじゃない?
うーん、難しいことは考えなくていっか。わたしはラムズの方に近寄った。
「えっと……あの……。ラムズ様」
「はい」
はいって。何言えばいいのよこのあと?! ラムズは冷たい視線でわたしを見下ろしている。レオンがこそっと耳打ちしてきた。
は?! そんなこと言うの?! なんで?! レオンが涙を滲ませて哀願してくる──。
し、仕方ないか……。泣くほどやってほしいならやるしかないわね……。
「ご主人様、何かお願いはあります……か……?」
「ご主人様? 俺が?」
「は、はい……」
ラムズはレオンをちらっと見た。首をかしげて少し考えたあと、わたしに言う。
「つまり、メアリは俺の奴隷ってことか?」
「そ、そうですね……」
「じゃあ鱗見せて」
レオンが声を荒らげた。
「いやいや! 他のにしようぜ?! さすがにちょっとさ、面白いことにしようって!」
「あー分かった。じゃあ……」
ラムズがわたしの方に近付く。青い目がギラギラ輝いている。
「メアリ」
「はい、ラムズ様……」
「なんでも言うこと聞いてくれんだろ?」
「はい……。ど、どうぞご命令を……」
もちろんこれもレオンに教えてもらった台詞だ。なんだか本当に恥ずかしくなってきた。わたし何してるの?!
ラムズは何を頼むつもりなわけ……?!
「じゃあ、血を飲ませろ」
「っは?! えっ?!」
な、ななな……。た、たしかにラムズはヴァンピールだけど────。でも……。
ラムズは一歩こちらに踏み込む。蒼の瞳をぱちぱちと瞬いた。
「俺のメイドなんだろ?」
「はい……」
「いいよな?」
「はい…………ラムズ様……お飲みください……」
ラムズはにこっとあどけなく笑って、わたしの腕に触れた。青い目が細まっていく。顎に冷たい指が触れて、首を動かされた。
彼が口を開く。銀の髪がさらりと揺れて、唇がそのままわたしの首筋に近づき────。
「なんてな」
ラムズは青い瞳を悪戯っぽく光らせて、その場から立ち去った。なんか、一生分くらい疲れた……。わたしはその場にへなへなと座り込んだ。