もしラムズたちに「妊娠した」と言ったら? 8/21new
【?】
架空のヒロインが「妊娠した」と言った時のキャラたちの反応
【登場キャラクター】
・ラムズ 3パターン
・アヴィル
・ゼシル
【注意書き】
※なおこの三人は全員、子供は作れません。今回だけ特別に「作れるとしたら?」という設定で書いています。
※ヒロインの名前は、便宜上「イリーナ」とします。
※ラムズは相手と状況によって展開がかなり変わるので3パターン用意しました。
※女の子は全員お相手のヒーローが好きという設定
※全てバッドエンド風味です。不快な思いをする可能性がかなり高いです。お気をつけください。
※妊娠というデリケートなテーマなので、本当になんでも許せる方のみ閲覧ください。子供を産んだことがある方、産もうとしている方、不妊治療を受けている方などは確実に不快な思いをします。絶対に読まないでください。
※残酷描写あり
ss / IF / 恋愛? / 夢小説的?
【ラムズ】
(パターン1 ラムズは愛してないし利用価値があるとも思ってないけど、なんらかの理由でどうしようもなく一緒にいて無下にはできない状況の女の子。でもたぶんこんな女の子はどこにも存在しない)
イリーナはソファに座り、お腹をゆっくりと摩った。机で本を読んでいるラムズを一瞥したあと、言葉を漏らす。
「ラムズ……あのね、妊娠したみたい……」
「へえ」
ラムズは顔も上げずに言った。本も読んだままだ。聞こえなかったか、理解していないのかと思いイリーナはもう一度言った。
「あの、妊娠したんだよ? 聞いてる?」
「聞いてる」
「どうしたらいいの?」
彼女の震える声を感じ取ったのか、ラムズは面倒くさそうに本から目を離した。ようやくイリーナと目を合わせる。
「知らねえよ」
「だ、だって。ラムズとの子供だよ?!」
声を荒らげたイリーナに、ラムズは鬱陶しそうに目を細めた。
「お前、子どもほしいんだっけ?」
「えっ、まぁ……」
「じゃあ産めばいいじゃん」
「産めばって……産んでいいの?」
それには答えず、ラムズは本に視線を戻した。
「あまり動くなよ。人間の子供はすぐ流れるって聞くから」
その声は彼女の体調を慮った、温かい声ではなかった。
「……嬉しいの?」
イリーナは俯いて硬く手を握った。ラムズのことは分かっているつもりだった。だがそれでも、この仕打ちは酷すぎる。
ふと視界が暗くなった気がして、顔を上げると椅子から立ち上がったのか、ラムズが自分を見下ろしていた。
「悪いがなんとも思わん。すべてわかった上でこうなったんだろ」
「うん、そう」
「面倒なこと言うな。今までずっと、お前のほしいもんは与えてきた。だが愛も情も俺にはないんだ」
「そうだよね……」
「ほしいなら協力はする。分かってると思うが愛せはしねえよ。代わりにお前が愛してやれ」
そうだ、分かっていたことだ。イリーナは小さく頷く。瞳から流れそうになる涙を、彼女は必死に堪えた。この涙を拭う人はどこにもいないのだから。
◆◆◆
《パターン2 戦闘能力的な意味合いで利用価値がある女の子。人間とラムズの使族のあいだで子供が生まれることが奇跡であるという設定》
煌びやかな長椅子に座り、ラムズが宝石を磨いている。イリーナはそろそろと近づき、彼の横に立ち見下ろした。
「ラムズ……妊娠したみたいなの」
「邪魔だから下ろせ」
自分を見もせずそう言ってのけた。ラムズから命令される任務の邪魔だと、そう言いたいのだろう。イリーナは視線を左右に揺らす。
「ち、ちがくて……。ラムズとの子供……だから……」
磨いていた手が止まり、冷えた碧眼が彼女を捉えた。そのあと視線が下り、腹部を見る。
「俺?」
「だって……ラムズとしかしてないから。あれが初めてだったし、そのあとも誰とも……」
「へえ」
腹部を視界に写したまま、彼の唇が吊り上がった。
「いいよ。産んで。楽しみにしてる」
「……え?」
ラムズがイリーナと目を合わせる。
「仕事もしばらく休んでいい。ぜんぶ用意してやるから、お前は安静にしてろ」
彼は立ち上がると、彼女の頭をそっと撫でた。
「座ってていいよ。行儀よくね」
ラムズはちらりとソファを見たあと、颯爽と部屋から出ていった。思いのほか好感触だった反応に、イリーナはただただ混乱していたが、ややもすれば安堵の息が零れた。
よかった。自分の子供を作る経験なんてラムズにはないもんね。きっと彼も嬉しかったんだ。
腹を撫でながらイリーナはラムズの座っていたソファに腰を下ろした。宝石がついているものではないが、高価なソファだろう。座っていいと許されたことはない。きっとあとで別室に誘導されるだろうが、それでも嬉しくなった。
それから、ラムズは今までとは打って変わって優しくなった。今まで仕事を任命される時も酷い扱いを受けたことはないが、これほどまでに丁重に扱ってくれたことはない。自分の体を本当に労わってくれていたし、どうやら最高峰の医者も用意してくれたみたいだった。腹が大きくなるにつれイリーナは日常生活がままならなくなったが、ラムズは甲斐甲斐しく世話を焼いた。何度も検診を受け、何事もなく無事に出産を終えた。
赤ちゃんの産声を聞き、イリーナは安心してベッドで寝入っていた。数時間かしてベッドから起き上がる。近くの椅子でラムズが座っていた。本を読んでいる。
「赤ちゃんは? 名前は決めた?」
弾む声を抑えつつ、イリーナが話しかける。ラムズは視線を上げることなく答えた。
「いない」
「……え?」
「売った」
「……え? どういうこと?」
イリーナはよろよろと体を動かし、布団から足を出した。ラムズの腕を掴もうと体を伸ばす。触れるというところで、温度のない碧眼に体が凍りついた。
「売ったんだって」
「売った……? 私の赤ちゃんを? さっきいたのに? ……え?」
彼は嘲るように言った。
「人間と俺の子供だぜ? ふつうできるわけない。その手の研究をしたいやつがいるから渡したんだ。産んでくれてありがとう、イリーナ」
ラムズは薄い微笑みを見せる。イリーナの視界がちかちかと瞬き、全身が武者震いするように震えた。
「ど、どうして……ひどい……。どうして……? 私たちの子供なんだよ? なんで……なんでそんなことができるの……!?」
イリーナは泣きながら彼の腕に縋りついた。
「この前まで優しくしてくれたじゃん! あれは……なんで……」
途中まで言いかけて、イリーナははっとしてすべての真実を悟った。子供が流産したら困るから、イリーナの気が変わったら困るから、ラムズは最大限自分に優しくしたのだ。子供に価値があるから医者を呼び、万全の状態で出産させたのだ。
イリーナはさらにラムズを咎めようとしたが、すんでのところで、それをすれば自分の居場所がなくなることに気づいた。ラムズの手を煩わせれば確実に殺されるだろう。今この場だけでも取り繕って、なんでもないフリをしないといけない。そうじゃなきゃ自分まで捨てられる。
それに、なんとしてでも子供に会いたい。子供の成長を見たい。そのためには今はとにかく心を落ち着かせないと──
「えと……あの……。そっ、か。そうだよね……価値が……あるもん、ね……」
涙が止まらなかった。だが泣き止まなければ絶対に捨てられてしまう。面倒だと切り捨てられてしまう。それだけじゃない、子供の存在を引きずっているとわかれば、ラムズに隠れて子供に会うなど夢のまた夢だ。
イリーナは必死に鼻をすすった。明るく笑いかけたいのに、喉が引き攣って何も言えない。
「ら、ラムズ……わた、私……」
「頑張らなくていいよ」
ずいぶん優しい声だった。イリーナは顔を上げる。
「そんなに必死に隠そうとしなくても、お前の気持ちくらいわかるよ」
「そ、の、……えと……」
「感謝してるよ、本当に。向こう500年はあいつは俺に頭が上がらねえな」
ラムズはそう嗤うと、ゆっくりと自分の唇に人差し指を近づけた。目をすがめてわずかに首を傾げる。イリーナの視界が徐々に暗くなっていった。そのあと、彼女が目を覚ますことは二度となかった。
◆◆◆
《パターン3 戦闘能力的な意味合いで利用価値がある女の子。人間とラムズの使族のあいだで子供が生まれることが普通という設定》
煌びやかな長椅子に座り、ラムズが宝石を磨いている。イリーナはそろそろと近づき、彼の横に立ち見下ろした。
「あのね……ラムズ。妊娠したみたいなの」
「へえ」
イリーナはごくりと唾を飲む。これくらいの反応ならばわかっていたことだ。一歩近づき、また言った。
「あの……産んでいい? そのあいだ……お仕事はできないけど……」
ラムズは手に持っていた宝石を机に置き、横目で彼女を見た。
「選ばせてやる」
「……え?」
「母子ともに死ぬか、子供だけ殺して生きるか」
「は? え? どうして!?」
「どうしてって、いらねえからだよ」
イリーナはぎゅっと手を握った。声を震わせながら放つ。
「酷いよ! こ、殺さなくてもいいじゃん……」
彼の顔を見るに、おそらく本気なんだろう。イリーナは必死に頭を巡らせた。彼と離れるのは辛い。でも、お腹に宿ったこの子をなくしてしまうのはもっと辛い。
「……えっと、あの……もうやめるから。ラムズの前から、この子と一緒に消えるから……。ラムズに迷惑はかけない。なにも必要ないから」
ラムズはくくと笑い、机に肘をついてイリーナを見やった。
「母親っていうのはそう簡単にはいかねえもんだ。お前が路頭に迷い、このままじゃ子供が不幸になると思ったら、わらに縋ってでも助かろうとする。それが例え俺を頼ることでもな」
「そんなことしない! 邪魔はしない! 消えるから!」
「それに、どうせ殺されると思うぜ?」
「ど、どうして?」
「俺は敵が多い。俺が気にしてなくとも、子供がいるとわかれば狙うやつがごまんといる。産む前に殺した方が、心が楽だぜ。今なら子供を消したあと、その記憶も消してやる」
ラムズはそう言ったあと、「俺ってなんて優しいー」と唄うように続けた。イリーナは服の裾を引っ張った。
「やだ、やだ。殺さないで」
「選ばせてやってるだろ? 早く決めて」
早く言わないと、問答無用で子供ごと殺されるだろう。イリーナは懸命に言葉を探した。
「記憶は消さないでほしいよ。消さなくていい……」
「はあ?」
「あの、だから……消さなくていいから……。大丈夫、だから。忘れたくないよ」
「阿呆か? 皆まで言わんとわからねえか?」
苛立ちを含んだ声が耳を穿った。イリーナは震える腕を抑えながら、彼の続きを待った。ラムズはひとつ溜息を吐いて、一息で喋った。
「記憶を消さなかったら、お前はいつまでも子供のことを考え続けるだろうが。俺を恨むし、仕事に支障が出んだろ? まさか本気で俺が優しくて記憶を消してやるとでも思ったのか?」
イリーナは黙った。そりゃあそうだ。ここまでラムズに頼まれて仕事をしてきたのにそんなことにも気付かなかったなんて、馬鹿だ。
彼女の顎を不意に冷たい指が掴んだ。くいと上を向かされる。
「で、どっちにする?」
立ち上がっていたラムズはそう言って、優しく微笑んだ。
【アヴィル】
イリーナは、隣に座るアヴィルの手をそっと握った。
「あのね、妊娠したみたい……」
「まじで?!」
アヴィルは目を丸くして勢いよく立ち上がった。その拍子に手がすり抜けていく。ふらふらと歩き回りながら、アヴィルの顔はみるみる綻んでいく。
「めっちゃ嬉しーわ。産んでくれんの?」
「もちろん、そのつもりだよ!」
「そっか、そっか、お前の子供か。早く見てみてーな。とりあえず安静にしてろよ。今まで通り俺がなんでもするし、困ったことは全部言えよ。ちゃんと妊娠のこと調べてこねえとな……」
ぶつぶつと呟きながら、指折り数えている。イリーナも立ち上がって、彼の手をもう一度握った。
「大丈夫だよ、ありがとうアヴィル」
「って、あれ」
アヴィルの表情が青白くなり、一歩後ずさった。するりと彼の手が抜けていく。アヴィルはイリーナのお腹の辺りをじっと見つめている。
「生まれてくる子供……大丈夫かな。いや、大丈夫か」
「どうかしたの?」
「いやーその……」
アヴィルは唇に手を当てて視線を巡らせる。何度か彼女のお腹を見たあと、ごくんと喉を鳴らした。
「間違えて食っちまったらやべーなって……いやけどヘーキ! 理性があれば大丈夫だから! とりあえず生まれてからは常に満腹にしとく」
いかにも空元気という感じで、アヴィルはにかっと笑った。
「ほんとに大丈夫……?」
「あぁ。子供って初めてだしな。ラミアは子供持てねえし。ほんとうれしーよ。俺頑張るな。けど直接子供と関わるのは俺できねーから、なるべく頼むわ」
「分かった! 大丈夫。子供は私が面倒見るね。」
──それから子供が生まれ、子供が3歳になった頃
イリーナはふと夜中に目が覚めた。最近まで風邪気味だったし、昨日は子供と遊び疲れていたはずだったが、思ったよりまだ体力はあったのかもしれない。
隣を見ると、いつも一緒に寝ているはずのアヴィルがいない。彼も起きてしまったのだろう。キッチンで温かいミルクティーでも作ってもらおうと、彼女もベッドから起き上がった。
リビングには電気も付いておらず、アヴィルもいない。もしかして外に出たのだろうか? イリーナが風邪を引いているあいだ、子供の面倒も自分の看病もアヴィルが全部担ってくれていた。食事をとる暇がなかったから、ようやく今日出かけたのかもしれない……。子供ができてから、アヴィルとの2人の時間は限りなく減ってしまっていた。イリーナは構わないが、アヴィルへの負担は大きかったかもしれない。戻ってきたら感謝の気持ちを伝えようとイリーナはひとりでに微笑む。
もう一度寝ようと寝室に戻ろうとしたら、子供部屋のドアが僅かに空いているのが見えた。フロアライトの電気が付けっぱなしなのか、僅かに黄色い灯りが漏れている。
「あれえ、私消すの忘れたのかな」
だが、電気を付けたままで子供は眠れなかったはずだ。小首を傾げながら、ぎいっとドアを開ける。薄暗い灯りの中、アヴィルが床に座っているのが見えた。
なぜか身震いがした。鳥肌が立つ。なんとなくこのまま部屋を進むのは躊躇われた。だがイリーナは、自分の体が何に怖がっているのか分からなかった。
アヴィルが怖いはずがない。どうしたんだろう?
「アヴィル……?」
アヴィルがさっと振り返った。彼の手や口元から赤黒い血が滴り落ちる。その血はぽたりぽたりと床に落ちて、みずみずしい染みを作る。アヴィルの後ろでは、子供のものらしい腕がぐったりと横たわっているのが見えた。
やっぱり食事をしていたらしい。でもよりによってあの子の部屋で食べることないのに──……?
イリーナは何かがおかしいことに気付いた。アヴィルはまだ食べていたらしい肉をごくりと飲み込むと、ゆっくりと立ち上がり彼女の方へ近付いた。イリーナは口を開く。
「あのさ、ベッドにあの子がいたと思うんだけど……」
「俺の愛しのイリーナ。お前は俺だけいればいいよな?」
イリーナはもう一度、床に横たわっている腕を見た。なぜか見覚えがある。幼く白い手。触ったことのある、柔らかい手だ。
はっとしてアヴィルを見た。
「アヴィル、あの……もしかして……その……ねえ……」
イリーナの言葉尻は消えていく。唇は震え、このまま立っていられない。腰が抜けそうになったところで、アヴィルがさっと手を出して彼女を支えた。
「大丈夫」
「何が?」そう聞き返す前に猛烈な眠気がイリーナを襲い、彼女の意識は暗転した。
「イリーナ、起きた?」
目を開けると、アヴィルの赤黒い瞳が見えた。彼の膝の上で寝ていたらしい。
「あれ、私……」
「疲れてるんじゃねーか? 最近いつも人形で遊んでたろ」
「人形?」
なんのことか一瞬分からなかった。だが、アヴィルに出されたテディベアを見て記憶が蘇る。ままごと遊びをしたり、寝かしつけたり、抱きしめたり、そうやってこの子と遊んだはずだ。
「そうだったよね。うん、この子」
イリーナは大事そうにテディベアを抱きしめた。とても大切なもの。鼻がツンとして、涙で目が潤うくらいに、大事なもの──。
でも何かが違う気がする。何か忘れている気がする。
「もうちょっと寝よーぜ。俺もねみーわ」
「この子も一緒でいい?」
「もちろん」
アヴィルは優しく目を細めた。
ううん、これでいいんだ。この子が大事だった気がする。イリーナは腕の中のテディベアを痛ましそうに撫でた。テディベアのガラス玉でできた瞳は、彼女を無機質に見つめ返した。
【ゼシル】
イリーナは隣に座るゼシルに、恐る恐る言葉を零してみる。
「あのね、ゼシル。妊娠したの……」
「ん? 妊娠だって?!」
「うん……」
ゼシルは顔を輝かせて彼女を抱きしめた。
「素晴らしいじゃないか! 神が俺たちを認めてその子を授けてくださったんだな……神に感謝をしよう。ほらお祈りをするよ!」
あれよあれよという間にイリーナは崇神教の複十字架を渡される。二人で祈りを捧げたあと、ゼシルが晴れやかな笑みで話し始めた。
「よし! それじゃあ子供の名前を考えようか。おそらく春の季節にできた子供だろうから、水の神ポシーファルに感謝を捧げる名前にしよう。そうすると、例えば古典語の……」
「待って。子供の名前は2人で考えようよ」
ゼシルの言葉はぷつんと切れ、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「どうして? 子供は神からの福音といってもいい存在だ。俺たちのあいだに子供ができるなんて文字通り奇跡だ! それなのに神に感謝を捧げる名前としないのか?」
「でも私は……」
「そうだな……たしかに女性は母性としても自分で可愛がりたい、つまり自分で名前を付けたいのかもしれない。だが俺たちも神の子であることは確かだろう? ということはその子も神の子だ」
ゼシルの赤い瞳は爛々と輝く。イリーナを見つめる笑顔は、どこか仮面に貼り付けた笑みのように見える。瞳の奥の奥では赤黒い炎が燻る一方、ゼシルの唇からは、嘘のように美しい虹色の鱗粉が溢れている。
「で、でも神様も、私たちが自由に名前をつけるのを許してくださるわ……!」
最後のひと押しと言わんばかりに、イリーナは震える声でゼシルに言い返した。ゼシルは彼女の頭を優しく撫で、落ち着いた声で話す。
「その自由な選択において、俺は神に感謝を込めて名前をつけたいんだ。なあ、イリーナならわかってくれるよね?」
そのままゼシルは彼女を胸に抱いた。イリーナはゼシルの腕の中で頷くことしかできなかった。