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エリラに踏まれ隊の奮闘

 エルシオンでの昇格試験直後のお話です。

 俺はエリラに踏まれ隊の隊長をやっている者だ。

 エリラ様がこの街にこられたのは今から1年前。初めてエリラ様を見た瞬間から踏まれたいという欲求が生れ、気付けば彼女の足元に土下座で座りお願いしたものだ。

「踏んで下さい!」

「キモイ!」

「ありがとうございます!」

 エリラ様から罵倒された挙句蹴り上げられ地面へと落ちた瞬間は快感だった。可愛いだけでなく性格も素晴らしかった。もっとこの素晴らしさを知ってもらおうと私は同士を集めた、ほどなくして十人ほどの同士が集まり、我々は『エリラに踏まれ隊』を結成したのだった。

 それから一年余り、如何にしてエリラ様に心地よい蹴りと罵倒をもらうかを日々研究、実戦させてもらった。周りからは何故か白い目で見られたが、私から言わしてもらえばお主たちはこの快感を分からぬ愚か者にしか見えなかった。

 しかし、そんなときに思わぬ悲劇が起きてしまう。

 それは、ある日のことだった。冒険者ギルドの近くの裏通りに位置するエリラに踏まれ隊の拠点でいつも通りに研究を進めていると何やら駆け足で近づいてくる者がいた。やがて、ガチャリとドアが開き、私は振り向いてみると、そこには同士が膝に手を当てて大きく息を吸いながら立っており、私は只ならぬ雰囲気を即座に感じ取った。

 そして、その予想は当たる事になる。

「エリラ様が謎の小僧の奴隷になりました!」

 その言葉を聞いた瞬間、私の頭は真っ白になり、気付けば私は自分のベッドの上で目が覚めた。

 落ち着くのだ。何かの聞き間違いではないか? そう思った私は同士たちを集め、改めて報告を聞く。

「どうやらエリラ様は検定試験の試験官として相手をしていたところ、例の小僧に敗北し、試合終了後にその小僧に襲い掛かったことが原因で、ギルドのブラックリストに名を連ねることとなった模様」

「その報告は本当か?」

「ハッ、既に別の同士が例の小僧の後ろをついて行くエリラ様を目撃したとのこと、首には奴隷の証である黒いチョーカーもありました」

「なんという事だ……」

 まさかエリラ様のあの性格が裏目に出るとは。あの性格だからこそ、素晴らしい罵倒と蹴りをもらえたのに……。

「許せん! なんとしてもエリラ様を奴隷と言う立場から解放するのだ!」

「ハッ、しかし、どうやって……?」

「ギルドのブラックリストになってしまった以上、ギルドは簡単には解除しないだろう。だが、その小僧からエリラ様を開放することは不可能ではないはずだ!」

「「おおっ!」」

「まずは、その小僧の正体を探れ、そして時期が来ればその小僧からエリラ様を救出するのだ!」

「「ハッ‼」」

 こうして、私の奮闘が始める事となる。



 数日間調べた所どうやら、例の小僧というのはクロウと言う名らしい。出身地は不明。あの事件の前日にエルシオンで冒険者として登録をしたと思えば、その日の内にE級クエスト十回分を簡単にクリアしたと言うではないか。

 しかも、そこではこの街の領主の息子ウグラを殴り大怪我を負わせたとの事。これだけ聞いただけもかなりの危険人物であることは分かる。しかも年齢はまだ五歳とのこと。このような問題児に関わっていればエリラ様の身にいつ危険が降りかかるか分からない。

 そう判断した私は早々にこのクロウと言う者と話を付ける事にした。



「……という訳で、エリラ様を返していただこうか?」

 数日後、私はクロウという小僧と相対していた。

「断ると言ったら?」

「無理にでも返してもらおう!」

「返すって……元々あんたらの物じゃないだろ……そんなことされてもエリラは喜ばないと思うが?」

「そんな事は後でいくらでも言える! 今、我々がなすべき事はお主からエリラ様を開放すること以外何もない! 返さぬと言うのであれば、今ここで勝負―――」

 言い終わる前に勝負はついた。一瞬だった。気付けば私は地面に倒れ血を吐いていた。

「た、隊長!」

 同士が駆け寄って来る。

「クッ、あの小僧は⁉」

「も、もうここには居ません。既に」

 なんたることだ……。私はあんな小僧に成すすべなくやられたというのか……。自分で言うようなことではないが、私だって冒険者の端くれ。魔物との戦闘もそれなりにこなしており、子供程度に後れを取るほど弱くはないはず。

「隊長! まだ間に合います。急いで奴を―――」

「追うな! 追えばどうなるか分からぬぞ!」

「し、しかし……」

 血気盛んな同志を宥める。私だって追いたい。だが、追ったところで返り討ちに遭うことは目に見えて明らかだ。

「いいか、今日は引き下がる。そして再度機会を伺うのだ。我々はこのくらいで諦めはしないぞ!」

 そうだ。私はここで倒れる訳には行かぬ。再びエリラ様に踏まれるまで、私は諦めはしないぞ!

 私の戦いはこれからも続くのだ!

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