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レイナとアレスの特訓

時系列としては、クロウが両親の元を旅立って暫く経ったあたりとなります。

レイナとアレスの特訓


「はあああぁぁぁ‼」


 《フォース》で自身の皮膚を鱗にしたクロウの母親……レイナはその丈夫な拳を振り上げる。

「なんの!」


 それに対応するクロウの父親……アレスは自分の顎に襲い掛かろうとしている拳を、体を仰け反ることで回避をしたが、僅かにかわせなかったのか顎辺りに擦り傷が出来ていた。


「甘いよ!」


 レイナは追撃をするために体を一歩前へと踏み出したが、次の瞬間、アレスの右足がレイナの横腹を捉え、その体をくの字に曲げることになってしまった。アレスは回避するためだけに体を仰け反った訳では無く、仰け反った直後に左足を後ろに引きつつ右足を前へ出すために体を捻っていたのだ。


「甘いのはどっちだ?」


 アレスの体は半回転ほどしたのち、持っている自身の剣に気を付けながら両腕で体を支えるような形で止まった。そして、次なる手へと移行するために詠唱を開始する。龍族のレイナにとって魔法は驚異以外の何物でもない。いくら丈夫な鱗を纏っていようがアレスの魔法には太刀打ちが出来ないのだ。


「チッ!」


 蹴り飛ばされたレイナは舌打ちをすると同時に転がっていたままの状態で《倉庫《ストレージ》》から槍を取り出すと、回転していた自分の体を片手で地面から跳ね上げた。そして、地面と水平の態勢のまま槍をアレスに向かって放り投げた。ステータスはアレスほど高くは無いが、龍族特有の能力補正により槍は一瞬でアレスの目の前に飛んできた。クロウみたいに《不殺》のスキルが無いレイナの攻撃は当たれば大怪我では済まされないだろう。


「うわっ!?」


 詠唱を開始していたアレスは飛んできた槍を回避するために真横に飛び跳ねた。そして、この瞬間アレスはせっかく唱えていた詠唱を自らやめてしまったのだ。そして、更に悪いことにこの僅かな瞬間でレイナは体勢を立て直し、アレスに向かって突進を開始していた。手には投げた槍と同じく《倉庫》から取り出したのか、ご自慢の槍である【デーモンスピア】が握られている。

 レイナとアレスの距離はおよそ⒑メートルほどしかなく、レイナの身体能力でも一瞬で肉薄出来る距離だ。

 この距離でアレスの出来ることは限られてくる。自身の持つ剣で応戦するか、避けるか、または別の手か。レイナはアレスの性格上、応戦をすると判断していた。そして、戦うとなれば槍を持つ自分の方が有利だと思っていた。

 だが、アレスは予想外の行動に出る。いや、ある意味では予想通りとも言えるかもしれない。


「そう来ると思ったぞ!」


アレスはそういうと、なんとレイナの方へと飛び出し始めていた。確かにレイナは応戦すると判断はしていた。だが、まさか自分の方へ向かってくるとは思いもしてなかったのか、一瞬だけ動きが止まってしまった。その隙にアレスはレイナの懐へと入って来た。

 懐に入られると槍の剣の相性は逆転する。槍より小回りが利く剣は槍の懐に入りさえすれば一瞬で勝負を決めることが出来る。

 アレスは剣の側面をレイナの体の方へ向けると、そのまま力任せに振り抜いた。ドスッと鈍い音と共にレイナは後方へと吹き飛ばされ、そのまま地面へと激突した。今まで移動していた方向とは反対側に飛ばされたのと、アレスのその高い筋力によるみねうちの衝撃に耐え切れず胃液をその場にまき散らした。

「はい、お終い」

 その隙を逃すアレスでは無い。さっとレイナの元に移動するとそのまま、剣をレイナの頭の上へと添えた。


「おえぇ……ちょっと……やり過ぎじゃないかい?」


 口を拭いながらレイナはアレスに文句を言う。


「何言っているんだ。あの槍投げは殺しに来ているレベルだったぞ? それだけで済めば十分ないか」


 それに対してアレスが反論する。アレスの言葉通りレイナが投げた槍はアレスの眉間に一直線に向かって来ていた。当たれば大怪我所か永眠してしまうレベルの危険度である。


「へっ、だってマジでやらないと特訓にならないじゃないか」


「だからってなぁ……」


「それに手を抜いているようじゃ、いつまでもクロウに追いつくことは出来ないしな」


「むっ……」


 普通の人間はここで「いや、それでも危ないだろ」と反論するところだろう。いくら両者が強いと言っても生き物である以上、ミスは避けられない。万が一のことを考えればやめるのが妥当な判断と言える。


「それもそうだな。よし、じゃあ休憩したらもう一回だ!」


 だが二人はやめない。クロウがいれば間違いなく止めに入るだろう。そもそも夫婦で行うというレベルの話じゃないが、この二人にとってこれは当たり前なのである。


「次は勝つよ!」


「へっ、悪いが次も勝たせてもらうぜ」


 こうして、二人の特訓は今日も続く。


 いつか自分の息子に勝つために。


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