モイネ・ボンテ 第3話
目が覚め、先程の事を思い出した途端に腹が傷んだ気がする。
周りに目を向けると助けた銀髪がいた。助けたといっても途中で気を失ってしまったので、おそらく駆けつけた冒険者が彼を助けたのだろう。
「大丈夫ですか?」
起き上がると銀髪が声を掛けてきた。おそらくここは宿屋のベッドなのだろう、ベッドの隣に銀髪、部屋の中央のテーブルに2人組の冒険者がいた。
「おぉ、目が覚めたかおっさん。」
「びっくりしたぜ、買い物してたら変な格好をした禿のおっさんが壁から飛び出てきたんだからな。」
はっはっはちげぇねえ。俺もこんなおっさんが突然湧いて来たらびっくりする。笑いあっている二人の冒険者に礼を言う。
「あんたらが助けてくれたんだな、俺もこいつも。ありがとよ。」
「いいってことよ、それよりあの不気味な男は何だ?」
「殺人鬼だ。」
「殺人鬼?」
マデラの事を一通り説明すると。
「あぁ、あれが噂の。」
「ま、思ったより大したことはなさそうだったな、噂は所詮噂か。」
「なんだ?聞いたことあるのか?」
マデラという言葉に対しては反応しなかったが、アブロと名乗っていると言ったとたんに納得しだす二人。
ガンブリンでの魔物を退治した無双劇に、背びれ尾ひれがついて噂が流れているそうだ。やれ3mを超す巨漢だとか、やれ一太刀で魔物を葬っていっただとか、実は魔物だとか根も葉もない噂ばかり。
情報収集中にも似たようなことは聞いていたが、そこまで広まっているとは思わなかった。
「自分のためにありがとうございます。」
銀髪の青年が改めて感謝する。
「別にそれはいいけどよ、なんでお前が狙われてんだ?」
「あぁ、それは確かに気になるな。」
「自分にもよくわからないんです。」
青年がいうには、街中で声を掛けられ仲間を探しているとPTへの勧誘から始まったのだ。そしてしばらく歩いていると殺そうとしてきた。
青年の名前はサンジェといい、レベル44で今までノーコンティニューでやってきているそうで、装備は銀猿の毛皮から作られたレザー装備に麻痺効果が稀に発動する細剣、それなりに希少価値はあるが、そこまで高価なものではない。
俺が気絶してからの話を聞くと二人の冒険者、短く黒髪を刈り上げているガタイのいい男チエンと、細身で長身肩口まで伸ばした藍色の髪をした美形フェゾンが、俺の破壊した壁を辿ってマデラの元へむかって、2人の姿を見たマデラは、髑髏と何やら話し合ったあと逃げて行ったそうだ。
「実はだな、俺たちは困っているんだ。」
チエンが暗い顔をしつつ下を向きテーブルの上で手を組む。
「そうなんだ、だから助けてくれないか?二人とも。」
フェゾンも全く同じ格好をしつつ問うてくる。
「自分は大丈夫ですけど、役に立てないかもしれません。」
「内容による、助けてもらったわけだし、手伝えることなら手伝う。」
すると暗くなっていた二人の顔はぱっと明るくなりベッド際まで椅子のまま器用に近づいてくる。
「よっしゃぁ!冒険者二人ゲットオオオオ!」
「これでついにクリアできる!」
「内容次第だって言ってんだろ、なんなんだそのクエストってのは。」
チエンがクエストの内容を話し出す。
雪国ネイジから東はそれそれは美しい湖ディニアがあるそうで、年中凍っているが、夏は表面が溶けて空を反射するためとても幻想的な場所だそうだ。そこにこの時期に現れる4匹の魔物ユニコーンをほっぼ同時に討伐することが条件で、特殊なアイテムがそれぞれ手に入るのだが、2人だとどうしても無理だったそうだ。
「一人で一匹討伐はできるレベルだと思う。俺らも50そこそこのレベルだし、どうだ?報酬はもちろんユニコーン系統でどれが入るかわかんねえけどおいしい話だと思うぜ。」
「自分は一人で倒せますかね?」
「たぶん大丈夫だろ、一応終わったら助けに行くし、本当に無理そうなら逃げてくれて構わない、ユニコーンは祠の前からそれほど遠くまで追っかけてこないからな。」
「たすけてくれたことだし、それくらいなら全然かまわない。問題は、マデラがもう一度サンジェを狙ってこないかだけどな。」
さすがにすぐは狙ってこないと思うけどな。
「おぉーし、じゃ、ディニア湖にむけていざ出陣ー!」
宿屋から出て4人PTはディニア湖に向けて出発する。
因みにチエンの装備は重鎧に大槌、重鎧は金ピカで眩しい、ダメージ吸収率が恐ろしく高いらしいがその代りにメンテナンスに時間を滅茶苦茶取られるらしいが。大槌にはオルトロスの素材が使われており殴られると一瞬硬直する。
フェゾンは大鷲の革を使ったレザー装備の一部にアイアンタートルの甲羅を張り付けたレザープレートという特殊な防具に、火炎鳥の羽をつかった鞭を装備しており、鞭に振れたものは溶かす事ができるそうだ。溶かすといっても当たった場所だけなので、大して役には立たないらしい。
PTでの役割を話しつつ、ディニア湖へと向かう雪原を行く。




