モイネ・ボンテ 第1話
賞金稼ぎ。
ACSにも賞金稼ぎという職業は存在する。普段魔物を狩って生計を立てるのとは別に、プレイヤーが操作するキャラクターの首に賞金がかけられることがある。
金貨15枚それが今回狙う首にかかった賞金だ。正直ACSが始まってからいろんな首を狩ってきたけど、一人の首にかけられる金額で金貨15枚はかなりの大物だ。
金貨5枚になれば一級の犯罪者ともいえるだろう。
金貨10枚になるのは一つの組織の頭ぐらいのもんだ。
マデラという賞金首についた金額が破格だということは、同じ賞金稼ぎ同士でも噂になっている。
勿論一攫千金をねらってマデラを狩りに行った奴らも少なからずいる。無事帰ってきたのは一人もいないが。
世の中には上には上がいるってもんで、現在の賞金首としての最高額は金貨1000枚のファルディーと呼ばれる存在だ。
殺した後にファルディーの紋章を残していき、実際にその存在を見た者はいないという化け物じみた存在だ。
プレイヤーじゃないという説もあるし、複数集団だという説もある。
それに比べればマデラという存在はすごく矮小に見える。
酒場での情報収集での成果としては、マントを羽織った黒髪黒目の少年。髑髏が紋様になっている剣を携えており、盾の類は装備していない。
殺害人数は40人近く、これが報告されていないものも含めるともっと数は膨れ上がるだろう。
だが殺害している人たちに共通点はない。なぜ殺害しているかもわからない状態だが、この間ガンブリンで一人マデラに殺された。
殺された人はジャックポットをあてて大金持ちになってすぐに殺されたそうだ。
そしてそのお金はすべてマデラにとられたとのこと。マデラはお金欲しさに盗みを、いや殺しをしている説が出てきたのだ。
雪国ネイジ。赤いレンガ造りの建造物が美しく、雪が降るとより一層映え、観光客も多い町。
此処にマデラが潜伏していると聞き付け、おれはやってきた。
目撃情報や、殺している人たちのレベルからマデラのレベルは40前後だと推測されている。
本当に40前後なら負ける要素はないと思っている。俺のレベルは57で装備もそれなりにいろいろ揃えている。
月牙と呼ばれる、幅広のスコップと三日月状の刃がついている西遊記に出てくる沙悟浄の持っている武器と、法衣を装備している。
月牙は一度切りつけた者の場所がどこかわかるといった効果を持っており、この効果によって賞金首は俺から逃げることが難しくなる。
法衣は斬れずの法衣と呼ばれるもので、剣や槍による攻撃を通さなくなり、打撃や矢での攻撃しか効かない仕組みになっている。
剣で斬られることはないが、鉄の塊で殴られるのと同様でダメージ自体は通す。
そして遠見の数珠によって矢は狙った瞬間からこちらが位置を把握できるようになっているので、実質打撃しか私には効かない。
雪国ネイジに滞在すること一週間。
情報収集をしつつマデラを探す。ガンブリンでの一件の際、奴はマデラではなくアブロと名乗っていたらしい。
名前はあてにならんということだ。黒髪黒目少年等どこにでもいる。もう一週間滞在して足掛かりすらない状況だった場合切り上げることにしよう。
適当に路地裏に入ったところで2人の剣士とすれ違った。
「キングさん、そんなに怯えてどうしたんですか?」
「おっ、怯えてなんかいねえよっ!?ただ見知った顔があってだな、一度そいつに殺されてよ。」
「そうでしたか、でもキングさん滅茶苦茶死んでるんだから殺されるなんてしょっちゅうあることなんじゃないですか?」
「いや、そうなんだけど、でもやっぱあいつは何でか苦手なんだよなぁ…。くそマデラめ…。」
ハッと振り返る。急な動作に二人組もこちらに注意をむける。
「また殺されるんじゃないですか?キングさん。」
「笑えない冗談はやめてくれ。で、坊さんなんか用か?」
「今、マデラといったか?どこに行った?」
「マデラを知ってんのか…?」
明らかにこちらを警戒するキングと呼ばれた少年。険しい顔つきをしていたので襲われるとでも勘違いしたのかもしれない。
「あぁ、奴を追っている賞金稼ぎだ。避ければ情報を買いたい、銀貨20でどうだ?」
「いらねえよ、あっちの路地に行ったぞ、2人組で。」
「ありがとう助かる。」
銀貨の入った袋を投げて渡し、示された路地へと向かう。
そして見つけた。銀髪の青年と共に歩く黒髪黒目の少年、そして少年の腰に下げている髑髏の剣を。




