タロウ・スズキ 第2話
いつもこの階層で止まってしまう。
問題は動きの速い犬型の魔物が多い事だ。それでももうこの塔に登るのは4回目だ。さすがに犬の動きやパターンも読めてきた。
飛びかかってくるポイズマドッグと呼ばれる噛まれたり、引っ掻かれると確率で毒状態になる魔物の攻撃を躱しつつ刀で横っ腹を斬りつけ、絶命させる。
塔に出てくる魔物は基本的に野良の魔物より強い。ボスはむしろ弱いのだが。
ここで慣れていると外の魔物と戦った時、魔物があまりに動かなさ過ぎてバグかと思うくらい攻撃パターンが違いすぎる。
20階のボス、大型の犬の魔物フェンリル。
本来雪国ネイジにいる氷を扱う魔物で、討伐成功者はまだいなかったはずだ。そもそもボス部屋に到達できないとか風の噂で聞いた気がする。
塔に登ればすぐに会えるのだが、フェンリルは俺が苦手のする魔物だ。
まずスキルを打つ隙がなかなか無く、打てたとしても当たらない。
すばしっこく、なおかつ相手は近距離より中距離戦を得意とする魔物なのだ。
大型の犬といっても、レトリバーやハスキーのようなサイズではなく馬とか牛とかそれくらいのサイズだ。
その巨体が部屋の中をぴょんぴょんと跳びまわり、冷気弾や氷柱をふらしたりなどと中距離攻撃ばかりしてくるので手に負えない。
かといって近距離戦に持ち込めば有利かというと、鋭利な爪や、その大きな顎で噛みつかれてしまう。
4度目の挑戦が始まる。
部屋に入った瞬間に放たれる冷気弾をよけ、距離を詰めるため走り出す。上を注意しつつ冷気弾にも注意しなければならない。
小お部屋の温度はマイナス5度くらいに設定されているらしい、吐く息が白く、フェンリルの攻撃によってさらに気温が下がっていく。
氷柱が形成され、頭上に振ってくるのを何とかかわし、フェンリルのそばまでくると前足での攻撃をお見舞いされるが刀で受け、そしてそのままスキル<六の型・水無月>を発動する。
1~5までは自分から攻める型だがこの六の型は唯一受け無し、攻撃を加える型だ。
刀を横にして受け止めた状態から流れるように攻撃をそらし、そのまま刀を降ろしフェンリルの顔面に下からの斬り上げをお見舞いする。
蒼銀で美しい毛並みに赤い染みが広がっていく。本来人型の魔物に発動すれば、股から脳天まで一直線に切り裂く型だが、フェンリルの顔の3分の1を切り裂くにとどまった。
一旦距離を取るため後ろに大きく跳び退るフェンリル。左目も含めた左半分を深く斬りつけたので、落ちる血の量は夥しく、痛々しいものだったのだが、すぐさまフェンリルは体から冷気を放出させ血を凍らせていく。
こちらを睨み、冷気弾を放ってくる。難なく躱すが、フェンリルは跳びまわりながらいろんな方向から冷気弾と氷柱を乱射してくる。
振ってくる氷柱を躱しつつフェンリルが吐く冷気弾にも当たらないように避けていく、距離を詰めようとしてもフェンリルは一か所にとどまてくれないので、なかなか難しい。
攻めあぐねていると一つの氷柱をよけた瞬間冷気弾に当たってしまう。一気に体温が奪われ、スローのデバフがかかる。
一発当たったところで大して遅くはならないのだが、いつもの動きをしている感覚と変わらず、体だけ動きが遅くなるので感覚にズレが生じる。
今までも何度もこのズレによって死ぬ冒険者はたくさんいた事だろう。
5発冷気弾に当たれば完全に動きを停止し、氷柱の攻撃によって死ぬことは実体験によってわかったことだ。
動きのズレに注意しつつ氷柱と冷気弾を避けていく。そして動きを止めるフェンリル。
魔物にもスタミナはある。あれだけスキルを乱射していれば疲労もたまり一度動けなくなる。
今が好機と一気に距離を詰め、刀での突きを放つ。
緩慢な動きだが何とか避けるフェンリル。避けた後の硬直を狙いスキル<二の型・如月>を構える。
避けた先で構えたこともあり、攻撃が無事当たる距離に逃げてきたフェンリルにスキルを放つが、連撃である如月は一発も出ずにスキルが描く紫の軌跡を消してしまう。
何故!?と驚愕している間にフェンリルは回復したのだろう冷気弾を放ち、避けることができずに直撃してしまう。
そうか、冷気弾によってのスローがスキルとかみ合わなくて発動できなかったのか。
そのままフェンリルに噛み殺され、塔の入り口付近である生還の間で生き返り、フェンリルとの戦闘を振り返りつつ、宿へと帰っていった。




