黄昏の盗賊団 シン 第2話
そのころビランは早くも宝物庫の匂いを嗅ぎつけ、無事誰にもばれることなく、辿り着いていた。
宝物庫のカギを開け、中の財宝を目にして思ったことはしょぼいな、これが10貴族の4番目か?と思わざるをえなかった。
実質アボノー家はその財産の多くを投資に使っており、物的資源をほとんど持ち合わせていないし、それを盗まれたところで大した痛手ではない。
問題なのは賊の侵入を許し、さらに盗まれてしまうことだ。
だがアボノー家の宝物庫に簡単には入れ、お宝も持ち出せる分はすべて袋に詰め、脱出の準備をしているところだった。
先程庭から笛の音が聞こえてから、屋敷の中は慌ただしくあちこちを走り回っている音がする。
シンがうまい事囮役をしてくれている証拠だ。
なので、目の前に酒瓶をもっているおっさんが現われたときはアボノー家当主と出くわしたのかとおもった。
「おい、お前、酒がまずくなるからそういうのはやめろ。」
不機嫌そうにしながら言葉を投げかけてくる。
「そういうのってなんすかね?あっしはただの通りすがりでさあ。」
「じゃあその荷物を置いてけ、いや、むしろお前をボコって運動すれば酒はうまくなるか?」
酒瓶をゆっくり床に置き、準備運動を始めるおっさん。
「リオはどっかで遊んでるみたいだけど、あんたの仲間か?」
「さて、なんのことやら?」
内心焦っていた。シンも同じように捕まっているのかもしれない。シンの場合まだこういう時の対処をあまりしたことがないから、対応を間違えてしまうかもしれない。
皆殺しに出来るならしてもいいんだが、目の前の男を見る限り難しそうだ。
「おら、おとなしく捕まれッ!」
言葉と同時に廊下を蹴り加速する。難なく避けたつもりだったが、避けた先におっさんの拳が迫っていた。ぎりぎり反応し躱すことができたが、さらに足を掛けられ転んでしまう。
急いで立ち上がりつつ距離を取るが、すぐさま距離を詰めてきて胸倉を掴まれ、足を掛けられ転ぶ。
そのあと何度も同じことを繰り返しひたすら転ばされた。
「わかったか、お前は逃げれないし、俺に勝つことも無理だ、いまなら見逃してやる。荷物を置いて出ていけ。」
そういうわけにはいかない、こちらも盗みに失敗したとなれば面目が立たないんだ。
一度荷物を降ろし、武器をもって臨戦態勢へと移る。
「はぁ、めんどくせえなぁ。」
シンはリオと大量の私兵相手に膠着状態に陥っていた。私兵の1人を人質に取ることに成功したのだ。
私兵たちは金で雇われており、本来人質に取ったところで気にせず突っ込んでくるのだが、それをリオは止めたのだ。
「お前、見たところ冒険者だろ、なんでこんなことをしている。」
「職業通りにしているだけだ。」
「取りあえず人質を放してくれたら、あとを追わず逃がす。放してくれないか?」
リオの顔は真剣だ。とても嘘をついてるようには見えない。
人質を抱えたまま近くの窓へと近付く。
人質を放し、窓から飛び降りる。
今回の作戦は失敗に終わってしまったかもしれない、でもイラン先輩が盗みを成功してるかもしれない。
淡い期待を込めて、黄昏の盗賊団のアジトへと戻った。
「お帰り、シン。失敗したようだね?」
一緒にビランが帰ってきていないことと、表情から読み取ったのだろう、団長のライが笑みを顔に浮かべながら訪ねてくる。
「はい、先輩はまだ…?」
「ビランは捕まったみたいだね、今さっき国に連れていかれたところだ。」
先輩捕まってしまったのか…。
「何気にすることはない、トエスクの牢屋はみんな行き慣れているからね!」
そのうち助けに行くよ。とライは続ける。
「それに災難だったね、いまアボノー家には厄介な傭兵たちと当主の息子がいてね、北の国で通用するレベルの傭兵たちだったから、君たちじゃ相手にならなかっただろう。」
それからリオの事を話すといろいろ教えてくれた。
彼は砂漠出身で、拳闘士のスキルはほぼ網羅している。そしてレベルは50代だろうと。
あとあそこの傭兵はみんなそれくらいのレベルで、正直全員相手にすると黄昏の盗賊団が壊滅レベルまで追い込まれてしまうだろう。
それほどまでにアボノー商会の傭兵達は手ごわいらしい。
そしてそこまで話してもらいようやく思い出した。ループが昔その傭兵たちとともにいたという話を。




