とある冒険者たち 第1話
逃げる。逃げて逃げて逃げ続ける。
あの魔物は俺たちの手には負えない。
俺たちは現実でもよくつるんでいる3人組で、ゲームの話をよくする、どこにでもいる高校生だ。
その一人が紹介してくれたACSを3人で遊ぶことになった。
レベル10くらいまで大したことはなかった。剣士、大剣使い、斥候と適当に選んだ3人の職も相性が良く、PTプレイもなかなかうまくいっていたと思う。
ACSの煽り文句の割には死なずにこれたし、大したことはない。なんて思っていた。そして飽きてくるのだ。安全圏での狩りに。
なのでちょっと遠出してシーモア海岸を東に進み、海の町コートを抜け、廃村アバドンにきたのだ。
ここの魔物は明らかに強く、LV20に到達した俺たちだが、苦戦を強いられていた。だがそれを楽しんでいた。
人型のゾンビにゾンビ犬、ゾンビの鳥なんてのもいるのに加え、エリートサハギンや、毒ウミウシというイノシシほどもある巨体に毒を捲き散らかす凶悪な魔物もいる。
そしてそいつらは、種族ごとだが集まっていることが多く、一度に5から8体ほどを相手にしないといけない。
それでもぎりぎりではあったが、なんとか無事に廃村の探索を終えることができた。
余計に俺たちを調子にのらせることになったのだ。
一度トエスク王国に帰り、もう一度廃村アバドンに向かうことになった。
廃村アバドンはクエストを完了したことによってか、魔物たちの姿はほとんど見えなくなっていた。
そう、この状態にしてからこの先にある遺跡に向かうと道が開かれているそうだ。
廃村アバドンのクエストを終わらせずに、遺跡に行くと祠がある一部屋だけで特に何もないのだが、この祠を動かせるようになるのだ。
動かしたその地面は蓋がしており、開けると地下につながる梯子になっている。
降りた場所は十字路になっていてその中心に梯子がある。
とりあえず、降りた正面から進んでみることにしたのだが、すぐにまた十字路になっていた。3人で相談しつつ正面を行くことにした。
しばらく歩くと十字路につく。行き当たるまでは正面を突き進んでいくことに決めた3人だが、ふと魔物が出てこないことに気が付いた。
斥候の女は魔物を感知する<索敵>を覚えているが、一度も魔物が引っ掛からない。
「魔物がいないことはいいことなんじゃねえの?」
剣士の男が言うが、斥候の女は不安そうだ。
30分ほど真っ直ぐ歩いていると、十字路が三叉路になった。つまり突き当りに来たのだ。
どっちにいくか相談していると、何かが這うような音が聞こえた気がした。他の二人にも聞こえたようで身構えるが、斥候の女は魔物なんて引っかかっていないと言った。
警戒しつつ右に曲がることにした。今度は十字路ではなく三叉路が続いた。左に行く道がなく、右か後ろか正面か。
30分ほどあるくとこんどは二股の道になった。恐らく真四角の遺跡なのだろうと皆が予測していた。規則正しく碁盤のように十字路が並んでいるのだ。
端っこを歩いてきたので中に入っていくことも考えたが、とりあえず一周することにした。
しばらく歩き回ってこの遺跡の形は大体わかった。端から端まで1時間の真四角の形をしており、12個の別れ道がある。
だがそれだけだ。魔物もいなけりゃ、謎解きもない。そして困ったことに梯子がなくなっていた。
最初は道を間違ったのだと思った。何時間か歩いていた最初の方は何度か梯子をみているのだ。
だが、いくらさがしても梯子はみつからなかった。
もしかしたら謎解きは始まっているのかもしれない。と斥候の女がいいだした。確かにその可能性はある。
しばらく考えつつ遺跡内をうろうろしていると、斥候の女が<索敵>に魔物が引っ掛かったと教えてくれ、臨戦態勢に入る。
十字路の先から現れたのは煽情的な体つきをした女だった。ビキニ姿でその豊満な胸を強調している。顔はとても美しく見惚れてしまうところだ。下半身が蛇の姿をしていなければ。あれは魔物のラミアという種族のはずだ。
唖然としつつ持った大剣をしっかりと構え、ラミアを見据える。なぜラミアがこんなところにいるんだ、もっと上位の魔物じゃないのか?
剣士が<ヘイトハウル>で注意を惹きつつ、攻撃に入るが、おれは一瞬で弾き飛ばされてしまう。大剣で<スラッシュ>を放ったのだが、おそらく尻尾で弾かれたのだろう。
壁に叩き付けられたまま動けなくなってしまう、恐らく麻痺にかかってしまったのだろう。
ラミアは笑みを浮かべつつ剣士と戦っている。
剣士がラミアの尻尾による攻撃を盾で防ぎつつ、剣での反撃を試みている。隙を見て斥候が短剣を体に向け<投擲>したりしているが、体をくねらすことによってラミアはそれを躱している。
何本目かの短剣を尻尾で受け取ると、そのまま剣士に向け投げた。いきなりの事で剣士は反応が遅れ剣を持っていた方の手に短剣が突き刺さる。
剣を落とし、それをラミアは持ち上げ剣士にふるった。ゆっくりと叩き付けるように盾をガンガンと叩いていたが、徐々にスピードと威力を上げて行っているようだ。
そして盾が弾かれてしまう。
その間も斥候は短剣を投げたり斬りかかろうとしていたが、尻尾に阻まれてしまっている。
盾を失った剣士は、逃げ出そうとしたがすぐに回り込まれる。
そして足を斬りつけられてしまう。
麻痺の切れた俺は斥候の女に駆け寄り、手をとってその場から逃げ出した。
斥候の女は泣きわめいていた、なぜ助けないのかと、無視して逃げ続けた。剣士の叫び声が遠くなるまで。




