ループ・サウィルダ 第17話
「俺の勝ちだなオル。」
「あぁ、やっていいぜアル。」
金髪のヴァンパイアと銀髪のヴァンパイア二人が教会前に胡坐をかいて陣取っていた。
そして、教会の方を向いていたにもかかわらず、こちらに気付き立ち上がりつつこちらを向く銀髪のアルと呼ばれたヴァンパイア。
金髪のオルと呼ばれたヴァンパイアは胡坐をかいたままだ。
「へっへっへ、教会の中から出てくるか、外からくるかかけてたんだ。勝った方が全部もらっていいってことでな。」
聞いてもいないのに説明してくるアル。
「いやー、夜が明けちまったらどうしようかと思ったもんだが、来てくれて助かったよ、でもそこの女2人を置いて男は帰っていいぞ。まずいからな。」
2人?と疑問に思い見るとシアンが消えていた。
「俺は男の血も好きだがな、アルはまだ子供だな。」
「ゲッ、マジかよオル。」
「いいからさっさと片付けろ。」
「へいへい。」
アルは返事とともにアペティめがけて跳んでくる。アペティはフランベルジュを振って追い払う。そのとき頬を掠めたのか頬から火が出る。
「うわぁっ!?」
あわてて教会の屋根の下に逃げるアル。
「なんできえねぇっ!?」
「おちつけアル、さっきお前が言ったようにまだ日は昇っていない。奴らの力だろう、そこまで熱くないだろ?」
「うぇ?おぉ…ほんとだ熱くない。くっそ!なめやがって!」
アペティを睨み付けるアルだが、いまだに頬は燃えている。
その間に陣形を立て直す。インス、ユウキが前衛となり、うしろにアペティとキングそのさらに後ろにレイだ。遊撃かつ、レイの守護は俺がする。
女を狙いたいのだが、アペティには懲りたようでレイめがけて突っ込んで来ようとするアル。ユウキが立ちふさがると、拳を叩き付けてくる。
循環の盾でガードするが、効果は発動せずすごい勢いで後ろに押されるユウキ。ユウキも初めてまともに食らったヴァンパイアの攻撃に驚愕しているようだ。
すかさずインスが代わりに守りに入るが、殴られでもしたら一発で吹き飛ぶだろう。
「<フルスイング>!」
アペティのフルスイングがアルの腹を掠める。今回は燃えずに浅く斬りつけるだけで終わる。
バックステップでアペティの攻撃を躱したあるの顔めがけてレイが矢を放っていた。見事に目に突き刺さる。
「あああああああぁぁぁぁ!!!」
目を抑え叫ぶアル。すかさず狼牙棒で殴りかかる。
顔面にクリーンヒットし、さらにキングが<スラスト>で腹を突き刺す。
剣を抜こうとしたキングの腕にアルがしがみつき、そしてそのまま顔を近づけていき、噛みついた。
「なっ!おい放せ!」
左手で殴るがびくともしていない、狼牙棒で突きを横顔に放ち、なんとか引きはがすことができた。
腹の傷も頬の傷もなくなったアルが笑っていた。
「へへへ、あぶなかったなぁ、でもやっぱ男の血はまずいなぁ。」
ぼやきながら目に刺さった矢を抜く。
ユウキが戻ってきたところで、振出しに戻った。
だが、黒い煙が上がった。オルの方から。
「えっ?オル?」
慌てて振り返るアルの目に映ったのは胡坐をかいたまま煙になっていくオルの姿と、その後ろでシグネメントを持ち佇むシアン。
「なっ、おまっ、オル?えっ?うそだろ?」
慌てふためいた様子でオルの方に向かおうとするアルだが、その前にユウキが立ちふさがり、周りをみんなで囲む。
「どけよお、オルが…。オルがあっ!!!」
力任せに殴ってくるアルの拳をユウキの循環の盾が受け止め、光る。
盾の後ろで構えていた<ダブルスラッシュ>を放ち、それに合わせほかの皆もそれぞれに攻撃をアルに向け仕掛ける。
そしてアペティの剣によって燃えながら黒い煙になっていくアル。
完全に二人が煙となって消えていくのを見届けている間、シアンに攻撃が通った理由を聞いた。最後にアルが攻撃をくらったのはユウキとアペティの剣だけで、ほかの4人の攻撃は弾かれていた。
すると懐から瓶を取り出し。
「聖水を中に入ってもらってきたの、シグネメントを振りかけて心臓を刺したの。」
相変わらず、シアンの見えなくなるスキルはチート級だと思うのだが。
皆で教会の中に入るとそこには大勢の人がいた。だが、大勢とはいっても、この町の人数を考えるとかなり少ないと思う。大勢から一気に視線が殺到し、その中に少なからず含まれている恐怖と憎悪のこもった視線に気圧されてしまう。
神父の格好をしたおじいさんが出てきて、周りに慈愛に満ちた眼差しをむけ、落ち着かせる。
「助けていただいてありがとうございます。盛衰はお役に立てましたでしょうか。」
「はい、ありがとうございます、あとはおそらく城にいる2人だけなんですよね?」
「左様にございます、部外者のあなたたちにお願いすることになって申し訳ありません。」
シアンが応答する。きっと中に侵入したときにも少し話をしたのだろう。
「ですが、城の二人はおそらくお強い。あなたたちに神のご加護を授けましょう、こちらにきてくだされ。」
神父の後をついていく一行。




