シアン・カラーズ 第4話
酒場の裏口からアジトへと入っていく。
厨房は夕方来た時よりも忙しそうだった。
アジトにも結構な人数がいた、相変わらず奥のカウンターに団長ウィライが腰かけている。その顔には最初見たときと同じく胡散臭い笑みがへばりついている。ウィライがこちらを向き声をかけてくる。
「やぁ、お帰りシン、早かったね?」
「―レベルが上がったので、新しいスキルを教えてもらいに。」
「レベルが上がったのか!へぇ、じゃぁ、次は<盗む>を教えるね!」
シンと呼ばれなれない名前で呼ばれ、一瞬反応が遅れたが返事をし、新しいスキルを教えてもらう。
(もちろんシアンも呼ばれ慣れないけど…)
「また見せるから、覚えて今度はこの部屋の誰かのものを盗ってきてね!」
なんて無茶なことを言う。この部屋にいるのはもちろん全員盗賊だ、その盗賊からものを盗れって、そんなの無理じゃ…。
と考えていると、団長が近づいてきた、何も盗られてたまるかと身構える。
「そんな身構えないでよ、教えるためなんだからさあ?」
とおどけたように手を広げて見せる、が、その手には団長から借りていたバゼラードが握られていた。
「…っ!?」
団長との距離は手を伸ばしても届かない2m程あるのに、盗られてしまった。
「これが<盗む>ね、当然だけど、盗った後にこうやって見せびらかしちゃだめだよ?ついでにこれは返してもらうね。」
といいつつカウンターのほうに戻っていく団長。
「じゃぁ、実践、誰かから盗ってきてね。」
いつも以上の笑顔で言われてしまう。
これ無理じゃないか?まず今までのスキルのように習得したという、システムからのメッセージがない。それに勿論だがどうやってとったのか全く分からなかった。
とりあえず周囲を見渡す、基本的には談笑していたり、武器の手入れをしている。中には机に突っ伏して寝ているものもいる。
すると、入口からコック服をきた中年が料理をもって下りてきた。そのままテーブルの一つに料理を置いて帰っていこうとする。
団長は言った、この部屋の誰か、と。
急ぎ足で、だがしっかりと<隠蔽>を使い、コックに近づいていく。だが、何を盗もう、コックは肉付きが良く服装は脂肪に押され突っ張っている。コック帽、コック服、前掛け、ズボン、どれも盗るとすぐ気づいてしまうだろう。考えながら近づいていたので、もう手を伸ばせば届く距離だ、そして出口までは5,6歩といったところだろう。はやくしないと、と焦ってしまう。諦めようかと視線を下げたところで、お尻のポケットにペンが刺さっているのに気が付いた、黒くて遠くからではわからなかった。
盗もうと手を伸ばすが、一瞬このおっさん太ってるし、気づくんじゃ?とおもったがもう出口はすぐそこ、もう、なるようになれとスッとペンを抜き取る。
ドキドキしながらコックの反応をうかがう。コックは気づかなかったのかそのままアジトから出ていき階段を昇っていく。
ふぅ、と一息つくと目の前に【スキル:盗むを習得しました】とシステムメッセージが表示される。
パチパチ…。
「おめでとう!これで君も立派な盗賊だ!」
と悪そうな笑みを浮かべ、団長が拍手を送ってくる。
「ど、どうも。」
うーん、あんまりうれしくないような…。
「改めて、黄昏の盗賊団にようこそ、歓迎するよ、必要な時はよぶから、基本的には自由に行動してくれてかまわないよ、悪いことがばれたときは遠慮なく黄昏の一員だと名乗ってくれたまえ!」
にやにやと笑いながら団長が説明する。
「ビラン!面倒見てやれ。」
「了解でさぁ。」
ビランと呼ばれた団長の近くにいた、背が低く鼻が高い金髪碧眼でそばかすの目立つ男が反応する。
「嬢ちゃんこれからよろしくな!あっしはビラン、わからないことがあったら聞いてくれ。」
「はい、シアンです、よろしくお願いします!」
「おいおい、ここじゃシンだろ?」
へっへっへと笑われながら訂正される。悪い人じゃなさそうだ。いや、盗賊なんだけども。
「す、すいません。」
「いいってことよ、聞きたいこととかはとりあえずなさそうか?」
「はい。」
きょうは疲れたのでとりあえず寝たい。
「そうか、じゃあなにかあったらここにきてくれ。」
と一枚のメモを渡される。
そのまま解散となり、家にかえる。




