シアン・カラーズ 第2話
私はシアン・カラーズ。
このゲームでは、家名を決めて、キャラごとに名前を付けるシステムで、家名は変更できないため、いちいち家名にあった名前を考えるのがめんどくさかったので色なら簡単かなぁ、ってことで決めた名前だ。
シアンはとりあえず青が好きだからつけてみた、でもブルーだと味気ないかな?ちょっと調べてそれっぽい名前にしてみた。
今日、やっとACS(Archives of collapsing stories)にログインすることができた。今までのオンラインVRゲームにはないシステムがいっぱいあると友人にきいて、やってみようと思ったのが4日前、昨日までは、課題などが多くゲームをする時間をあまり取れなかった。
夕方、学校から帰ってきて、すぐにログインした。
とりあえずチュートリアルをクリアし、これからの動きを確認する。
まず、このゲームにはメインストーリーというものがない。
トエスク王国の首都ビギンにあるどこかに、家をランダムで選択され、そこの執事からチュートリアルを受ける。
操作方法を教わると、執事から、「街のどこかに、きっと尊敬できる師がいるので、その方に専門的なことを教わってください。」と言われ、銀貨1枚を渡される。
そこからは街を散策、街行く人々、同じようなプレイヤーや、NPCと話して情報収集するか、本当に片っ端から声をかけて、教鞭いただける師を探さねばならない。
街は中央にお城、西から南に居住区、北から東にかけて商店地区、工業地区がある。
NPCからとりあえず冒険者ギルドに行って、冒険者登録をすれば師匠も斡旋してくれるそうなので、街の東に向かう。
迷子にならないように、建物や、通りの名前を覚えながら教えてもらったギルドへの道を歩いていると、ひったくりがおきた、いや、私ではなく、NPCが、NPCに、だ。
自由なゲームだと思ったが、まさかNPC同士でこんなことが起こるとは思わなかった。
私は何となく追いかけてみることにした。
ただ、ゲーム内で盗んだアイテムとかはどこに行くんだろうな?とか、このひったくりはなんでひったくりしてるんだろうな?とか、気になっただけで、ひったくりなので捕まえなきゃ!みたいな使命感とかはなかったと思う。
普通について行けたことにはびっくりしたけど。
路地裏について、ひったくり犯は周囲に誰もいないことを確認して、酒場の裏口から入っていく。
うーん、私がいたこと気づいてたよね?目あったような気がするし、プレイヤーのことは気にしないのかな?まぁ、いいや、入っちゃえ。
同じドアから中に入っていく。
厨房にでた、いや、入ったか。がちゃがちゃとやかましい、これから夕食の時間なのできっと客がいっぱい来るのだろう。ちらりとコックたちから視線を向けられ、ドキッとしてしまうが、何事もなかったかのように夕食の準備を再開していく。彼らにとって日常茶飯事なのだろう。
日本人脳からすれば、衛生上どうなの?とおもわなくもないが、まぁゲームだし、と割り切って先ほどのひったくり犯の行方を探す。が、見当たらない、すると、客席側に出る入口とは反対の暖簾で仕切られている箇所から、コックでもウェイトレスでもない、チンピラっぽいのが出てきたので、チンピラとすれ違いながらそちらに向かう。
暖簾の奥は階段になっており、降りていくと酒場と同じような場所にがあった、奥にあるカウンターに一人の男が腰かけてこちらを見ている。
その男は、黒髪にウェーブがかかっており、顎くらいで切りそろえられている。鼻は高く口には笑みがへばりついている。
「いらっしゃい?お嬢さん、迷い込んだのかな?」
男に声をかけられた、周りにいた7~8人ほどのチンピラたちはちらちらとこちらを見ている。
「いえ…。」
と返事をする。正直何しに来たんだ?とか、言われたら困るが…。
「そう?じゃぁ、入団希望者かな?僕は黄昏の盗賊団、団長のウィライ・イアラーだ、よろしく。」
「し、シアン・カラーズです、よろしくおねがいします?」
あ、つい反射でなのてつい名乗ってしまったけど、これ盗賊団に入りに来たって思われたよね?と思ってると、目の前に【クエスト:師の教えを受注しました】とウィンドウが出てくる。
「そう、いい名前だね、まず団名をつけよう。」
「えっ?」
「盗賊団として動くときの名前のことだね、外で名前呼ばれちゃ困るでしょ?」
あぁ、確かに悪い事してるときと私生活で名前が違ったほうがいいのか。
「シアンだからシンでいいね、僕はライだから、間違えないようにね?」
「は、はい…。」
「盗賊に必要な知識を教えるね、とりあえず隠れるのに必要な<隠蔽>と、攻撃用のスキル<投擲>を教えるね。」
そういって目の前から忽然と団長が消えた。
「え?」
とおもってると、後ろから肩をたたかれ、びくっとしながら振り向くと、そこには団長がいた。
「これが<隠蔽>ね、なれれば目の前からいきなり消えるように見せることもできる。ま、最初は気配を消して、背後から近づくことができるくらいだけどね。」
肩をたたいたほうの手にはいつの間にか、ナイフが握られていた。
「で、次は<投擲>…ねっ!!」
ナイフの柄のあたりを指で挟み、肩のあたりに構え刃を後ろに倒して、さっきまで座っていたカウンターの奥の壁に向かって投げる。投げた後にはきれいな青色の軌跡が残って、霧散していく。
「おぉ…きれい!」
「ありがとう、これでもうできるね、やってみてくれる?」
「えっ!?」
一度見ただけで覚えて、実践しろとは、なかなか高度なことをおっしゃいますわ、このニコニコマンめ…。
などと心の中で罵倒しようと思っていると、目の前に【スキル:隠蔽を習得しました】【スキル:投擲を習得しました】とウィンドウが出てきた。
なんと物覚えのいい体なのだろうか、一度見ただけで覚えれるらしい。
「い、<隠蔽>…!」
と恐る恐る声に出してみる。すると団長以外が若干薄くなる。
「そうそう、できてるね、<隠蔽>は声に出さなくても発動できるよ。次は<投擲>してみようか。」
はい、と、またどこから出したのかわからないが、団長はナイフをこちらに差し出してくる。
それを受け取り団長のまねをし、柄を指で挟み、肩のあたりに構え刃を後ろに倒す。するとほのかに青く光る。
「<投擲>!」
今度は力強く声を出す。
すると先ほど団長が刺したナイフのすぐそばにトスッと軽い音をたて突き刺さる。
「うん、よしよし、ほかにもいろいろスキルはあるけど、レベルが足りずに覚えれないからね。その二つを使えるように外で練習しておいで。」
ついでに冒険者の登録をしてくるように、街の外の草原にはそう強い魔物はでてこないけど、なるべくスキルを使ってたおせ、此処には基本ひとりでくることなど、いろいろ注意を受け、そのまま外まで送り出された。
【クエスト:師の教えを達成しました!】と目の前にウィンドウが出た。




