ユウキ・ナイト第3話
坑道の中はひんやりとした空気が立ち込めていた。
入ってしばらくするとトロッコがあって、これに乗っていくとセリウさんがフィールさんをトロッコにいれ押し出しはじめた。しばらくすると下り坂が見えてきた。
「よし、おまえさんらも乗るんじゃ!」
言われたようにトロッコに飛び乗る。坂に差し掛かった瞬間、セリウさんも飛び乗り、トロッコが坂を滑っていく。
これ、くだりはいいけど、登りは大変だよなあ。あぁ、でもセリウさんなら軽々とできちゃうのか?
坂には何本かレールが敷かれており、横穴に通じていたり、平行に走っていたりする。ユウキたちを乗せたトロッコはそのまま坂を下っていくが、すぐ平坦な場所に出る。
「こっちじゃ、落盤した箇所の反対側は。」
無事だといいが…。と不安そうにつぶやく。
トロッコから降り歩いていると、上から瓦礫が降ってきたような場所があった。だが、ほかのドワーフの姿はなく、セリウさんを見ると安堵の表情を浮かべていた。
「みんな無事のようじゃ、一旦街に帰ったのかもしれんな。」
「そうですか、よかったですね。」
みんな無事のようだ、怪我とかは多少しているかもしれないが、巻き込まれて、ということはなさそうでよかった。
「じゃぁ、街に向かいましょう。」
そういって、トロッコに向かう。何処からか視線を感じたような気がして、後ろを振り返るが何もない。
「どうした?ユウキ。」
「いや、なんでもないよ、いこう。」
「あぁ、お前さんたち、そっちのトロッコは街にはいかんのじゃ。」
さっきのトロッコの方に行こうとしたら、セリウさんに止められてしまう。
こっちじゃ、と先ほど下ってきた坂を少し上り、横穴の一つに入っていく。
「残念じゃが、基本的にトロッコは持ち帰るからここからは歩きじゃ。」
セリウさんの一言にがっくりしてしまう。やっぱりトロッコは男心をくすぐられるものがあるのだ。ラニアも同じようで気を落としている。それを見てフィールさんが微笑んでいる。
「大丈夫ですよ、街に戻ればいくらでも乗れると思いますよ!」
その言葉に二人して笑顔になる。
そうして歩いて1時間ほどしたところで休憩となった。
「ドワーフの街ってどんなところなんですか?」
「そうじゃのう、槌の音、炉の熱、そして民たちの笑顔が溢れる場所じゃ。」
「やっぱり、鍛冶が盛んなのか?」
「あぁ!そうじゃよ!武器に防具にアクセサリから、包丁や鍋などの日用品まで、儂等にかなう鍛冶師はおらんじゃろう。」
そういって自慢の顎鬚を撫でるセリウさん。だがすぐに暗い表情となる。
「じゃが、落盤事故が起きてしもうた。計算して掘っておるから、誰かの仕業なのかもしれん、考えたくはないがな。」
「いいえ、お父さん!あそこは絶対に大丈夫な場所です。上に通路もありませんし、なにより大地の精霊がいませんでした。」
「大地の精霊?」
分らなかったので聞いてみると、世界には精霊が溢れているそうで、大地や山には大地の精霊、木や草には樹の精霊、風には風の精霊、火には火の精霊、などなど基本どこにでもいるらしい、そして普通は見ることができないのだが、フィールさんにはみえるとのこと。あと、よく妖精と間違えられるそうだが、妖精は精霊が魔力を吸収してしまった姿で、見ることも触ることもできるそうだ。
そして、精霊がいないことなどめったにないそうで、人にできることではないそうだ。
「みんなのことが心配なのはわかりますけど、同じドワーフを疑ってはいけません。」
「そうじゃな、すまんかった、フィール。」
そろそろ行くか、と立ち上がったところで、地面が揺れた気がした。
遠くからずずずっ、と重いものが引きずられるような音が聞こえ、来た方を振り返ると、十字路を巨大な何かが通り過ぎて行った。
「っ!?」
なんだ今のは!?通路のほとんどを覆うような大きさだった。
「魔物は出ないんじゃなかったんですか?」
「わ、儂もしらん、あいつはなんじゃ?」
「と、とにかく急いで街に向かおうぜ!」
セリウさんを先頭にに走り出す。
そこから2時間かけて、途中で体力が切れたフィールさんをラニアと交代でおぶったりしながら、なんとか街につくことができた。
あれから、あの巨大生物には一度も会うことがなかったのは幸いだった。
正直あんなサイズの魔物見たことない。あれがボスなのだろうか?
着いた街は、坑道に化物がいることなど露しれず、すり鉢状にできた街はあちこちの煙突から煙が伸びており、どこからともなく槌の音が聞こえ、まちゆく人達の顔には笑顔が多かった。




