1話 探索開始。そして....
今回から新しく始めていきたいと思います!
「...........」
無言のまま、俺は目を覚ます。しかし目の前には無言ではいられないほどの光景が見える訳で。
「どこだよここ」
横になった状態で周りを見る。
「ここは草原...だな」
しかしそんな事は見れば誰でもわかる訳で。問題は何故ここにいるかなのである。
「よし、寝よう。」
俺は風に揺られている草と花の音を聞きながら、再び目を閉じた。
時は数刻遡る。
「ふぅー....」
沢山の自動車が行き交う大道路の交差点で信号待ちしながら俺は深呼吸をする。
ただいま、散歩中である。俺はたまにする事がない時、こうやって外に散歩に行くのである。
家出じゃないよ?
「にしてもどこ行くかなー...」
冬の冷たい風に吹かれながら俺はそう呟く。
現在の場所は自宅から西に数分歩いた所。現在位置とその周辺を頭の中で地図のように思い浮かべながら俺は行き先を決めることにした。
「よし、あそこの古本屋にでも行くか。何か入荷してるかもしれないしな。」
古本屋まではこのまま真っ直ぐ進んだ所にある。
そう思い、俺は青になった信号を渡り始めようとした時。
──急に視界が歪むのを感じる。
それは収まることもなく頭も痛くなりどんどん侵食していくようにも感じる。
しばらく頭を抱えていたが結局俺は目を開けていられなくなり、目を閉じその場に崩れ落ちる。
「急に....どうなってんだ?」
そう呟きながら未だに歪みを感じながら俺は目を開けられなくなってしまい....
「そうだった!」
遠くなりかけていた意識に無理やり働きかけ、体を起こす。
「ここどこなんだよ...」
風に吹かれながら視界に広がっている風景を見て改めて言う。
「よし。まずは落ち着け俺。ここはまず状況の把握から始めよう。.....ではまず、ここはどこだ?」
自分に聞きながら考える。
「とりあえず周りをもう一度よく見て考えてみよう。」
俺はぐるりと一回転しながら辺りを見渡す。
「地形は丘のようになっていて辺り一面草原を囲むように森があると...何にもねぇな!」
せめて何がデカイ街とかあると思ったんだけど...
「あ、そうだスマホ!」
困ったらまずはスマホ。
そう思いながらいつもポケットに入れているスマートフォンを取り出す。
現在の時間、14時13分。家を出たのは14時前なのでそれ程時間は経っていない。
電波は圏外。
「使えねぇ...」
ため息をつきながらスマートフォンを再びポケットの中へと入れる。
「にしても困ったな...そもそもここ日本じゃなさそうだし。.....となると帰れねぇじゃねえか!」
そう叫んだ後、再び考え出し、一つ思い付く。
「よし、探索でもしてみるか。......まずはあの丘の上の方に...ん?」
はっきりとは見えないが、丘の上に何かがある事を発見する。
俺は丘の上の方へと登りつつ、それを少しずつ確認していく。
そして、ようやくそれが何なのかを知る。
「...あれは家じゃねえか!」
それを確認した瞬間、俺は駆け足で丘の上へと向かっていく。
「お...家がいくつか見えてきたな」
2つ、3つへと見えてくる家の数は増えてくる。おそらく丘の上は村になっているのであろう。
「つ、着いた...」
数百メートルも走っていないと言われたらそこで終わりなのだが...
丘の上に着くと、そこにはたくさんの民家や少し整備された道などがあり...つまり俺が予想していた通り村だった。
「にしても...これは...」
痛い。とても痛い。.....村にいる人達の視線が。
おそらくこの村の人だと思うが、その人たちの視線が凄い。
そのまま村人達は時間が止まったかのように俺を見ている。
俺を誰だと思ってるんだ!
しばらくして、村人達の時間が動き出した事を示すように1人の女性が叫ぶ。
「誰かいるわよぉぉぉ!!!」
その1人の女性に続き、周りにいる村人達も騒ぎだす。
く、くそ...止めるにもこんな人数で騒がれたらどうしようもねぇ...
しばらく俺がおどおどしてる間に、1人の杖を持ち白髪を生やしながら腰を曲げた老爺が村人の間に入りながら、
「何事じゃ?何かあったのかね」
そう老爺が問うと、1人の男の若い村人が答える。
「そ、村長...!実はあそこの見た事ない怪しい奴が村に近づいているんだ!」
そう言って俺の方を指さしてくる。
老爺は俺の方を向くと、再び村人達の方を向いて、
「....ならばわしが何とかしてやろう。」
「危険だ村長!あいつ怪しい服装してるしもしかしたら魔族かもしれないぞ!」
....怪しい服装だと!?これは某有名なあの服屋で買ったのに何と言う言われようだ!.....いや、よく考えてみると村人達はみんな昔の農民みたいな格好をしているし怪しいと言われても仕方がないのかも...いやでも魔族って...よくわからないけど人間じゃないことぐらいはわかる。
そう伝えようと俺が言おうとする前に、村長が言う。
「いや、それはない....。魔族はもっと特徴的な姿をしておるしあのような奇妙な服装はしておらん」
そう言いながら村長は俺に近づいていき、やがて俺の前へと立つ。
そして、さらに言う。
「もしかしたらこの方が救世主なのかもしれん」
「.....え?」
俺の第一声がそんな間抜けな声。
それとは対照的に村人はドッとざわめきだす。
「まさか...あの方が言っていた救世主!?」
そのような声が次々に言い出すのに村長はそれを止めるように、
「....おそらくそうじゃ。この方を案内する。少しついてきてくだされ」
俺に向かってそう言うと、村長が歩き出した。
大人しく村長についていくその中。俺の頭の中では───
救世主!?何か知らない所にきたらそうなったんだけど!
───完全に興奮していた。
しばらく我を忘れながら歩いていると、村長に引き戻される。
「着きましたぞ。さあ、入ってくだされ」
そう言われ、案内された場所は家だった。
村の端にあるこの家は煙突のように円柱で縦に長い形をしていて、少し変わっている。
中に入ると、本が積んである机、その横に本棚、床にはカーペットがある部屋があった。
どうやら地下や上の階もあるらしく、緩やかに家の形に沿って渦を巻くように上下に階段が伸びている。
「....では少し話でもするとしようかな」
村長はカーペットに座る。それにつられ、俺もカーペットに座る。
「わしの名前はドグじゃ。よろしく頼む」
「俺の名前は北松 昇です。よ、よろしくお願いします。」
俺がそう言うと村長は笑いながら答える。
「ほっほ...別に敬語じゃなくてよいぞ。さて...何か聞きたいことはないかの?」
お、これは俺が質問してもいいと言うことか。
村長に敬語じゃなくても良いと言われたので普段の口調で質問する。
「じゃあ早速質問させてもらうけど...ここはどこだ?」
そう聞くと村長はどこか別の方を向きながら答える。
「そうじゃのう....ここは唯一の人間の村といっても良いかもしれんな。」
そこまで言ったところで俺が驚いているのに気づいたのか、
「ほっほ、そんなにおかしいかの?お主は知らんかもしれんが村の周りのある森には妖精やら魔獣やらが住み着いておるんじゃ。....つまりここがいつ襲われてもおかしくないんじゃ...」
「それで知らない俺がきた時に救世主だと思ったのか...?」
そうなると大体筋が通るような気がする。
「まあ...そうじゃのう。実はお主がくる少し前までにな....ここにある人が住んでおったんじゃ」
ある人...?と俺が問うと村長は、
「そうじゃ。村のみんなは魔女と呼んでおったが...その方が死ぬ間際にこう言ったんじゃ。『しばらくするとこの村に救世主が現れるだろう....』とな。そしてお主が来たわけじゃ。」
そう言い終えると村長は立ち上がる。
そしてドアの方へ、俺を見ながら言った。
「もしもお主に救世主と言う自覚がなくてもわしは救世主だと思っておるよ」
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