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赤丸

 飽きた。

 バラバラの新聞記事。万札に見立てられた紙片を紙面に再構築する作業に、早々に飽きてしまった。

 無理だぜよ、こんなの……。いつの古新聞か、わかったものじゃない。

 しかもこの新聞紙の束、紙幣サイズに裁断された後でトランプよろしくシャッフルされている可能性が高い。

 継ぎ()ぎして1枚の紙面に戻すのは無理だなと、早々にあきらめてしまった。早っ。

 ……いかん、いかん。これはオレの生命を賭けた戦いなのだ。敗北は死を意味する。そんな簡単にあきらめて、どうする。

 とはいえ、だ。

 もっと、こうスマートっちゅうか、いい感じにぱぱっと調べる方法はないものか。

 そう例えば(しるし)である。受験勉強のマーキングよろしく大事なところに線が引かれていたり、丸がついていたりすると助かる。できれば赤ペンで!


 そんなスケベ心丸出しで、とりあえず4束2000枚すべてに目を通すことにした。

 すでに1束は帯を解いてしまった。無謀にも新聞記事のジグソーパズルをしようとした結果である。それは無理だとわかったので、せめて残りの3束は帯を解くまいと思った。

 帯をしたままの状態でぱらぱらマンガよろしく、ぱらぱらぱらーっと新聞紙の断片を捲ってゆく。

 するとまあ、おどろくべき事実が!

 おなじだった。どの束も、おなじ記事の断片がおなじ順番で重なっている。

 思わずゾッとした。これはおそろしく手が込んでいる。どの束も中身は本物の新聞紙だ、コピーじゃない。

 1束500枚だぞ、どんだけ手がかかってんだよ。

 ……まあまあ、ちょっと引いちゃったけど、おなじパターンとわかってちょっと安心した。

 2000枚調べるところが、500枚で済むわけだからね。


 そんなわけで、最初に帯を解いてしまった500枚を入念に調べることにした。

 重ねてあった順番はとりあえず無視だ。ほかの3束は帯がしてあるので、オリジナルの順番は保たれている。

 すると、まあ。本日2回目のするとまあ、ですよ。

 あった。見つけた。500枚中1枚だけ、記事の断片に赤いボールペンで丸がしてあるじゃないの!

 急いでほかの3束(帯つき)も調べた。すると、やはりおなじ箇所に赤丸がされていた。

 気持ちがわるかった。いったい誰がこんな手の込んだことをするんだ、と。

 だが一方で、妙に納得できる部分もあった。これはオレだ。記憶を失うまえのオレの仕業なのだと、そう思えた。

 ともあれ、これは重要なヒントである。これ以上ないくらい重要な。

 赤丸がついている箇所には電話番号が記載されていた。新聞に番号を載っけているってことは、たぶん広告だろう。


【多々木探偵事務所】04XX-XX-XXXX


 広告主は探偵事務所らしかった。まさに、お(あつら)え向きとも言える。

 できればそのタダキだかタタキだかっていう探偵さんに、オレの帰るべき時代と場所をおしえてほしかった。

 いや、すでにオレはそこに依頼済みなのかもしれない……。赤丸をつけたのが記憶を失うまえのオレだとしたら、その可能性は十分にある。

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