8話 決意
十一歳になった。
私は今日――というか少し前から考えていたことなのだが――一つの決意をした。
それは、私の隠していることを、みんなに話すと言うことだ。
話す理由は二つある。
一つ目は、まずこのまま隠しておくと、いろいろと不都合なことが起こる、いやもう起こっているのだが······からだ。
二つ目は、私がこのことを隠すのが辛いからだ。ステータスから見ても、私は人一倍精神力が強いと自負しているが、それでもこのことをまで持っていけるほど強い訳ではない。
それなら、先に溜め込んで爆発する前に話しておこうということだ。
当然、このことを話すのは自分にとって大切な、信頼できる人に限るが。
夕食の時間になった。
私は話を切り出す。とても緊張する。
「父さん、母さん、メイ、ちょっと大事な話があるんだけどいいかな?」
「何だ?いいぞ」
「わざわざレンがそういう事を言うなんて珍しいですね。分かりました」
「私も聞くよー」
みんな聞いてくれるらしい。単刀直入に言おう。
「えっと、僕はみんなに隠していることがあるんだ」
「それはあの異じょ―――いや不思議なステータスとも関係がある事ですか?」
「異常でいいよ。他の人のと比べてもおかしいのは承知しているからね。
うん、そうだよ。あのステータスと関係ある事。実は、僕······前世の記憶があるんだ」
「前世、ですか?」
父は全く理解していない顔をしている。まああまり頭のできはよろしく無いようだし、仕方ないか。後でゆっくり噛み砕いて説明しよう。
母とメイはけっこう頭のできがいいので私が言ったことを理解はしているようだな。信じられないって顔に書いてある。私も前世でそんな事を言われていても信じられなかっただろうな。
「うん。前世では僕はこの国から遠く離れている日本っていう国で生まれて、そこで育ったんだ。そこで、武将として他の武将と戦っていたんだ」
「ニホン、ですか。聞いた事が無いですね。確かに荒唐無稽な話ですぐには信じられませんが、そういうことだったらあの異常なステータスにも納得がいきますね」
残念ながらみんな日本を知らないのか。まあ私もここがどこかわからないのだから同じだろう。
もし知っていたら、行きたかったのだが。兼続も気になるし。
「お兄ちゃん、この国と違うところもあるの?」
「そりゃあたくさんあるよ。例えば主食はパンじゃなくて米っていう粒を食べていたんだ」
「その少年っぽいしゃべり方は?小さいころに死んだわけじゃないんでしょ」
「結局話すことにしたけど、こんな事を言ったら、信じてくれないどころか気味悪がられる思って、わからないように普通の少年っぽいしゃべり方をしてたんだよ」
そう私が言うと、母が私を強く抱きしめた。
「大丈夫ですよ。私達はレンの事が大好きですから。気味悪がったりなんてしませんよ。話してくれてありがとうございます」
「よく話が分からないが、俺も大好きだぞ。だって俺達の子供だからな」
「私もお兄ちゃんの事大好きだよ!」
「みんな···ありがとう。少し心が軽くなったよ」
「それはよかったな」
「これくらいで喜んでもらえるのなら、何度でも」
「今度お兄ちゃんが生まれて、育った国の話をしてね」
最初はみんなが異常な私を受け入れてくれるかどうか心配だったが、それは杞憂だったようだ。
今回の件で、私は家族から愛されているのだなぁ、としみじみ思った。
これからも家族とは仲良くしていきたいものだ。
これ以後、私は口調をもとに戻した。