7話 外出
十歳になった。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
この会話から分かるように私は今日家の外に出る。ちなみに私が今生で外に出るのは初めてだ。
外に出る前に両親から聞いた話によると、この国は治安が悪く、外に出ると王都であるここでも強姦や窃盗などは日常茶飯事だ。
そのため、十歳になるまでは外に出さなかったのだとか。
今の私のステータスはこんな感じだ。
name レン
sex male
job 無職
LP 7/7
MP 6/6
STR 7
VIT 6
INT 18
MEN 51
AGI 5
LUK 30
skill 刀術 槍術 馬術 神の気まぐれ 指揮 生活魔法
ステータスが全体的に大きく伸びている。最近分かったことだが本の値が高ければ高いほど上がりにくいらしい。それでもINTがそこそこ伸びているのはメイに付き合ってパズルをしているからだろう。
あと、skillに生活魔法が増えているがこれは母から教えてもらった。母はこれがあるかないかで普段の生活が相当変わると言っていたが覚えてみて、どういうことなのかわかった。特に母には有用だろう。
この魔法が一番使えるのは家事だ。料理で水を沸かしたり肉を焼いたりするのはわざわざ火を頑張って点ける必要がなく、洗濯も板を使って擦る必要もなく、乾燥も速攻で出来る。
今日行くところは服屋だ。今までは母がだいたいサイズを合わせて適当なのを買って来てくれていたが、そろそろ大きくなってきたので、自分で選んだほうが良いだろうとの両親の心遣いから行くことになった。
今日は父と二人で行っている。母とメイは何かあるといけないので家で留守番だ。
「着いたぞ、レン」
「へぇ~ここが」
連れて来られたのは少し古くなっている木で出来た店だ。
大きさは私の家の二~三倍くらいか。
「入るぞ」
「うん」
中に入ってみると、狭い店内にたくさんの服が所狭しと置かれてあった。人は店番をしている人が一人いるだけのようだ。
「いらっしゃい」
「おう、きたぞ」
「こんにちは、おじさん」
「おお、久しぶりだなリオウ。元気にしてたか?」
「ああ。レン、俺はここでこのおじさんと話しているからどれがいいかみておいで」
「わかった」
父は店番をしている男の人と知り合いのようだ。
「ああキミ、キミ。子どもの服はそっちだよ」
「ありがとう、優しいおじさん」
優しいおじさんに場所を教えてもらった私は服を選んだ。
この真っ白な生地に龍をかたどったTシャツいいな。これにしよう。
「お父さん、決まったよ」
「お、決まったか」
「うん、これと、これにする」
「なかなか地味なのを選ぶな······」
「そう?」
そう言って私が持ってきたのはさっき選んだTシャツと純白のピーコートと青いジーンズだ。
「オーケイ、分かった、だが俺にはマラから預かった予算というものがあるんだ。えーと今は550セイント持ってる。レン、計算してくれないか?」
「分かった」
「子どもに計算さしてんのかよ、情けない」
「いいんだよ、レンのほうがはやいんだから」
「本当に情けないな!親として!」
ガックリ項垂れるおじさんを横目で見ながら計算していく。
えっと120セイントと255セイントと150セイントを合わせて······525セイントか。買えるな。
「大丈夫だよ、お父さん」
「え?もう計算したのか?俺はINT13なんだけど俺よりはやいぞ」
「まあINTが同じでも細かい内訳は変わるからな。そういうこともあるんじゃないか?」
父がフォローしてくれた。この流れに乗らなくては!
「う~ん、納得し難いが···そういうこともあるのか···?」
「うん、そうだよ!僕は計算が大得意なんだよ」
私は自信満々で言った。だが、もちろん嘘だ。だが、こう言わないと納得しないだろう。
「うーん······この子もそう言ってるし、そうなのかな」
よし!信じた!じゃあもう馬鹿な父がボロを出す前に買ってさっさと帰ろう。
「じゃあこれ」
「おう、ありがとう。また来てくれ」
「うん。またくるよ、おじさん」
「じゃあなカイドゥー」
ふむ、このおじさんの名前はカイドゥーというのか。覚えておこう。
そう思いながら私は店を出た。道にも人はほとんどいなかった。