6話 日常
七歳になった。
メイはまだ四歳だ。普段は私の後ろをとてとてと付いてくる。
なんとも愛くるしい。
そういえば、この国では学校は存在しているものの、学校に通うことが出来るのは貴族や王族、大商人などの金を持っている人達だけだ。
平民の中ではそこそこ裕福なほうの私達だが、学校に通うには全然金が足りない。
具体的にいくらくらい必要になるかというと、500000セイント(約500万円)が入学に必要な金で、さらに毎月100000セイント(約100万円)ほどいるらしい。
それを三年間。要するに卒業までに4100000セイント(約4100万円)いるということだ。それに課外活動や必要な筆記具などを合わせるとだいたい6000000セイント(約6000万円)いるとか。
ちなみに父の月給は40000セイント(約40万円)だ。
そして、学校に通い始めることが出来るのは七歳~十五歳までの子供だ。通う期間は三年間らしい。
私も学校に行きたい。だが、両親に迷惑をかけるわけにはいかないので我慢しよう。
なぜ、私がここまで詳しいのかというと、国立ユートピア学校という学校のパンフレットを取りに行ったからだ。ちなみにユートピアというのはこの都市の名前だ。
「ねえねえ、お兄ちゃん、これ分かる?」
少しぼーっとしていたようだ。パズルを解いていた手が止まっている。
メイはパズルが好きらしく、「何する?」と聞いたら十中八九「パズル!」と答える。他は積木をしたり本を読んだりしている。
あと、三歳と半年ぐらいまではパパ、ママ、にいたまと言っていたのだが、今ではお父さん、お母さん、お兄ちゃんと呼んでいる。
「ここはこうして、こうすれば解けるよ」
私の知力が高いことはもう知られているので、少しくらい難しいパズルを解いても何も言われない。むしろメイに頼られるくらいだ。
メイもよくパズルをやっているせいか、もうこの年で知力が6になっている。すごい。どんどん伸びている。まるで竹のような伸びっぷりだ。
「さすがお兄ちゃん。でも次は私一人で解けるように頑張ってみる」
「分かった。頑張れ、メイ」
「ご飯できましたよー」
台所の方から母の声が聞こえてくる。
「はーい、すぐ行く」
そう言って、私達は食事が並べられている机に向かった。
今日の夕食は見たところハンバーグのようだ。
「やったー!ハンバーグだー」
ハンバーグが好きなメイは満面の笑みで並べられている食事を見る。
「メイ、ちゃんと手を洗うんですよ」
「はーい」
そう言ってメイは手を洗いに洗面所へ向かった。私もそれに続く。
全員が食卓に着くと、みんなで手を合わせて、同時に言った。
「「「「いただきます」」」」
こうして一日は過ぎてゆく。
1セイント=約10円です。