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Bloody War Cry ~吸血鬼の王に弱点はほぼない~  作者: イーリス
プロローグ
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プロローグ 1

『小説家になろう』では初めてです。

よろしくお願いします。


プロローグはふんわり軽めです。

 闇の世界に雷鳴が轟き、大きな数十枚ものガラス窓に豪雨が激しく当たる音が、王の間につんざくように響いた。王の間はとにかく広く、明かりが灯っていればとても豪華絢爛な様を呈していたに違いない。しかし、今は闇が支配し、まるで時間が止まっているようだ。


 そこには王都に配属されている精鋭九部隊、総勢二百人程にも及ぶ軍勢が九種族を縦に九列、整列させ、本来居るべきである者を欠いた玉座を皆、一様に見つめていた。身動きこそ無いものの、それぞれの顔には今か今か、いやもうダメかもしれないといった期待と不安が入り混じったような顔をしていた。


 今日は予言の日。深夜2時を告げる大きな古時計の鐘の音がどこからか聞こえてくる。そして、一際大きな雷が落ちた時にそれは起こった。


 光の瞬きと同時に玉座の前に突然転移の魔方陣が浮き上がり、今までじっとしていた軍勢にどよめきが起こった。



「お、おい! 見ろよあれ!」


「棺……棺だ!」


「我らが王が戻ってきて下さったんだ!」



 魔方陣から現れたそれは、この世の者を全て飲み込んでしまいそうなほど漆黒で並々ならぬ存在感を放ち、かつ気品溢れる細かい意匠が施された()だった。


 すると今まで暗かった王の間に明かりが灯される。まるでこの王城が主の存在を久々に感じ、帰還を祝して出迎えるように、天上から吊り下げられたシャンデリアに並ぶ数百本の蝋燭に、一斉に火が点いた。



「皆の者、静かにしろ!! 今、我らが確かめる!!」



 歓喜に沸く兵士達を固い言葉で(いさ)めたのは、腰の辺りからするりと延びるトカゲのような黒い鱗と赤い棘の尻尾を持つ長身の少女。


 その少女を含めた十人(・・)の少女達は慎重にその棺に近づき、棺の周りを囲うようにして位置についた。



「わっちの予言が当たったのか確かめさせてもらわんとの。ちゃんと吸血鬼の“グロワール”じゃといいんじゃが」



 わっち言葉の彼女はやや緑がかった半透明の四枚羽を背中にした幼女であり、とてもその姿に似つかわしくない言葉を喋り、しかも予言を行ったのは自分だと言う。


 棺の周りに並んでいたうちの一人が棺に近づいていく。



「……私が棺を開けますので、皆さんは少しお下がりください」



 黒髪が肩にかかるほどのくノ一風の別の少女が棺に近づいてしゃがみ込み、棺の蓋に手を掛けようとしたその時。


 棺の蓋がギギギィという重い音を立てて、顔半分ほど持ち上がった。くノ一風の少女の目に映ったのは赤い二つの目玉と紅黒い髪をした5歳ほどの少年の顔であった。



「うわっ眩し! ん? なんだ、箱の中に入れられてたのか。……あ」



 少年は眼前に広がる光景を眼にして、口を開けたまま固まった。



 なんだこの大勢の人は!? もうあれだよ! 視線が痛い!! ……ん? 尻尾? 羽? ……っていうか目の前に超絶美少女……なんだ夢か。



 少年、もとい紅威(あかい) (じん)は現代日本にはありえない、あまりにも現実離れした出来事に驚いたのも束の間、これは夢だと判断した。



 夢ならば贅沢に二度寝しよう。



「この魔力は!? ……間違いないわ、これは吸血鬼の“グロワール”! 陛下……ジオノール陛下、今まで何をされていたのですか! 我ら吸血鬼の長たるあなたが突然いなくなるというのはあまりにも無責任……あ! ちょっ、待ちなさい!」



 そっと棺の蓋は閉じられた、もちろん仁の手によって。



「……グレイア様、彼はジオノール陛下ではないと思います。5歳程の少年でした」



 目の前で仁の顔を見ていたくノ一風の黒髪少女は、棺に向かって叫んでいる紅いロングの髪をした年上の吸血鬼に言った。



「待ちなさいと言ってるじゃ……!! え?」



 グレイアと呼ばれた少女は何を言っているのかわからないと、くノ一風の少女の方を振り返った。しかし、それに応えたのは四枚羽の幼女と黒い尻尾の長身の少女。



「そうじゃの。じゃがわっちの予言は当たっておるぞ? 吸血鬼の“グロワール”なのは間違いないからの」


「我も此奴から遥かに強い吸血鬼の魔力を感じた、ジオノールにとてもよく似ているが……違うな」


「言われてみれば確かに……なにか、別の魔力も少し感じたような」



 すると一連の流れを周りで見ていた他の六人の少女達が口を開いた。



「それにしても今の子、ちょっと可愛かったにゃー!」



 灰色の猫耳の少女は棺が少し開いたときに背が低いことから、覗き込んで仁の顔を見ることができたようだ。


 その横から反応したのは、棺の裏側にいて仁の顔を見ることのできなかった、白い和服に割烹着を身に着けた少女。



「あら、そうなの? どんな子かしらぁ私も見てみたいわね。あ、そうだ好きな料理は何かしら。それもちゃんと聞いてレシピを考えなきゃね!」



 割烹着の少女の横にいた茶色い犬耳少女は、なにやら空気に微かに残る匂いを嗅いでいた。



「クンクン、本官も裏側にいたので姿を確認することはできませんでしたが、匂いは別人だということはわかりました! 一体この少年は何者なのでしょう」



 犬耳少女は頬杖をついて首を傾げ、眉間に皺を寄せて考え込んでいると、犬耳少女の視界の隅に動きがあった。口元に不吉な笑みを浮かべながら棺に近づいていく、一人の怪しい少女がそこにいた。



「とりあえず、この棺を開けてその少年と話してみましょう。恥ずかしがり屋さんはお外へ出てきなさい? フフッ」



 怪しい少女にもトカゲのような尻尾が生えているが、色は黒ではなく、蒼い色をしていた。両手をわしゃわしゃさせ、じわりじわりと棺に近づく



「えぇッ! なんでみんなそんなに簡単に開けようとするの? 見た目は子供でもまだどんな子かわからないんだよ!?」



 こちらも怪しい少女を見ていた白い兎耳の少女が、棺を開けようとする怪しい少女の腰に後ろから手を回し、悪戯好きの友人をなんとか止めようと必死に踏ん張っていた。


 そこに吊り目の赤いツインテールの少女が、それでもアンタ達本当に種族長である“グロワール”持ちなんでしょうねぇ……と呆れるように呟いた。彼女はついに痺れを切らし、誰もが見落としている重大な点を突く。



「ハァ……アンタ達ねぇ、まだ気付かないの? “グロワール”は一種族に一人(・・)のみが顕現する力なのよ? つまり、もしそのチビッ子が本物(・・)なら……ジオノール陛下はもうこの世にいないってことになるじゃない」


『あっ』



 九人の声が重なった。


 しかし、ずっと後ろで待機している兵士達にはこれまでの会話は聞こえておらず、え? 何? 今どうなってるの? というひそひそ話が始まっていた。


 このとき、紅威 仁は既に二度寝の最中。

 体が小さくなっていることにも、仁はまだ気が付いていない。

  彼が今、どのような状況に置かれているのか知ることとなるのは、嵐が過ぎ去ったあとのことになる。それはちょうど太陽が昇り、小鳥がさえずる翌朝のことだった。




キャラは後々……

ここでは表現されたパーツ毎に画面がアップされているイメージです。

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