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第2章ー7

 旅順要塞防御のために必要な火力、大砲が不足しているという現状の解決策として、旅順守備隊が目を付けたのが、旅順艦隊の艦船に搭載されている火砲だった。

 旅順守備隊の要請を受けて、旅順艦隊内部で検討した結果、この要請に旅順艦隊は協力することにした。

 実際、クリミア戦争の際にも艦船に搭載されていた火砲をセヴァストポリ要塞防衛のために転用する等、露海軍ではこれまでにも行ってきたことだった。

 それに、補給が途絶している旅順港を脱出してウラジオストックに旅順艦隊を回航すること自体が無駄という諦念が、臨時司令長官となっているウィトゲフト提督以下の旅順艦隊司令部の多くに流れていた。


 日露開戦後、旅順艦隊は速やかに出撃して、日本艦隊と雌雄を決するはずだった。

 しかし、開戦劈頭に日本海軍が行った旅順港夜襲作戦により、戦艦2隻、防護巡洋艦1隻が損傷したことから、それを修理した後で、再出撃することになった。


 だが、旅順には十分な修理設備が無かったことから、修理作業は遅々として進まず、その間に繰り返された日本海軍の夜襲や機雷封鎖、閉塞作戦等々により、マカロフ提督が戦死して、戦艦ペトロパブロフスクが沈没する等、旅順艦隊には明るい情報が無かった。

(実は、その間に日本側も、八島、初瀬と2隻の戦艦を失っているのだが、旅順艦隊司令部はその情報を完全には把握していなかった)


 気が付けば、陸上からの鉄道による補給は日本軍に切断され、海上は日本海軍に封鎖されることにより、旅順への補給は、ほぼ途絶していた。

 それに旅順港内に艦隊が引き籠ったことにより、水兵たちの間に明らかな士気の低下が起きていた。

 更に長い間、港内に引き籠ったことにより、ろくな訓練が行えず、艦隊全体の練度が低下しているという懸念もあった。


 このような状況の中で、露本国やアレクセーエフ総督からは、旅順艦隊をウラジオストックに脱出させ、ウラジオストックを新たな艦隊根拠地として旅順艦隊は行動するようにとの指示が出た。

 これに対して、旅順艦隊司令部は意見具申という形でその指示に反対した。

 旅順を新たな艦隊根拠地として重視したことから、ウラジオストックは皮肉にもずっとなおざりにされてしまっていた。

 旅順の修理設備も不十分だったが、ウラジオストックの修理設備はもっと不十分なままだった。


 こうした中で、旅順艦隊が血路を切り開いて、ウラジオストックに何とかたどり着いたとしても、脱出途中で損傷を受けた軍艦はほぼ修理不能でそのまま放置される懸念が大きかった。

 港湾設備も不十分で、海上からの補給は日本海軍によって切断され、陸路、シベリア鉄道による補給は陸軍が最優先されている以上、奇跡的に無傷でウラジオストックにたどり着けた軍艦がいても、石炭の補給を十分に受けて、積極的な行動が可能なのか、というと旅順艦隊司令部は疑問視する声が強かった。


 そして、現状で出撃した場合の図上演習を旅順艦隊司令部で何度か行ったが、旅順艦隊は必ず敗北していた。

 こういった現状から、旅順艦隊司令部は、旅順守備隊の要請を受け入れることにしたのである。

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