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第2章ー3

「海兵隊は急襲案自体にも反対ということか」

 乃木希典大将第3軍司令官が確認するかのように口をはさんだ。

「急襲案自体にも海兵隊は反対です」

 林忠崇中将海兵師団長は明確に述べた。


「その理由は?」

 乃木大将は尋ねた。

「まず砲弾が全く足りないことです。私がフランスに留学した際に要塞攻撃に際しては攻城砲1門あたり1000発は準備しておく必要があると教育されました。しかし、現在1門当たり400発程しか砲弾は確保できる目途がたっていません。それに旅順要塞で最も固い永久堡塁は、今、本土から急送している28センチ榴弾砲で直撃弾を与えても破壊は困難と海兵隊は見積もっています。その堡塁に機関銃を据え付けられて乱射されたら、南山の悪夢の拡大再生産になりますよ」

 林中将は言った。


「では、どうしろというのか」

 とうとう堪忍袋の緒を切った伊地知幸介中将第3軍参謀長が司会の立場を放棄して発言した。

 他の同席している陸軍の指揮官も、林中将に対して非難の目を向けている。


「古典的な伝統の戦法でやるしかありません。日本では、攻城戦に際して金堀衆を活用して城を崩す戦法がありました。欧州でも工兵を活用して、要塞を崩すのは古来から行われてきた戦法です。その戦法で旅順要塞を攻め崩すのです」

 林中将は発言した。

「しかし、その戦法では時間がかかるぞ」

 乃木大将が言った。

「下手をすると年内一杯、旅順要塞陥落まで時間がかかるかもしれん」


「構いません」

 林中将は言った。

「何だと」

 乃木大将はさすがに目を剥いてしまった。

「大本営からは一刻も早く旅順要塞を落とせと厳命されておるのだぞ」


「大方、連合艦隊司令部が騒いでいるのでしょう。それで急かされた大本営がこちらに圧力を掛けてきているのです」

 林中将は言った。


「バルチック艦隊の来航はどう考えても来春です。最新鋭のボロジノ級戦艦4隻を揃い踏みさせないとバルチック艦隊は連合艦隊に対して劣勢になります。ですがボロジノ級4隻が出航可能になったという情報は未だに入っていません。そして、最低限の訓練を行う必要もある。10月にならないとバルチック艦隊は出航しないでしょう。そして、世界の海の覇者は同盟国の英国です。英国がバルチック艦隊の来航をとことん妨害してくれます。ま、半年近くはかかるでしょうな。そして、ウラジオストックは完全な不凍港ではありません。冬の間は流氷で半分閉ざされます。4月半ば以降にならないと流氷は消えません。今は砕氷船がありますから、ある程度の出入港が冬でも可能ですが、冷静に考えれば、最新鋭戦艦を流氷の海に突っ込ませたがる海軍軍人はいません」

 林中将は一旦、そこで言葉を切った。


「ですから、年内一杯で旅順要塞を落とせばよいのです。そして、年内に旅順を落とせれば春の陸軍の決戦に我々は間に合います。そして、仮に損傷した連合艦隊の艦船があっても3月もあれば修繕できます」

 林中将の理路整然とした説明に乃木大将以下の陸軍の面々は沈黙した。

 陸軍と海兵隊の会議の続きです。

 次で終わらせます。

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