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第2章ー2

 第3軍司令部で隷下にある各師団の師団長と参謀長を集めての会議が開かれることになった。

 議題は主に2つだった。

 1つ目は旅順要塞の主な攻撃はどこから行うべきか、ということ。

 2つ目は攻撃方法をどうすべきかということだった。


 伊地知幸介第3軍参謀長が会議の司会を務めることになった。

「参謀本部からは、旅順要塞の攻略方法について、旅順要塞の西側から急襲を掛けてはどうか、との提案が来ております」

 伊地知参謀長が発言した。


「誰がそんなことを言っているのだ」

 その言葉を聞いて、海兵師団長を務める林忠崇中将は最初から喧嘩腰にならざるを得なくなった。

 現地を見てもいない参謀本部の誰が言いだしたのだ。

「長岡外史参謀次長が主に言っているようです」

 伊地知参謀長が言った。


「大方、その背後には山県参謀総長がいるのだろう。戦下手が。現地を実際に見たうえでそんなことは言え、と打電したらどうか」

 陸軍の出席者の多くが、陸軍の大御所ともいえる山県参謀総長を誹謗していると取られかねない林中将の発言を聞いて顔色を変えたが、林中将は平然としたままだった。


 山県参謀総長については、軍政家として超一流として尊敬しているが、実際の作戦家としては落第の点数を林中将は付けている。

 西南戦争での山県元帥の拙劣な作戦指導で土方歳三提督や古屋佐久左衛門提督らを失い、日清戦争でも海城攻防戦等で無理を強いられた恨みを海兵隊の首脳部の多くが覚えており、林中将と似たような感情を海兵隊首脳部の大部分が抱いている。

 林中将と共に会議に出席している海兵師団参謀長の内山小二郎少将も林中将と思いを共有しており、林中将に同感の表情を浮かべている。


「旅順要塞を攻撃するのなら、東北から攻撃するのが最善だ。海軍軍令部第3局において、旅順要塞に対する攻撃方法を何度となく会議を開いて検討したが、旅順要塞の東北に攻撃軍の主力を展開して、望台に対する攻撃を行い、望台を陥落させることで、旅順要塞の制高点を確保して、旅順要塞の防御線を崩壊させる。そして、旅順要塞を陥落する。この攻撃方法が最善であると、海兵隊は主張する」

 林中将は断言した。


「しかし、西側から急襲した方が地形的には平坦であり、旅順要塞陥落の公算も高いと考えますが」

 陸軍の佐藤鋼次郎中佐が介入した。

「一見するとな。だが、旅順要塞の西側まで攻撃部隊をどうやって展開して、かつ、補給物資をどう確保するのか?西側から攻撃するということは、攻撃部隊の補給線が切断される危険が生じる等、攻撃側の問題が多すぎる」

 林中将は反論した。


「それに、地形が平坦であるということは、それだけ敵の露軍も我が日本軍の攻撃が容易であると予測して陣地を固めているだろう。実際問題として、我が海兵隊も含め、第3軍の司令部の面々が双眼鏡等を駆使して旅順要塞の弱点はないか、目視で探してみたが、弱点は未だに発見されていない。少なくとも我々海兵隊が旅順要塞を観察する限り、旅順要塞西側の地形は旅順要塞の弱点であるとして、それだけ入念に露軍は陣地を固めている。ここに我々が急襲を仕掛けることは露軍の罠に飛び込むことになる」

 林中将は続けて力説した。

 長くなったので分けます。

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