四話 幼馴染だけが頼り
「三波、お願いがあるんだけど」
小学生の頃からずっと友達で大学も同じ、いわゆる幼馴染の河野三波はあたしがなんでも話せる唯一の友達だ。昔から何かあると、三波にだけは全て打ち明けている。
「なんだい、なんでも言ってみな」
あたしとは正反対で明るく友達の多い子だ。派手ではないが今時の大学生のようにお洒落な見た目をしている。今時の大学生、とか言っている時点であたしはダメだと思っているが、表現の乏しいあたしにはこうとしか言えない。
「あの・・・」
昨日家に帰ってから色々と考えた。だけど結局考えはまとまらず、あたしはゆっくりと思うことを全て吐き出した。
「化粧をしてお洒落な服を着て、髪型も可愛く変えたいの。後、積極的になれるようになりたいの。
三波みたいに誰とでも話せて、可愛く笑えるようになりたいの」
勢いで捲し立てるように言ってみたものの、語尾になるにつれ恥ずかしさが勝って口の中でごにょごにょ言っていた。対する三波は、キョトンとした顔であたしの言葉を聞いていた。
「美花!」
それからしばらくして、三波はあたしの肩をがっしりと掴んだ。
「な、何」
「もしかして・・・恋したの!」
言い忘れていたが、今は大学の食堂にいる。周りには大勢の生徒がいる。そんな中で三波は大きな声で叫んだ。顔の広い三波が叫べば・・・。
「目立つから止めてよ」
あたしは顔が真っ赤になってしまった。そんなあたしに、三波はごめんごめんと言って、声を潜めるように顔を寄せてきた。
「で、相手は? どんな人? この学校の人?」
三波の問いかけにあたしは首を横に振った。
「じゃあ誰?」
三波の興味はますます強まっているようだ。目が輝いている。
「えっと・・・」
あたしは三波のに圧に負けて、昨日のことを語ってみせた。
「なんでそこで逃げちゃうかなー。チャンスじゃん」
三波は誰もが思う言葉を残念そうに言った。
「うーん、わかった! それじゃあ今日ちょっといこっか」
そうしてあたしたちは講義が終わるや否や繁華街へ赴いた。