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「刃と日常のあいだ」

作者: 蒼山ホタル
掲載日:2026/05/04

「お兄ちゃんは誰にも渡さない。でも、一番大事なのは――ちゃんと笑ってるお兄ちゃんだから。」






---


「刃と日常のあいだ」


夕暮れの道場。

木刀の音が、静かな空気を裂いた。


「まだだ…もう一度。」


ヒロトは汗を拭いながら、何度も型を繰り返す。

その背中を、少し離れた縁側から見つめる影があった。


「お兄ちゃん、また無理してる。」


アイショコは頬を膨らませながら立ち上がると、

静かにヒロトの元へ歩いていく。


「休まないとダメって言ったでしょ?」


「……見てたのか。」


「当たり前じゃん。ずっと見てるもん。」


ヒロトは小さくため息をつくが、どこか優しい目をしていた。


「お前は本当に…」


「なに?うざい?」


「いや…ありがたい。」


一瞬、風が止まる。


アイショコは少し驚いた顔をして、すぐに笑った。


「ふーん。じゃあ、ご褒美ちょうだい。」


「は?」


「今日の稽古終わったら、一緒に帰る。それだけでいい。」


ヒロトは木刀を肩に担ぎ、空を見上げた。


「……安いご褒美だな。」


「お兄ちゃんと一緒なら、それでいいの。」


少し沈黙。


そしてヒロトは、小さく笑った。


「分かった。今日はもう終わりだ。」


アイショコの顔がぱっと明るくなる。


「やった!」


その瞬間だけ、剣も戦いも関係ない、

ただの兄と妹の時間が流れていた。



---





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「お兄ちゃんは誰にも渡さない。でも、一番大事なのは――ちゃんと笑ってるお兄ちゃんだから。」



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