婚約破棄 ざまー♪は手間いらず
「フローネ、お前との婚約を破棄する」
王立アカデミーの卒業パーティーの席で王太子であるアレク・サンドラが宣言した。傍らに平民の特待生のアリスを侍らせている。彼女は平民でありながら優等生として特待生として入学を認められた。
ところが彼女はアレク王子やその取り巻きたちにチヤホヤされて遊び呆けていてまともに能力を伸ばせず現在に至る。しかしアレク王子たちのコネのお陰で特待生のまま卒業にこぎつけたのであった。
平民と接触のなかったアレク王子の目には、アリスの言動が純粋と写ったらしい。
フローネ。フローネ・ロビンソン公爵令嬢がこともなげに問い返す
「理由をお伺いしてもよろしいかしら」
「お前はアリスの可愛らしさに嫉妬し、嫌がらせを重ねてきた。王太子妃としてあるまじき所業だ」
「アリス嬢からお聞きになったのかしら」
「その通りだ」
「あら、平民の小娘の発言程度が王太子と公爵令嬢との婚約破棄の理由になるとでも言うのかしら」
小馬鹿にしたように言うフローネ
「心配するな。ここに並ぶ貴族の令息令嬢たちがお前の悪行を見てきたそうだ。証人には事欠かない」
勝ち誇ったように取り巻きたちを示すアレク王子
パンパン!
それを聞いたフローネが手をたたき
「ここにお揃いの皆様に椅子を用意して差し上げて」
そう言うと今まで笑顔で給仕を行っていた使用人たちが突如表情をなくし、椅子を並べると有無を言わさず一同を座らせる。王族や貴族を座らせるにはいささかみすぼらしい。
対面にはフローネ用にも椅子が用意される。こちらは公爵令嬢が公の場で座るに相応しい立派な椅子だ。
フローネはそれに優雅に腰を下ろす。
「一体何のつもりだ」
怒りをあらわにするアレク王子
「皆様にご説明してさしあげようかとおもいまして。立ち話もなんですのでお席をご用意して差し上げました」
「その割に随分と粗末な椅子じゃないか。お前だけご立派な椅子に座りやがって」
王子の言葉を無視して話を続けるフローネ嬢
「まずはアリス様、貴女は娼館送りになるかと思います」
「しょうかん?」意味がわからず問い返すアリス
「殿方にいかがわしいサービスをして報酬を得る施設のことですわ」
「どうしてそうなるのよ!?」叫ぶように問い返す
「貴女のご実家は平民の中でも富豪とは程遠い、むしろ貧民に近いですから公爵令嬢を貶めた慰謝料を支払えるとは思えませんもの」
「それはフローネ様が・・・・」言い返すアリスの言葉を遮るフローネ
「皆様ご存じないかもしれませんが、わたくしは公爵令嬢として幼い時から王太子の婚約者候補となりました。その時より護衛兼監視役として常に『影』が目を光らせておりますの。皆様が言うところの『王太子妃としてあるまじき所業』を行えば細大漏らさず国王陛下や公爵閣下に報告が上がります。その報告が無いということはわたくしが無実である何よりの証拠ですわ。何しろ未来の国母にとって品格は重要ですから」
「そんなの監視の目をかいくぐってなんとでもなるじゃない」
「あら、そんな監視の目から逃れるようなことをすれば、それこそ不祥事として真っ先に報告されますわ。申し上げたでしょう?常に目を光らせていると」
「そんな話聞いたことがないぞ」
「常に監視されるとなると、息が詰まる方がほとんどでしょうから、あまり大っぴらにはされていませんのよ。極秘と言うほどではありませんから、その気になれば事実を知ることもできますけれど。将来の王家の婚約者候補となる方々が息苦しい思いをなさらぬために、ご内密にお願いしますわね」
続けるフローネ
「アリス様、貴女の方は王太子殿下の発言が何よりの証拠となりますわね。殿下が貴女から嫌がらさをされたと聞いたとおっしゃっておりましたもの。王太子殿下の証言は重いですわよ。
でもまあ、アリス様は容貌が優れていらっしゃいますから2〜3年で出てこられるのではないかしら。もしかするともっと早く身請けしてくれる方が現れるかもしれませんね。でも身請けしてくださる相手によっては娼館に残ったほうがマシだという可能性もありますが」
「そんなー、謝りますから許してくださいよー」
ことの重大さを知って焦るアリス。しかしフローネは無情に告げる
「残念ながらわたくしにはどうすることも出来ませんわ。わたくしは皆様にご説明して差し上げているだけですの。あなた方の行為は、ロビンソン公爵家の名誉に泥を塗ったということですから、仮にわたくしが許したとしても公爵家として許容できるものではございませんわ」
「・・・・・」絶望的に押し黙るアリス
「令息令嬢の皆様も他人事ではございませんのよ。もしご実家が慰謝料を払ってくれなければご令嬢方はアリス嬢同様娼館送り、御子息方は鉱山あたりで強制労働でしょうか。ご令嬢方はアリス嬢ほど御容貌に恵まれていらっしゃらないようなので、もう少し期間は長くなるでしょうね。御子息方はあまり体力は無さそうですから更に長引きそうですわね」
わざとらしくため息混じりに肩を竦める。
「ご実家が支払ってもらえるとよろしいですわね。慰謝料」
その場合でも実家からの罰を受けることは避けられまい。絶望的な一同に告げる
「一縷の望みが無いでもありませんが・・・・・」
「「「それはどうすればいいの(ですか)」」」
食らいつくように身を乗り出す令息令嬢たち
「王太子殿下が皆様から話を聞いたのは嘘だと証言なされば、殿下お一人が罪も慰謝料も背負うことになります。そうすれば皆様は無罪放免。その場合王家の予算はすべて国費なので王家から支払われることは御座いませんね。何しろ財務大臣はロビンソン侯爵ですから。殿下の労働で支払うことになりますわね。一人で背負うのですから生きているうちに終わるとよろしいのですが・・・・」
「貴様、王太子である僕やこれだけの貴族の子女たちをそんな目に合わせて平気なのか!?」
食い下がるアレク王子
「あら、わたくしは最初に申し上げた通り皆様の行く末を説明して差し上げただけですわ。ハイそうですかの一言で立ち去っても結果は何一つ変わりませんですわ」
話は終わりとばかりに立ち上がるフローネ嬢
「殿下は証言したら強制労働、しなければ多くの貴族家の恨みを買って針の筵。どちらにしても地獄が待っていますわね。それでは御機嫌よう。皆様」
説明は主に読者の皆様に、かも(笑
アレク王子仮に「話を聞いたのは嘘でした」証言をしなくても婚約破棄の慰謝料は請求されるので強制労働待った無しなことに気づいていなかった(哀




