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それは金貨ではなくて金魂!

 二人の幼女ナースが、両手をワシワシとしながらジリジリと近づいてくる。

 恐怖でズルズルと後ずさるタカト。

 ビン子もなんだかワクワクしながらタカトに続いて後ずさる。

 だが、その距離はジワジワと縮まる。

 そして、タカトのパンツもジワジワと……

 だが!ついに! 10cmほどにまで密接した二人の幼女ナースは、タカトとビン子の体に顔を近づけ鼻をクンクンとさせはじめたのだ。


「あれれ、人あらざるニオイがしますよ~」

「しますよ~」

 上目づかいに二人を見つめるナースたちの目が、意地悪そうに輝いていた。


 ギク!

 タカトはズボンの正面に鼻を近づけながら見上げる蘭華の言葉に驚いていた。

 ――もしかして、俺が小便を漏らしたのバレたの? だが、漏れたとはいえ……それは少量……

 いうなればそれは寸止めの直前、我慢汁がジワっとパンツに滲んだ程度なのだ。肌触りが少々べたつくが、汗をかいたと言われればそういう気がしないでもない。

 だが!そのわずかな小便の香り!

 ――この幼女はそれを感じ取ったというのか⁉

 ――まさか! ニュータイプ⁉

 驚きの表情を隠せないタカトの顔、いや、髪をふくめてその全てが逆立っていた。

 ――キャァァァァァァァァ! 俺には荷が重い!


 ギク!

 ビン子は腰の正面に鼻を近づけながら見上げる蘭菊の言葉に驚いていた

 ――もしかして、私が神様だってバレたの? だけど、ちゃんと眼色変更コンタクトはつけてきてるんだから……きっと大丈夫……

 そう、ビン子が神であることは内緒なのだ。というのも、神であることバレると神の恩恵を求めて人々が集まってくるのである。だが、ビン子は神の恩恵を発動できない……おそらくそれがバレた瞬間、落胆した人々はビン子に無慈悲な言葉を投げつけることになるだろう。

 人々が勝手に期待したことと言ってしまえばそれまでなのだが、おそらくビン子は己がせいと傷つくに決まっている。

 それは権蔵にもタカトにも分かっていた。

 分かっているからこそ、ビン子が神であることは絶対の秘密だったのである。

 しかし、ビン子も神である。

 金色の目の色は権蔵の作った眼色変更コンタクトによって誤魔化すことができたとしても、その体からわずかに滲み出す神の香りは誤魔化せない。といっても、力のないビン子の香りなどわずかなものである……

 だが!そのわずかな神の香り!

 ――この蘭菊ちゃんはそれを感じ取ったというの⁉

 ――まさか! ニューイン代⁉

 驚きの表情を隠せないビン子の顔、いや、髪をふくめてその全てが逆立っていた。

 ――キャァァァァァァァァ! お母さん想い!!!!!

 って、最後、話がつながってないやないかいwww


 そう……蘭華と蘭菊の母親は、第一の門への輸送業務の途中、第一の魔人騎士ヨメルの毒によって瀕死の重傷を負っていたのである。

 だが、所詮は一般国民の身分、神民病院などで手当てしてくれるわけもなく、誰でも受け入れるツョッカー病院で治療中だったのだ。

 しかし、その毒の構成は複雑で一般の毒消しなどでは簡単に治らなかった。

 ならば、高級毒消しではと試してみたのだが……命をつなぐのがやっとであった。

 だが……高級毒消しともなれば高級品……お値段もかなりする……

 そうそう一般国民などが飲める代物などではありはしない。

 でも……少量であったとしても飲み続けないと死んでしまう……

 しかも、入院しているツョッカー病院はブラック中のブラック!ヤブで有名だった。

 金の切れ目が縁の切れ目……治療代、入院代が払えなくなると無慈悲に追い出されるのだ。

 そのため、蘭華と蘭菊はあの手この手でお金を工面してなんとかギリギリで払い続けていた……幼女なのに……

 だが、それによってかろうじて母の命はつながっていた……

 だからこそ、金が尽きて病院から追い出された瞬間、母が死んでしまうことは蘭華と蘭菊には痛いほど分かっていたのだ……

 ――何とかお金を用意しないと……

 ――お母さんのために何とか……

 幼い二人が人を殺してでもと思うまでに追い込まれていくのは仕方のないこと……

 だって……今日が今月分の支払い期日……月末なのだから……


 二人の幼女ナースの言葉に、タカトとビン子は顔を見合わせ、額から大量の汗を垂れ流していた。

 ――どうする!ビン子!

 ――どうするのよ!タカト!

 激しく交差する二人のアイコンタクト。

 ――俺! ションベン漏らしてないからな!

 ――私! 神様ってことバレてないからね!

 当然、その議論は全くかみ合っていなかったwww

 といっても、この場をいかに切り抜けるかという点についてだけは、二人の意見は一致していたようで……長机がある方向へとクルリと向きを変えたのだ。 

 タカトとビン子は口角を引きつらせながら懸命に作り笑いを浮かべる。

「ビン子君! やっぱり人魔チェックは大切だよなぁ~ウアハハハ」

「タカト先輩! 私も人魔チェックは大切だと思っていたんですよ~ウアハハハ」

 カクカクと動く二人の体は右手と右足とが同時に動いていた。その様子はまるでロボット人形www

 そんな動きを先導するかのように二人の幼女ナースがニコニコしながら丸椅子へといざなうのだ。

 

 椅子に座った二人を確認すると幼女ナースたちは、

「はい、それでは、準備しますね~」

「準備しますね~」

 と、ニコリと微笑み……あっという間にタカトをロープでぐるぐる巻きにしてしまった。


 それは一瞬の出来事。

 当のタカトなど、何が起こったのか分からない様子で、キョトン……

「あら……」

 目が点になり固まっていた。というか、完全に身動きが取れない状態だったのである。

 いまやタカトの手は後ろ手でしっかりと縛られ、体に巻き付けられたロープが体の各所を結んでいた。

 ――こ!これは!

 今更ながら、タカトは幼女たちが手練れの者であることを痛感した。

 そう!これはまさしく亀甲縛り!

 ムフフな本でよく出てくる縛り方である。

 だが、実際にやってみると、これがなかなか難しい。

 縄で作る甲羅模様がバランスよく作れないのである。

 それがどうだ、均整の取れたロープの形。左右から引っ張る力が均等に掛けられていることの証拠なのだ。

 しかも! 股間にある結び目はそのモッコリを強調するかのような念の入れよう。

 ――で!できる! こ奴ら!


 そんなタカトのモッコリが限界を迎え、ついにはちきれそうになった瞬間!

「わははは、また、騙されたわね!」

「騙されたわね!」

 二人の幼女ナースが、パッと白衣を脱ぎ捨てたのである。

 ひらひらと舞い落ちる白衣がタカトの視界を一瞬、遮ると、その後から現れたのは、な! なんと! 何と! 蘭華と蘭菊であったのだぁぁぁぁぁ!

「なんだとぉぉぉぉぉぉ!」

 偉そうに腰に手を当て立っている姿が、タカトに取っては妙に眩しく映っていた!

 (って、タカト……マジで気づいていなかったの……by飽きれるビン子)


「蘭華! 蘭菊! また、お前たちの仕業か!」

 丸椅子に座るタカトは大声を上げながら勢いよく立ち上がろうとした。

 だが、その体は亀甲縛りで縛られている。

 それはもう足首まで丁寧に……

 当然バランスを崩した体は、ドシンと前のめり……

 今や地面の上ではケツを突き上げた芋虫がムズムズと動いていた。

 その姿の哀れなこと……いや面白いこと……

 ぷっwwww(笑byビン子)


 そんなタカトを見下すように視線を落としながら蘭華が近づくいてくると、「悔しがれ!」という言葉と共に、山の字のように盛り上がったタカトケツに向かって右足をドンとたたきつけたのだ。

 当然……

 ふげっ!

 その勢いによって盛り上がっていたケツ山はつぶれ地に落ちた。

 そして、先ほどまでの亀甲縛りの興奮で盛り上ろうとしていた前山も、地面としたたかにぶつかり完全に沈黙した。

 ……タカト……死亡……チーン♪

 蘭華はピクピクと痙攣し続けるズボンのポケットの中に手を突っ込むと何かを探すかのようにゴソゴソとまさぐりはじめた。

「それではいただくことにしようかの」

 どうやら狙いはポケットの奥に隠してあるモノのようで、グイッと手を押し込んでみては、あれやこれやとこね繰り返していた。

 だが、その行為は沈黙していたタカトを再び呼び起こした。

 やられっぱなしで黙っているのは男じゃねぇ!って言わんばかりに、タカトが腰を動かしだしたのだ。

「いやぁんやめぇぇぇえ! エッチぃ~!」

 タカトが声を上げるが蘭華の手は止まらない。

「どこに隠したんだ? もしかしてこれか?」

 ギュッとつかんだ幼い手にタカトの腰がビクンと反応した。

「あっ♡ それは♡」

「丸いけど……どうも金貨にしては柔らかいな……」

 蘭華ちゃん……それは金貨ではなくて金魂!

「これとは違うか……ならばこっちの固いやつか?」

 と、一気に固い感触を引きずり出そうと力を込めた。

 だが、何かに引っかかっている、いや引っ付いているようで、なかなか引きずり出せない。

 ――ならば!

 と、押しては引いて! 押しては引いてを繰り返す!

 ――いずれは出てくるはず!

「あぁぁぁ……♡それ以上はぁぁぁぁぁ♡」

 そう、いずれは出るのだwwww金貨とは別の代物、いや汁モノがwwww

 そして、ついに!タカトが感極まろうとした瞬間!


 ビシっ! ビシっ! ビシっ!

「この不審者! 変態! 犯罪者!」

 ビン子のハリセンが、まるでモグラたたきのように芋虫の頭をシバキまくっていた。

 ――って、なんでわかんだよ! お前は!(怒byタカト)


 熾烈を極めるシバキ!

 シバキにつぐシバキ!

 ビシっ! ビシっ! ビシっ!

 ホゲっ! ヒゲッ! 安部氏ぃぃっぃぃいっぃ!

 ほどなくして、芋虫は動かなくなった……

 芋虫はサナギになったのだろうか……

 いや、もしかしたら死んでしまったのかもしれない……

 そういえば、芋虫がサナギになったら手で触れたり動かしたりしたらダメっだって誰かが言っていたような気がする……

 今更ながら、そんなことを思い出した蘭華と蘭菊は、動かぬ芋虫の様子にあっけに取られていた。

 例えその行為が残酷であったとしても、これも幼児の情操教育の一環なのだ。

 芋虫のはかない一生を目にすることで二人は、生者必滅(しょうじゃひつめつ)(ことわり)を理解したに違いない。

 天へと登っていく芋虫の魂……

 その芋虫の来世に幸多からんことを祈るかのように両手を組んで合掌する蘭華と蘭菊は、

「「アーメン! ソーメン! ワンタンメン! 変態仮面ニャ効果テキメン♪」」

 パーン!

 嬉々としながらハイタッチ。

「やったね♪蘭菊♪」

「やったね♪蘭華ちゃん♪」

 二人は気持ちがいいほどのすがすがしい笑顔を浮かべていた。

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