第29話 2日目
「ヨウスケ、お前これからどうするんだ?」
「そうですね……」
正直決めあぐねてる、元々王都に来たのは僕の処遇を聞くためだし、その目的はもう終わった
モカさんはもうここにいる意味がないんだ、かと言って僕もパラグ村に帰る意味はないあの村はいいところだけど仕事が少ない、あっても力仕事だから僕なんの役にも立たないし
冒険者なら叡智さんがいれば死ぬことはないだろうし戦えなくとも採取依頼とかで食いつなぐくらいはできる、採取依頼の存在はもう確認済みだから間違えることはない
でも王都って物価高いんだよね、まだルリは服一着セットしか無いし僕もいい加減学生服から別の服に着替えないといけないし、そうなるとお金が足りない、まだ依頼の報酬を確認してないから何とも言えないけど少ない場合で考えるべきだし……
「私は村へ戻るぞ、もともと私はパラグ村の見張り番だからな、ここにいること自体おかしいのだ」
「私は別にずっとここにいてもいいんだよ?最近きな臭いしね」
「きな臭いなら、なおさら村を守らねばな」
「うげ、逆効果だった」
マナさんとモカさんは本当に仲がいいね
「僕は、とりあえずルリと一緒に生きていける基盤を作りたいですね」
「そうだな、そのためにも依頼をどんどんこなしていかなければな」
「そうですね、人探し的な依頼なら叡智さんでチョチョイのちょいなので、そういった依頼を優先的にやっていきたいと思ってます」
「ねぇねぇヨウスケくん、好きな人っている?」
「マナさん?いきなりどうしたんですか?」
「だってせっかくなら楽しいお話したいじゃん?なら恋バナかなぁって!」
好きな人て……こっち来てまだ数日だぞ?しかもその大半が馬車だし
「現状誰もいませんよ」
「なら好きなタイプは?私はね〜……」
そんな感じで夜遅くまで話してたら寝る時間が土の2時47分になってしまった……
***
朝日が顔にかかり、目が覚める
……眠い、叡智さん今何時……
【木の3時41分です】
もうすぐ9時か……もっかい寝るか…?
「ごしゅじんさま、おきました?」
ルリはもうパッチリ目覚めてた
「起きてたんだ」
「はい、ねがお見てました!」
恥ずかし!軽く頭を振って眠気を飛ばしてベッドから起き上がる
「あかのおねえちゃ〜ん!ごしゅじんさまおきた〜!」
大声でモカさんに報告しにバタバタと走り出すルリ
前と比べて感情豊かになってきてるのは信頼の表れかな?だとしたら嬉しいな
……主無しの情報……違うな、主無しになる条件をもう一度教えて
【主人を殺すか、何らかの事故で現主人を失う事です】
もしルリが本能による暴走じゃなく、自分の意志で主人を殺して主無しになったなら、もう2度と人を殺さないように教えないとな……
生い立ちじゃなくて過去を見るべきかな、せめて元主人を失った原因くらいは
「ヨウスケ!早く来ないと朝食が冷めるぞ!」
おっと、考えすぎてた
「はーい!なんかお母さんみたいですね!」
ガシャーンという何かを落とす音が聞こえてきた
「バカなこと行ってないで早く来い!」
皿でも落としちゃったのかな?
***
朝食は昨日の余りのコンポタとフランスパンに挟まれてるタイプのサンドイッチ、それと紅茶、ルリにはオレンジジュースだった
コンクリートも車らしきものもあったしもうフランスパンが存在してることには突っ込まない
サンドの具材はハムとバターだけだから味気ないかと思ったけど全然そんなことなかった、かぶりつくとバターの風味とハムの塩味が合い、ちょっと過剰気味のしょっぱさがあるけどそこはパンがうまく調整してくれて完璧なバランスに仕上がってる、結構サイズがデカイから食べづらいのが欠点っちゃ欠点かな
ちなみにルリの分は一口サイズに切られてるから食べやすそうにパクパク食べてる
***
「ヨウスケくんはこの後どうするの?」
食後に冒険者奴隷番号合併登録の書類の手続きをしてたらマナさんに聞かれた
「とりあえずなんか依頼を受けてお金を稼ぎたいですね、いま全財産が20リンなので」
「そんだけしかないの!?今までどうやって生きてたの!?」
「ちょっと人には言いたくない事情が……ルリは最近出会ったので餓えさせたことはないです!」
「ちょっと安心したけど……それでもヨウスケくんの生活が心配よ?薬草ちゃんと見分けられる?」
叡智さん?薬草ちゃんと見分けられる?
【薬草にマークを付けて分かりやすくできます】
【ほかにも視覚情報付きで説明することもできます】
さすが情報特化
「大丈夫です、『叡智の声』があるので」
「そっかそういえばそれがあったわね、でもあんまり過信しちゃだめよ?」
「はい、気をつけます」
「ごしゅじんさまは、るりがまもります!」
そう言って背中に飛び乗ってくる、頼もしいね
でも8歳の女の子に守られるのはちょっと情けないよ、そういえば魔法の代行はしてくれないのかな?魔術等価法は代行してくれるなら魔法もできて良いんじゃない?
【魔術等価法は魔法とは違い、魔力を使用しません】
【魔力を使用する魔法で教えられるのは概要と使い方までです】
【魔法は主が行ってください】
そうなんだ、思えば呪法のときも使い方教えてくれただけだったね、まぁ代行してくれる基準が知れただけで充分かな
ちなみに文字は叡智さんが全部教えてくれる、画像翻訳アプリを使ったときみたいな視界になってちょっと気持ち悪い
***
手続き用の書類も書き終わって、お別れの時間がやってきた
「マナさん、モカさん、お世話になりました」
「おせわなりました」
2人で頭を下げてマナさんとモカさんにお礼をする
「こっちも楽しかったよ、またいつでもおいで歓迎するからね」
「ヨウスケ、ルリ、短い間だったがお前たちと出会えて良かった、またどこかで会おう」
「はい、モカさんにも本当にお世話になりました、ありがとうございました」
本当に、モカさんがいなければ多分お金の稼ぎ方もわからなかっただろうし命の恩人と言っても差し支えないほど大きい恩がある
絶対に返そう、何年経ってでも
「おねえちゃんたち、ありがとございました」
「ルリちゃんもありがとう、部屋を片付けるきっかけになったよ」
「それは普段からやっておけ」
名残惜しいけどそろそろお別れかな、元々目的はなかったけど今はとりあえず日銭を稼ぐ必要があるし
「ルリ、そろそろ行こうか」
「はい、ごしゅじんさま」
ルリを抱っこしてフードを被せ、2人の方を向いて最後に挨拶をする
「ではまたどこかで」
「おねえちゃんたち、ばいば〜い」
「またな」「またね」
ルリが手を振って、2人もそれを返す
***
相変わらずギルドは陰うつとする差別の視線を感じる、絡まれないだけマシかもしれないけどね
依頼が貼ってある板の前に立ってやりやすそうな依頼が無いか探す
「よっヨースケ!お仕事探し中か?」
「ハマル!ちょうどいいところに!」
ナイスタイミングでハマルが来た、事情を話してちょうどいい依頼を探してもらう
「これとかどうだ?そこそこ報酬も良いぞ?」
「どれどれ?[ファスト領地内の毒草鑑定及び除去、報酬:毒草の種類により変動、最低値金貨3枚]?」
ファスト領地内って……絶対ハマル場所で選んだでしょ
「ファスト領地は結構毒草が生えてくんだよ、んでそれの除去を毎年冒険者に頼んでんだけどあんま知識あるやついなくてな?確かヨースケは鑑定系の加護だろ?だからやってくれねぇかなって思ってよ」
ハマルに『叡智の声』の話はしてないはずだけど
「そのはなし、どこできいたの」
ルリがハマルの喉元に爪を突き立てて聞き出してる
「待ってルリ、危ないよ」
「でも、ごしゅじんさまのはなしてないことしってる、あやしい」
「降参!全部言うからその爪下げてくれ嬢ちゃん!」
「ルリ、暴力行為はだめだよ!」
「ごめんなさい……」
両手を上げて降参の意思を見せるハマルと叱られてしぶしぶ爪を下ろすルリ
「言うにしても内緒話だからあとで耳貸してくれ、とりあえずその依頼受けろよ、悪くはしねぇからな」
まぁハマルがファスト家の侍衛だし、顔が利いたりするかな
しなくても知ってる人が入るってだけで心強いし、これにするか
板から紙を剥がして、ミレーヌさんに依頼の紙を渡して受ける
ミレーヌさんは終始事務的な目をしてた、差別というよりめんどうだから関わりたくないって感じの目だ
「うし!じゃあ行くか!そこで色々説明するぜ」
「よろしくね、いま全財産20リンしか無いから」
「昨日の今日で無くなりすぎだろ!」
正当なツッコミです




