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目醒め

Apple Pencilの先端がお亡くなりになってしまったのでお絵描きできないですが元気です←


「――――取り敢えず夢ではなさそうということで話を進めるよ?」


「……それはいいけど私の頬っぺた鷲掴みにして確認するのは酷くない?」


落ち着いた様子で冷静に話を進めようとする照。

そんな照に対してジトっとした視線を送り頬を擦る雅。

照に頬を思いっきり摘まれて夢かどうかの判断をされたらしく、雅の両頬は赤くなっていた。




――――2人の意識が覚醒してから十数分。

どうやらここが【アヴァロン】と()()()()()()()ということは確認している。


自分たちが【アヴァロン】をプレイしていた頃のように操作をしてもメニュー画面は出てこないものの、念じれば自分のステータスやストレージに収めているものの確認、取り出し、収納は可能であった。

そしてメッセージのやり取りも可能なようで脳内で手紙を読むというよく分からない体験をすることとなった。


こういったことから照たちは此処は【アヴァロン】と似たような世界なのだと仮定したのである。




――――とはいえ、今はあまりにも情報が少なすぎるためどうしたものかと2人で案を出し合っていた。

……正しくは照が考え提示するものを雅がいいんじゃないかと言っていただけなのだが。




「とりあえず……此処が俺たちのギルドハウスなら都合がいいね」


「それまたどーして?」


「……此処には俺たちが創った【NPC】たちが居るよね……?

少なくとも俺たちより情報を持ってる可能性が高いから」


「あぁ!なるほど!

流石照あったまいいー!」


「はいはい……お褒めいただきありがとうございます……」


照はそう言いながら立ち上がるとこの部屋の出入口であるドアへと向かう。


「置いてかないでくれよぉ〜」


そんな照について行くように雅も立ち上がって後を追う。


「情報だったらまずは……」


照はどの【NPC】を探しに行くべきかとブツブツ言いながらすぐに思いつく2人の【NPC】の名前を頭に浮かべながらドアを開く。






















『――――っ!!!』


「ほわ……?」


「どうしたの?ひか……えぇ……?」


ドアを開いた照の前に現れたのは広い廊下ではなく、照たちが出ようとしていたドアを囲むように立っている【NPC】たちの姿だった。

自分たちが創った【NPC】はこんなにも多かっただろうかと疑問を浮かべながらもその全員が今にも泣き出しそうな表情で照と雅を見つめているという事実に思考が吹っ飛ぶ。


「えっと……」


自分たちが創った【NPC】とはいえ、この【アヴァロン】と似たような世界に来てから初めての出会い、そして泣き出しそうな表情を浮かべる姿にどのような声をかけていいものかと悩む照。

コミュニケーション能力が高めの雅ですら言葉が出てこないようで困ったように笑っていた。


「ど、どうしたの?」


ようやくかけた言葉はその程度のものでしかしそれでも【NPC】たちは泣きそうな表情のままに嬉しさを滲み出させる。

そしてその中から1人の執事の格好をした壮年の男性【NPC】が一歩前に出ると片膝をついてかしづく。

それを合図としたのかその他の【NPC】たちも揃って片膝をつき頭を下げた。






「――――()()()()()()()()()()()我ら一同お待ち申し上げておりました。

【アルファー】さまの加護により我ら一同誰一人とて欠けることなくこの場に参上出来ることを心より感謝申し上げます」


「「……え?」」


この【アヴァロン】と似たような世界に来ているだけでも精一杯だと言うのに『永き眠り』などというワードに情報過多になり目を回しそうになる2人。

そんな2人の様子を見た片膝をついてかしづく【NPC】――――『ルーヴァン』は心配そうな表情を浮かべてさらに口を開く。


「ルゥシィ様?アルファー様?

もしやどこかお加減の程が宜しくないのでは……?」


その言葉に他の【NPC】たちがうろたえ始める。

このままではまずいことになるということを感覚的に悟ったのか、何とか今までの情報を飲み込んだ照が咳払いをして自身の気持ちにリセットをかけ言葉を回す。


「大丈夫!

まだ起きたばかりだから頭が働いてないだけ!

それに雅……じゃなくてアルファーも吸血鬼だから朝は苦手なんだよ!」


「それは……いえ、承知致しました」


照の言葉に何か言いたげな様子のルーヴァンであったがそれをグッと飲み込んだのか特に言葉にすることなく照の言葉を受け入れる。

見た目からもわかる出来る執事の雰囲気通り空気を読むのにも長けているようだ。


「えっと……集まってくれた皆には悪いんだけどルーヴァンとリューリェの2人に聞きたいことがあるからこの後良い?」


「「勿論でございます」」


今まで静かに控えていたヴィクトリアンスタイルのメイド服に身を包んだ妙齢の女性【NPC】――――リューリェとルーヴァンの2人が寸分の狂いもない返事を同時に返す。


「ん〜……食堂で待ってるから」


「あ、せっかくならご飯食べたいな!」


「……ごめんね……アルファーがこう言ってるから遅くなってもいいし準備してもらえる?」


今の今まで黙っていた雅が元気に手を挙げながら要望を伝える。

照は苦笑いしながらルーヴァンに向かってお願いをした。


「謝られるなどとんでもございません。

是非用意させてくださいませ」


そう言ってルーヴァンは柔らかく微笑むと一礼する。


「それじゃぁ待ってるね?ルーヴァン、リューリェ。

他のみんなもまた後で話そうね?

……あ、付き添いとか大丈夫だから」


「のんびり待ってるから用事済ませてからでいいぞ〜」


照と雅はそう言って食堂へと向かう。

初めは何人かが2人を案内しようと準備していたのだが、照の一言によってそれは実行されることはなくただ残念そうな表情を浮かべる【NPC】たちが数名出てしまうことになった。

そんな状態でも、2人の後ろ姿に向かってその場の全員が立ち上がると頭を下げて見送るのであった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






2人の姿が見えなくなった頃ようやく頭を上げる【NPC】たち。

姿勢を正したルーヴァンが柏手をひとつ打つ。


「皆さん話は聞きましたね?

私とリューリェは御二人の元へ参りますので他の皆さんは持ち場へ戻りなさい」


『……はい』


明らかに元気の無い返事にいつもであれば叱るルーヴァンであったが起きたことが起きたことのため仕方がないと表情を緩める。


「ほら、ルゥシィ様も後で話そうと仰っていたでしょう?

ならば持ち場の仕事を早く終わらせ時間を作る方が大切なのでは?」


『はい!』


やる気を出したのか【NPC】たちは元気な返事を返し速やかに持ち場へと戻っていく。

ルーヴァン自身、今回はリューリェと共に呼ばれたからこそ余裕であるものの、自分が呼ばれない立場にあれば集中できないだろうと思っての言葉であった。




――――『ルーヴァン』と『リューリェ』は数いる【NPC】たちの中でも特別である。

それを全員が分かっているからこそ、この2人が他の【NPC】たちをまとめる立場にあるのだ。


『ルーヴァン』は『ルゥシィ』――――照が。


『リューリェ』は『アルファー』――――雅が。


それぞれ初めて手がけた【NPC】。

その後に新しく手がけられた【NPC】たちは生まれていったものの、照と雅は都度都度アップデートを繰り返し、初めての【NPC】である『ルーヴァン』と『リューリェ』が弱くなってしまわないようにと気にかけていた。

勿論、他の【NPC】たちにもアップデートを施してはいたのだが、無意識のうちかやはり初めての【NPC】だからか、『ルーヴァン』と『リューリェ』の2人は他の【NPC】たちと比べて頭一つ抜きん出た性能を有している。


そういった事情もあってか、他の【NPC】たちは2人がトップに立つことを心の底から不満に思っていることは無い。

例え反発している姿が見られたとしてもそれは照と雅に可愛がられているのを羨ましく思っているからである。




やる気を出した【NPC】たちがいなくなり、照と雅が出てきた部屋のドアの前に残されたのはルーヴァンとリューリェの2人。

2人は開かれたドアを愛おしい者を見守るかのような視線を向け丁寧に閉める。


「ではキッチンに寄って参りましょう。

御二人を待たせる訳には行きませんので」


「……はい、そういたしましょう」


表情を引き締めたルーヴァンの言葉にこくりと頷くリューリェ。

彼女もまたキリッとした表情を浮かべていた。


「……御二人がお目覚めになり本当に良かった……」


「喜ばしいばかりです。

……それにこれなら()()()()()()()()()()()


駆け出したい気持ちを押さえ込み、優雅さを損なわない程度の早歩きで歩を進める2人は軽く言葉を交わし目的の場所へと急ぐ。

自分たちの主を待たせぬようにと――――。







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