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プロローグ

新作スタート!!

こちらは完全新作となっておりますので【平凡高校生の俺が〜】を読んでいただいている方も初見で楽しんでいただけると思います!


――――グルゥゥウァァァァアッッッ!!!


灼熱のマグマがそこかしこに溢れるその場所に割れんばかりの咆哮が響き渡る。

優に20mは超えるであろう体躯に深紅の鱗が煌めく()()()()

咆哮は空気どころか大地をも揺るがし、口だけでなく全身から吹き出す火の粉は辺りのマグマすら沸かしかねない程の高温。


そんな強大なドラゴンの前には討伐しに来た者たちが立ち塞がる。




――――その数たったの()()()




――――1人はエルフの女性。

美しい絹のような金髪を腰ほどまで流した細身の美女。

白を基調とした全身を覆うローブとその手に持つ自らの身長を越す巨大な木製の杖が特徴的である。




――――1人は吸血鬼の男性。

宵闇を思わせる黒髪は無造作にしかし綺麗に手入れをされている青年。

金属製の防具は身につけず動きやすさを重視したであろう軽装。

拳に付けられたガントレットとグローブが融合したような装備と足を守るブーツが唯一装備らしい装備と言える。




2人は言葉を交わすことも無く行動を開始する。

エルフの女性はその場から動くことなく杖を振るい【魔法陣】を展開し、吸血鬼の男性は攻撃を躱すという思考がないのかドラゴンに向かって一直線に駆けてゆく。

そんなことをすれば的にされるのは目に見えていた事で、ドラゴンは大きく胸部を膨らませるとほとんど溜めることなく劫火を吐き出した。


しかし、それでも吸血鬼の男性は足を止めることは無い。




()()()()()()()()()()()()


ドラゴンの吐き出した劫火は吸血鬼の男性を焼き尽くす前に消失する。

辺りで発光する無数の【魔法陣】が何かをしたのだろうが、ドラゴンにそれを理解することは出来ずにただ硬直していた。

吸血鬼の男性はそれを確認した後にさらに速度を上げドラゴンの腹部側面へと潜り込むと拳を握り力を貯める。

するとドラゴンの腹部に小さな【魔法陣】が3種類出現し、それを割砕きながら殴りつけた。




――――〜〜〜〜〜ッッッッ!!!




ドラゴンの声にならない悲鳴が上がる。

その後も2人は危なげない戦いを繰り広げドラゴンの攻撃は()()()()()()()()()


――――圧倒的。

ただその言葉が似合うドラゴンの討伐はたったの2人によって成し遂げられることとなる。






トドメを刺されたドラゴンは【HP(ヒット・ポイント)】をゼロにし、無数のポリゴン体へと還っていった――――。






2人はまるで当たり前のことだと言わんばかりに喜びを顕にすることはなく、ただ拳を合わせて笑うとドロップ品を確認し帰路へと着くのであった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





「――――お疲れ〜(ひかる)〜。

今回もナイスサポート!」


「はいはいお疲れ様(みやび)

全く……無茶な特攻はやめてよね……」


「ごめんごめん。

でも無理なことはしてないっしょ?」


「……まぁそうだけど……」


雅の物言いになんとも釈然としない様子の照。

照はため息を吐きながらヘッドホンを外し、ベッドに取り付けられていたゲーム機の電源を落とす。


「何か飲み物取ってくるけど何がいい?」


「じゃぁビールで〜」


「……だと思った」


「やっぱり熱い戦闘の後には冷えたビールに限るっ!」


「あんまり強くないんだから飲み過ぎないようにね……」


「はーい承知しておりまーす!」


雅は満面の笑みを浮かべて照に向かって敬礼する。

本当に分かっているのかと呆れ顔の照はそれでも嫌がることはなくキッチンに向かい2人分のグラスとビールを持って部屋に戻るのであった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






――――VRMMORPG【アヴァロン】。


サービス開始からサーバーダウンやバグすら一度も出したことの無いまま10年続く最早オーバーテクノロジー扱いのゲームである。


その特徴はなんと言っても――――自由度の高さ。

様々な種族の中から自分の好きな種族を選び好きなようにキャラメイクをすることが出来たり、膨大な数の職業の中から1つの【メイン職業】、3つの【サブ職業】を選びシナジーを考えることでその選択肢は無限に広がる。

キャラメイクは自分だけに留まらず条件を満たせば獲得出来る【NPC】にも適応されるため、【NPC】をたくさん獲得しキャラメイクを楽しむプレイヤーも少なくない。

更には土地を買い建物を建てたり、自分たちのギルドを立ち上げたり、中には国を起こすプレイヤーが出てきたりとやれることは様々。




――――照と雅はそんな【アヴァロン】をサービス開始日から楽しむ古参勢であり、名の知れたプレイヤーでもある。











「――――そういえば照」


「ん?どうしたの雅?」


2人揃って同じベッドで眠るために照が電気を消そうとすると布団の中にいる雅が声をかける。


「最近『にゃんころー』さんとか『ルルルー』さんとか見かけた?」


「あ〜……そういえば全然見てないかも……。

なんなら『カラマス』さんとか『マノマー』さんとかも見てない……」


「やっぱり?

この間からメッセージ飛ばしてるんだけど返信なくてさ……やめたのかな?」


「あの【アヴァロン狂い】が?【アヴァロン】をやめる?

そんなことあるわけないでしょ……」


「……それもそっか。

いいや!どうせ何か長期クエストにでも張り付いてるんでしょ!」


「ありえる。

……ちゃんとご飯食べてるかな……」


「照は相変わらずお母さんみたいだなぁ……」


「誰のせいでこうなったと?」


雅の仕方がないなぁという表情に対して照がジト目を向ける。

肩を竦めて小さくなった雅は掛け布団に埋まっていくのであった。

本日何度目かのため息を吐きながらそれでも口角は緩んでおり怒っている様子はない。


「ほら、明日も仕事あるんだし寝るよー」


「はーい照おかあさーん」


「お母さん言うな」


くすくすと笑いながら部屋の電気を消し数分も経たぬうちに寝息を立て始める2人。






――――雲ひとつない空で紅い稲妻が走る。











『――――次のニュースです。

昨夜〇〇市の住宅街で正体不明の落雷を観測。

辺りは複数の住宅を巻き込む大火災となり早朝に火は消し止められましたが落雷地点と見られる住宅を含む5棟は全倒。その他住宅も全焼してしまった物が多く見られ、落雷地点住宅に住む23歳の夫婦坂本照さん、坂本雅さんの安否確認ができておらず――――』






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






「――――んんっ……」


布団の中でモゾモゾと動く照。

いつもであれば雅がとんでもない寝相で自分の体の上に乗ったりしているのだが、珍しくそんなことは無いようで気持ちよく目が覚める。


「ふぁ〜……」


寝ぼけた頭ながらある異変に気がつく。

まだ視界がぼやけているものの明らかに部屋がおかしい。

見慣れない部屋、という訳ではなくむしろよく見知った部屋なのだが、それは目が覚めて見る場所としてはありえない場所だった。


「……ギルドハウス……っ?!」


声を出してみてさらに驚く照。

自分の声がどう考えてもおかしい。

ようやく脳みそが起動したのか目覚めの徐々に鮮明になる意識の覚醒ではなく、一気に覚醒する照。

此処がギルドハウスの自室であるのならばベッドの傍に姿見があるはずと素早く立ち上がりバランスを崩しながらも自分の姿を確認する。






「――――嘘……()……【ルゥシィ】になってる……!?」


姿見に映った自分の姿は本来の()()である自分の姿ではなく、見知ったものに変わっていた。

表現するために数時間費やした美しい絹のような金髪。

まさに黄金比と言わんばかりの細身のスタイルは自分がミリ単位でこだわった比率。

顔は誰もが振り返るレベルの()()


――――【アヴァロン】で自分が丹精込めて創ったキャラクター【ルゥシィ】の姿になっていた。






「な、なんだこれぇぇぇえ!!!!」


――――美女の絶叫が響く。




「……うるさいなぁ照ぅ〜……まだ朝だぞ〜……」


そんな照の声に目を覚ましたのか隣のベッドで寝ていた雅が身体を起こす。

その姿もまた本来の雅の()()の姿ではなく、雅がこだわって創ったキャラクター【アルファー】のものになっている。

宵闇を思わせる黒髪は寝癖はついているものの綺麗に手入れをされていることが分かる。

身体は細マッチョと言って間違いない肉体となっており、眠たそうな表情をしているもののそのイケメンさは隠しきれていない()()




「み、雅……それ……その身体……」


「なにーひかるー?ヘリウムガスでも吸ったのー?」


「バカ!いい加減ちゃんと起きなさい!」


寝ぼけている様子の雅のおでこにデコピンを食らわせる照。


「痛いっ!?

何するのさ!ひか……る……?」


ようやくきちんと目を覚ましたのか雅が照の方を見ると言葉を止めて照の全身を上から下、下から上に眺めるとぽかーんとした表情を浮かべる。


「なんで【ルゥシィ】……?」


「……俺が聞きたい……というか雅も【アルファー】になってるよ?」


「ってほんとだー!?

確かに声もおかしいっ!!」


自分の状況に遅いながらも気がついた雅は照と同じく姿見の前に立ち自分の身体を確認する。

一通り確認した雅は何が起こっているのか分からないと言わんばかりの表情を浮かべてベッドに座ると照の方を向いて言った。






「――――なにこれ夢?」


「……そうであって欲しい……」







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