「パンツだ。パンツを履かねば」救急車を呼んだ直後に思ったことがコレ
夏の日の実話
とある猛暑日の昼過ぎ。
わたしは散歩(買い物)から帰宅してすぐに洗濯物を取り込んだ。Yahoo天気予報が雷雨予想をしていたからだ。
洗濯物を室内に入れると、汗だくだった身体をシャワーでサッパリさせて……。
おかしい。身体の異常に気がついた。
手足のしびれが尋常ではない。
なんか気持ち悪いし、息苦しい。
ろくに身体を拭くこともできず、脱衣所にバスタオルを敷いて横たわる。上向きより横向きのほうが呼吸がラク……
なんだこれ。
吐きそう……? な気がする……
ヨロヨロとトイレ前まで移動。
トイレのドア開けて、いつでも行けるようその前で横たわる……。
いや。吐き気は……治まった感じ?
その間も呼吸が早いし荒い。
なんだこれ。
相変わらず手足のしびれがハンパない。
指先が冷たくて固まってしまったような感覚。
なんだこれ。
窓から吹いてくる風が冷たくて気持ちいい……。いつの間にか身体が乾いている。
ん? 風が冷たい?
これは急な降雨の予兆ではと、ヨロヨロしつつ起き上がり、開け放していた家中の窓を締める。
窓から見下ろす町並みがなんとなく煙っている……ように見え……たけど、まだ雨は降っていない。
窓を締め終わり、自分のベッドへ。スマホを共に。
クーラーつけて扇風機回して……、
部屋が涼しくなるにつれ、手足のしびれも治まる——かと思いきや。
範囲が広がった。
しびれは手から肘まで。
足先から太ももの付け根まで。
そして息苦しいのは変わらない。
なんだ、これ。
いつまで続くの、これ。
いいようのない不安に襲われる。
肋骨を締め付けられる。
なんというか……目に見えない紐でアンダーバストを締め付けられている……としか表現できない。
コルセットつけて、ぎゅーーーーーーーーっと絞られたらこんな感じか?
胴体全体が、ひとまわり小さな硬い箱に入れられたような、固まったような。
苦しい。
苦しいにもほどがある。
霊障か?
生霊か?
だれかの恨みつらみに襲われているのか?
呪い?
どうしよう。どうしたらいい?
このまま放っといたら、いずれ呼吸が止まっちゃうんじゃないの?
スマホ検索。
……近いところがよく見えない。(←老眼のせい)
あ、そうかコンタクト外せば……、手が強張ってる……しびれのせいで感覚がない……うまくレンズに触れるか……?
震える手でコンタクトを外す。
ああ、なんとかスマホの小さな文字が読める。
かかりつけの病院に相談する?
って、私のかかりつけ医って、眼科と耳鼻科と皮膚科やん? これ内科案件なんじゃ……?
あ、先週健康診断したところに相談してみる……?
TEL TEL……
おう。無情なアナウンス。土曜の午後は休診ですかそうですか。
って。
え?
スマホの待受画面に表示されている現在時刻を見て驚いた。
もう15:42? 帰宅したのって、いつだっけ?
買い物中、時計を見たとき14:25くらいだったよね。そこから家まで10分とかからない。
少なくともまちがいなく15時まえだったのはたしか。
シャワー浴びてから1時間近く経ってる……症状出始めてから50分近く、このままなん……?
わたし、このまま死んじゃうのかな……
間の悪いことに。
息子は独立して電車で2時間の距離。
旦那は一週間の出張中。帰国予定は水曜日。
今日は土曜日。わたしはひとり。
旦那が帰るまでに死んじゃってたら、彼は腐乱死体とご対面になるのか?
苦しい。苦しくてたまらない。
どうしよう、どうしたらいい?
息子に電話する(電話するまでにどうしたらいいのか混乱して泡食って、いつもならすんなり開ける画面にたどり着けない)も、応答なし。
苦しい。息ができない。苦しい。やだよ、まだ死にたくないよ。
この時のわたし、今だから言えるけれど間違いなくパニック状態に陥っていた。
どうしようどうしようと思いつつ、一縷の望みをかけて電話したのは「119」
「はい。消防です。火事ですか、救急ですか」
耳に届いた力強い声に、涙が出るほど安心した。わたし一人きりじゃないんだって、ほっとした。
「きゅ、う きゅう、です」
息苦しさのせいで返答はたどたどしくなってしまう。
締め付けられるような苦しさは相変わらず。
症状を聞かれ、住所氏名を聞かれ、救助要請は本人かどうか聞かれ、同居者の有無を聞かれ。
(順番は不確か)
どうにかこうにか、たどたどしくだけどそれらに答えて。
「すぐ向かいますからね。玄関の鍵だけ、開けておいてください」
ああ、助かるんだ。そう思った。
と、同時に。
わたし全裸だ、と気がついた。
いかん。
これはいかん。
世の中にはヒトさまにお見せすべき裸体と、晒したらアウトな裸体がある。
私の場合は間違いなく後者である。
パンツ、パンツを履かねば……
震える手でパンツを掴んでやっと履いて。
あ。玄関ドアに鍵かけてる。開けなアカン。解錠するために一歩、また一歩と歩きだす!
あれ。わたし結構動けてる?
相変わらず呼吸は荒いけど、動けてるよ!
微かだけれど、心の内に希望の火が灯った。
スマホが鳴る。
救急隊の人から直電。
玄関のドア鍵開けてくださいねの指示。マンションに管理人はいますかの問いに、土曜日なのでよくわかんないと返事。
その会話を交わしながら。
ああ黒のタンクトップ(@ユニクロ)とリラコ(@ユニクロ)履いて……
あれ。
病院に搬送されるならお金! 財布!
なによりも保険証!
そしてリラックスブラ(@ユニクロ)!
バッグ(@ユニクロ)にこの三点をつっ込んで。
まだ畳んでいなかったTシャツ(@ユニクロ)掴んで、病院から帰るときリラコは嫌んとスラックス(@ユニクロ)をタンスから引っ張り出して。ちょっと想定したスラックスと手触り違うけど、まあいいや、エコバッグにでも入れてと思いきや、どうしても見つからない。
ピンポーン! 「救急です!」
解錠していた玄関ドアから救急隊の人がわらわらと押し寄せて。
彼らの指示に従って。
聞かれたことに答えて。
あれよあれよという間に搬送されて。
(「鍵はどこです?」「靴はこのサンダルで」「この傘、持っていきますよ」などと会話もあって)
雷の鳴り響く土砂降りの中、わたしは救急病院へ搬送されたのでした……。
結果として。
生きてます。
救急病院で、採血し(うまく取れなくて両腕に注射針刺すことに。トホホ)て心電図やレントゲン撮りました。異常なしの判定。
熱中症と脱水状態になりかけと、過呼吸が主な要因だった模様。
過呼吸。
怖いね、あれ。いいようのない不安が増長してしまう。
だって本当に苦しくて苦しくて苦しくて堪らなかった!
医療の発達していない古代なら、間違いなく呪術系の病気判定されてたね。
冷静に受け答えができていたはずだけど、視野狭窄だった(目当てのエコバッグを探せなかった(椅子の下に落ちてた)し、救急隊員の顔を見てない)し、混乱からか記憶があやふや(息子の電話番号探せなかったり、自分がいつ眼鏡をかけていたのかも覚えていない)になった。
ひとり暮らしってこんな不安とも戦わねばならんのねと、認識を新たに。
と同時に。
わたし、知ってるんです。過呼吸で救急車呼んじゃアカンって事実を。
すまんかった。本当に申し訳なかった。
猛省している。
今回のわたしの例では、「♯7119」に電話すべきだった。
「シャープな119」は、救急車を呼ぶべきかどうかの相談ができるところ。全国網羅されていないので、お住いの県が有効範囲内かどうかご確認ください、とのこと。
とはいえ、これはあとから検索して知った事実。あのパニック状態のときに探し当てるのは不可能だったなぁ。(;´д`)トホホ…
備えあれば憂いなしという。今回、アタフタするばかりだったことを反省し、「#7119」と、そこが通話中だった場合の他の電話番号も調べてメモ帳にペーストした。
もうあんなにアタフタしないぞっと。
とはいえ。
たとえ過呼吸といえど侮れない。
素人目には過呼吸なのか、ほかの病気症状なのか判断がつきづらい。
長くても30分から60分程度で症状が治まるはずの過呼吸。
ひとりきりの状態のとき、どう判断を下すか。
あるいは。
だれか身近な人が目の前で苦しみだしたら、どう対処したらいいのか。
過呼吸だよと素人判断して放置しないで、時計と患者本人とを注視せなアカンなと思い至った令和六年文月某日。
その後、NEWS ZEROで櫻井クンが救急コールセンターの現状を取材していました。
わりとしょーもない理由で119かける人、いるんですね……。
服に火が着いた(既に消火済)とか。んで、消火確認に行くから住所教えてという問いには、「おおごとにしたら大家さんやご近所に知られて困るから」という理由で拒否。
拒否! TELしたのに、出動は拒否!
えぇぇ? じゃあなんでTELしたの? 消火できたことを褒めて欲しかった……とか? よく分からんけど。
確認したいという消防側の意見は理解できる。「め組の大吾」既読だからね(笑)
どうしたらいいか分からなくて助けを呼んだわたし、マシな方だわ。
アルファで投稿したところ、わたしの症状は脳卒中を患った方と途中まで酷似していたという感想を頂いた。今でも後遺症に苦しんでいらっしゃるのだとか。
素人判断して手遅れになるよか、人騒がせでも119したのは良い判断だったのかもしれない……などなど。
やっぱりいろいろと考えてしまった夏の日の出来事。
これをご高覧のみなさまにおかれましては、わたくしめを他山の石として賢明なご判断をお願いします。